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晩餐会という名の無礼講4

「名を、呼んで貰って嬉しいです」

アトラス様にそう言われて、気づいた。

「そういえば、そうでした」

私、いつから呼んでいたのだろう、と慌てて思い出そうとしたが今日1日色々ありすぎて、名前のことよりも、公爵子息に腹が立つ事しか思い出せなかった。

「気にしないでください。今回の件で心から感謝をしているので、逆に名を呼んで貰うくらい当然です。呼び捨てでもいいくらいです」

「大袈裟ですよ。まだ始まってもいませんし、何処まで上手くいくかも分かりません」

「いいえ、十分です。始まった頃と言われれば、僕達ならやれる、と意気込んでいましたが、現実は違いましたね」

自嘲気味に言うと、目線を公爵子息に移し、仕方なさそうながらも穏やかに笑った。

抱えている様々な感情がその横顔と瞳に見え、私も公爵子息を見てしまった。

3人で和気あいあいとしている姿は、本当に楽しそうに見えた。

「正直、僕達はかなり追い詰められています。物資事業は全く上手くいかず、僕を認めていない貴族達からは結構辛辣な嫌味を言われました。当然、父も、そして、トランタも同じだったと思います。父は僕の立場をより強固にする為にこの案件を託してくれたのは分かっていました。それはトランタも理解している。だからこそ必死になり過ぎて、上の言葉しか見えていなかった」

「上、ですか?」

「そう。誰かの知恵と努力で手に入れた情報を、上の者があたかも己がやったかのよう言う言葉を鵜呑みにしてしまった。分かっているんだ。報告をしてくれる人間と、その情報を探ってくれた人間は違う、と。だが、僕は・・・貴族の血筋や功績ばかりを、重視していたと反省している」

すっと私をに顔を戻し、頭こそ下げはしなかったが、気持ちはよくわかった。

つまり、低級貴族を認めていなかった、と認めたのだ。

だけど、仕方のない事だと思う。アトラス様の周りには常に、高潔の血筋か、功績を詰んだ方しか側にはいけない。運良くそうでない方々が参加出来たとしても、話しをする事は到底無い。

上下関係が激しい貴族社会で、わざわざ潰される事を分かっていて側に行くバカはいない。

今回のように、偶然の出会いがない限り関わり合う事なんてなかった。

「私も、同じですよ。私もアトラス様達のような上の方々と話が出来るなんて思っていたなかったし、話しても無駄、だと思っていました。でも、ガルマン侯爵様はちゃんとおじ様を見ていたし、公爵子息も変な人だけど、私の言葉で色々な事を調べてくれた。そしてアトラス様は、否定ではなく肯定で、私達を認めてくれました」

「そう言うってくれると嬉しい」

目を細め安心したよう頷くと、メロンのお酒を飲んだ。

酔った勢い、と言ってしまえばけんもほろろだが、普通は認めない。それだけの矜恃と絶対に重ならない距離があるのに、それでも口に出してくれた。

ふう、とひと呼吸してまた、公爵子息を見た。

「アトラス様」

「何ですか?」

「多少は褒美とか貰えますよね?」

「勿論。何が欲しい?」

「公爵子息と関わらない、という褒美が欲しいです」

「・・・さすがにそれは、私でも可哀想に思うよ」

アトラス様が何故かとても驚いた。そして、言葉通り、とても可哀想な顔で私を見た。

何で?



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