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王宮のパーティー2

外の空気にあたりたかった。

「これ」

持っていたグラスを近くを通る、メイドに渡すと、急に生演奏が大きくなった。

王子と王女の登場だ。

皆が、中央の扉の方に集まりだし騒ぎ出した。テラスいた人達も慌ててホールの中へ戻り、同じように向かっていった。

邪魔にならないように人だかりを抜け、テラスへ出た。

興味無い。

生暖かい風が頬を掠め、汗ばんできたが、王子と王女の登場のおかげで人がいないのに安心した。

テラスから庭園に抜けれるようになっていたから、私は庭園へと足を向けた。

庭園は、とても幻想的だった。

灯された灯りが、赤や青や緑や、様々な色を放ち、その色に合わせ照らされる木々や花々を考えているようだ。

だって、赤の灯りの周りには赤い花、赤っぽい葉を持つ木が植えてあった。

さすが王宮庭園だ、と感心した。

もう二度と来ないだろうからよく見て帰ろう。

暫く探索していると、王宮がこれだけ遠いのに煌々と光が滲んでいるのがよくわかった。

その手前に、先程いたホールの光が見えた。

当然ながら、王族が使用するホールをこんなパーティーに使うわけがない、

と、

今日初めて知った。

そろそろ帰ろうかな。時間十分潰したよね?

昼間に比べ大分気温は落ちたとはいえ気温はまだ高く、汗ばんできたが、散策は満足した。

先程のホールのテラスに戻る、優雅な生演奏の中ダンスを楽しんでいる人達が見えた。

水飲んで帰ろうかな。

そう思いながらハンカチをで汗を拭いていると、

「1曲踊ってもらえないか?」

低く良く通る声がした。

声のする方を向くと、知らない男性が立っていた。

気品が漂い、着ている服も身につけている小物も、かなり上等で

それも、イケメンだ。

輝く銀色の髪にとても良く似合う、切れ長の蜜柑色の瞳。細めの顎が少しキツめに見える。

私に声をかけているの?

キョロキョロと周りを確認していると、くすくすと笑われた。

「君に声を掛けたんだ。実はさ、参加しろと言われて参加したんだが、やる気がなくてさ。だが1曲くらいは踊って帰らないと、文句言われるから、困ってたんだ」

肩を竦める男性に、考えた。

正直イケメンとはもう関わりたくない。グレンの事があるから、こんなふうに、軽く声をかけ、ほら、そんなふうに魅惑的に微笑むところが、遊んでる証拠だ。

でも、言われた内容に、とても納得してしまった。

帰ったら絶対に、家族だから根掘り葉掘り皆から聞かれる。そこで、グレンに会った事と、庭園の短冊だけで終わって帰ってきたわ、と言ったら、グルンに対して怒るだろうけど、私がより傷ついた、と気を使ってしまう。

それは嫌だ。

それに、名を名乗らず、私の名も聞かないということは、やっぱり遊び慣れているか、本当にその場しのぎなのか、どっちかだ。

「私も同じよ」

にっこりと微笑んだ。

どっちだっていい。

こっちも都合がいいもの。

「でも、さっきまで庭園を散策していたから、汗もかいてるし喉乾いてるから、水を飲みたいの。それでもいいの?」

だったら遠慮なく、言うわ。


本当の遊び人なら断るだろうし、本当に困ってるなら断らないだろう。貴族令嬢が、自分から汗かいてる、なんて恥ずかしくて絶対に言わない。

断ってくるなら、遊び人風の人ばかりだったから帰ってきたわ、と言い訳できる。

もし本当に困って、一時しのぎで声をかけてきたなら断わらないだろうから、それなら1曲ダンスを踊った、と堂々と言える。

「構わないよ。飲み物を持ってくるから、待ってろよ」

「ありがとう」

ふうん。つまり、本当に困ってたのか。

水の入ったグラスをぐっと飲むと、足りないようだな、とまた1杯持ってきてくれた。

年上のようだが、とても気さくな男性だし、私の気品のない飲み方にも、飲み終わるまで嫌な顔をせず待ってくれた。

逆に、とても楽しそうに見ていた。

その後ダンスをしたが、とても踊りやすかった。

私はダンスは好きだが得意では無い。でも、とても上手くリードしてくれて、楽しかった。

ダンスの間も特に話をする事もなく、また、曲も中盤から踊ったから、直ぐに終わった。

一礼し、顔を上げると何だか意地悪そうな顔で微笑んでいた。

何?

「ありがとう、とても楽しかったよ。じゃあ、またな」

またな?

ざわめく気持ちの質問の前に、その男性は颯爽と去っていった。

去る背中を見ながら、不思議な違和感を感じた。

でも、もう会うことはないだろう、という安易な結論に行きついた答えに、

この後、

どれだけ後悔するとか思っていなかった。

ちっ、

だよ。



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