会議後3
その後は、お2人が真剣な顔で色々相談してするのを見ながら、アトラス王子がとても民の事を考えているのだと感服した。
優しい顔で、優しい言い方で、どちらかと言うとふんわりしすぎて、
大丈夫なの?とそんな印象だったが、懸念だった。
ご自分なりに密偵を北部に出し様子を探っていて、餓死が出ている報告を受けているにも関わらず、ガルマン侯爵様からはその報告がないのに腹を立てていている事もわかった。
なかなか難しいところだ。
現状報告は大事だが、餓死者が出ていると報告されれば、国は大騒ぎになる。
たとえ自然現象とはいえガルマン侯爵様が非難され、立場が危うくなり、そうなった時、侯爵様達の均衡が崩れる。
権力争いまっしぐら、だ。
スコーンを手に取りジャムを塗る。その上に生クリームを塗る。
うん。やっぱり美味しい。
このジャムはベリー系だが、バナナとレモンが入ってて爽やかながらもいい感じの甘みで、生クリームと相性抜群。
まあ、あえて餓死者を隠匿しているのか、それと本当に知らないのか、どちらにしても、北部の現実をそのまま口にするのは危険だけど、一国の王子としては、歯痒いさを感じるところだろう。
せめて、僕だけでも、という苛立ちが言葉からも態度からもよくわかり、何だか切なかった。
自分達の物資事業の成果が無い訳では無いが、思うように人道支援に至らない事により悪化させ餓死者を出している、という重責を果たせないその悲しみは計り知れない。
でも、今回は私の、
まあ、助言と言えば助言かぁ。
最後の一口をぱくりと口に入れ、おしぼりで手を拭く。
光明が見えた、と嬉々としている。
飴と鞭、という言葉がお2人にピッタリだ、と思った。
公爵子息の直感的な一言が、アトラス王子を刺激し、そこから色々案が出でくる。それに対して、鋭く指摘し粗を探していく。
この資料がよく出来ているのが、その結果だろう。
「お茶のおかわりをお入れします。カップも替えましょう」
「ありがとうございます」
イグニス様が茶渋が軽くついたカップを片付け、新しいカップにお茶を注いでくれた。
ふと、公爵子息と目が合いとても魅惑的に微笑みを私に向けて来るのを見て、
本当に、
お2人に全く心躍ることなく、男性として興味が無い自分に、満足した。
この方々にこれ以上関わったら厄介の一言だ、とさっと顔を背けた 。
そういえば、ともう1つの資料を手に取った。
ハンリバ男爵の横領の証拠とやらだ。
パラパラめくり、これは酷いわ、と呆れて笑いが出てしまった。
虫が来ないように、とコンテナにニスを塗り、ご丁寧に蓋までしている。それじゃあ通気性はなく、逆に夏は熱がこもり傷みやすくなるだけだ。
何度か物資の行列を見た事あり、箱が大きいな、と思っていたがどうも大量の農作物を一気に運ぶ方が効率的だと考えていたようだが、これまた、空気が触れないから傷む原因になる。
だから、半分も傷んでいたんだ。
蓋も、箱が大きすぎて見えなかったけど、見えても誰も教える事は出来なかっただろう。
教えても、馬鹿な事を言っている奴らだ、と見下されるのが関の山だ。最悪、侮辱罪とか、偽証罪とか、色んな難癖つけられ可能性がある。
それなら、下手に関わらず、
あたたかい目で見て(バーカと心で思い)放っておいた方がいい。
上級貴族のヤツらは、知ったかぶりして、自分より下を見下す人達が多い。
それも、物資の特別仕様の箱1個が10万エニーニもしてるのだ!
だから、公爵子息が250エニーニと言ったのを驚いたのか。
見ると超高級材木檜を使用し、超高級ニスを使用し、特注だそうだ。
素晴らしい事だこと。
この超高級コンテナを架空に大量受注して、横領していたのだ。
まさか公爵子息が農民が使っているコンテナに変えるなんて思っていなかっただろうし、ガルマン侯爵様より指名された自分をまさか、疑ってくるとは思ってなかったのだろう。
最っ低だ。
どうせ横領するなら、農作物を傷めないやり方でして欲しい。農作物の流通に詳しいなら、傷んだら損することを知っている筈だ。
自分の懐があたたかくなるなら何をしてもいいなんて、許せない。
あ、と思った。
農作物が傷んだら、損する。
そうか、傷むことは知っていんだ。だから、こんな不適合なやり方をしていたんだ。
さっき公爵子息の反省と改善点にのっていた、
傷んだ農作物が入っていた箱は汚れた為破棄していたが、破棄ではなく他のを使い道がないのか検討中として倉庫に保管、とある。
本来なら洗って干せば何度もでも使えるのに、衛生面とか何とか言って破棄、という形をとらせていたんだ。
そうして新しく箱の発注をすればいい、か。よく考えたわ。
物資事業の資料をもう一度手に取り、めくり、何か引っかかった。
もう一度、横領の資料と見比べた。
ふうん、そういう事か。




