会議後のまたその後1
まだ、笑っているわ。
部屋を出て隣を歩くグラリン様が、目を細め堪えるような声が漏れる。
何が楽しいのかさっぱり分からない。こっちは本気で逃げたい、と思っているがどう考えても、もう逃げられそうにない。
物資事業に本格的に関わってしまった。
公爵子息のせいだけれど、こうなってしまってはジタバタしても仕方ないし、とにかく迷惑をかけないようにしないといけない。
恐らくお父様は、北部に同行する事になるだろう。
お父様は今、ガルマン侯爵様と何を話をしているかは分からないけど、
問題解決するには、提案が必須だ。
提案するという事は、その者が、実践しなければいけない。
あーあ、こんな事なら町への偵察を断れば良かったぁ。
この北部の件が終わったら、公爵子息の誘いは全部断るわ!
「不機嫌な顔ですね」
柔らかないい声で、グラリン様が声をかけてきた。
「当たり前です。北部事業に携わる事は、まあ、百歩譲って人助け出来ることなので嬉しいですが、あの偏屈な、」
ドン!!
誰かが背後から私に当たってきた。
「っ!」
ばたりと倒れる音がして振り向くと、綺麗な刺繍を施した綺麗なドレスを来た、ちょっと、私よりもちょっとだけ、ふくよかな女性が小さく呻きながら蹲っていた。
「カリーナ姫、大丈夫ですか?」
グラリン様が膝をつき、すっと手を差し伸べられた。
何処かで見た顔だと思ったら、カリーナ王女だ。
ふむ、ここでも呼び方がまた違う。
姫、かぁ。
確かにその呼び方が似合う可愛らしいお顔だ。アトラス王子と兄妹だから顔立ちは似ている、とても優しそうな雰囲気を持っている。
でも、今は泣いていて、とても怯えていた。
涙を我慢している様子で、唇を噛み締めているが、幾筋か零れていた。
「・・・恐れ入ります」
下を向き顔を見せないようにし、右手を差し出したその甲に、2本の蚯蚓脹れがあった。
はっと気付き、その右手を引っ込め、左手をグラリン様の手に乗せ立ち上がり、直ぐに両手に手袋をはめられた。
誰かに叩かれた、か。
なんだが廊下が寒寒しい空気に変わった。
廊下を歩いていると、グラリン様がいるからだろうが、どこかの貴族や、王宮の召使い達が自然に近寄り会釈をしていく。
それが、一気に水が引くようにさあ、と誰もが離れていった。
グラリン様は変わらず微笑みながら、すっとハンカチを渡した。
「もしよろしけば、どうぞ」
「いえ、ご心配いりません」
ふるふると下を向いたまま首を振った。
「姫様!こちらにおいででした!!」
鋭い叱責の声が廊下に響き、カリーナ姫は小さい悲鳴を上げると青ざめ震え出した。




