私の仕事5
「美味いな」
公爵子息が幸せそうに呟いた。
視察が終わり、また、初めの宿場に戻り、遅い昼食を食べている。
今度はカウンターではなくテーブル席に座り、少なくなったお客の動向も忘れず観察する。
「そうでしょう?野菜の旨みがたっぷり出ているスープですからね。というか、変に調味料使わず塩がメインです」
「確かに。こんな薄味なのに色んな味が楽しめる」
「それは良かったです。これが庶民の味ですよ。喜んでくれて良かったです」
「これはまた、ついてこなきゃ行けないな」
軽く首を傾げ微笑む公爵子息のキラキラが眩しくて、背けてしまった。
「どうした?恥ずかしいのか?」
何故そんなに嬉しそうに聞くのか分からないし、私の顔を見てそんなに気持ちがないの分かっていて聞いているのが癪に触る。
「そうですね。恥ずかしいので、ついてこなくて結構です」
スプーンにスープをすくい口に入れながら答えた。
「本気で言っているな。やっぱり面白いな、スティールは」
「私は全く面白くありません」
「もう少しこうやってつまらない話で楽しみたいが、少し仕事をしていいか?」
つまらないと分かっているならしなければいいのに。
「どうぞ。でも、仕事の話ならお父様と相談しなければいけないので、すぐには答えは出ませんよ」
「大したことでは無い。さっきのコンテナを1000個欲しいんだ。その手配をして欲しい。納品場所は街外れにある、物資を集めている場所だ。知っているか?」
「知ってます。でも、私が手配せずにご自分で手配した方が早いでしょ?」
「それはそうだが、貴族を介して買った方が都合がいいだろ?」
そういう事か。
「直接、平民と取引するよりも、男爵家と言う貴族の方が取り引きの方が差し障りないですものね。わかりました。仲介手数料などはお父様と相談します。いつまでに用意したらいいですか?」
「明日。時間はいつでもいい。俺の方から連絡を入れておく。その時、出来たら見積書と納品書は欲しいな」
まあ、そうだな。
「見積書かあ。では、それは少し高めにして用意します。請求書はお父様が帰ってきたら、すぐに準備します」
「話しが早くて助かる。しかし、そんなに農産物を作るのは大変なのか」
「本格的に作ればね。そうだ、簡単なものを公爵子息も作ってみればいいですよ」
「俺が?」
「はい。今だったらミニトマトだったら出来ます。花を植えてるプランターがあればいいです」
「そんなもので作れるか?」
「作れますよ。屋敷に帰ったら準備しますね。子供達用に作った育て方の冊子もあるので、それも一緒に差し上げます」
「へえ、楽しそうだな」
「ちょっとした家庭菜園ですね。自分で作った野菜は美味しいですよ」
「ちなみに、それはどこでも作れるか?」
「出来ると思いますよ。そんなに水も要らないですから」
「それは、いいな」
なにか含みのある笑いに、何故か不安に思った。




