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王宮からの招待状

「スティール、王宮からの招待状が来たが、参加するか?」

夕食時にお父様がベッタリと押された国の封蝋を、以外にもぞんざいに破り、封筒を開け読み出した。

手紙の用件が分かっていたからだろう。

そうでなければ、読む前から、

参加するか?

とは質問しないだろう。

読み終わると、私を心配するようにお父様の金色の瞳が陰った。

でも本当なら、参加するか?と質問するのは不適切だ。当主としては、必ず参加するように、と釘を指すべきだが、我が父は、違う。

「参加しなくてもいいのよ」

お母様がフォークに魚を刺し口に入れようとしたが、直ぐに下ろし心配するように首を傾げた。

食事の為、横で1つに括った長い金の髪が軽く揺れた。その動きがよりお母様の不安を現すように見えた。

だがこれも、本来当主の奥方としては、参加を促すべきだが、我が母は違う。

「そうだよ。無理に行く必要はないよ!」

持っていたフォークを、ガシャンと思いっきりサラダに刺しながら可愛い弟であり、嫡男のイアンが藍色の瞳で睨みつけてきた。

何も刺さっていないよ、とは言うのはやめておこう。

「そうよ、お姉ちゃまは別に結婚なんてしなくてもいいわ。私が養ってあげるわ」

もぐもぐと魚を頬張りながら、可愛い妹アルニーリが、可愛らしい事を言ってくれた。

口を動く度に金色の小刻みに髪が揺れるのが微笑ましかった。

「そうだな。今参加すると何を言われるか分からないし、強制では無いんだ。もう少ししてからでもいいと思うぞ」

お父様がとても優しく微笑んだ。

家族の気持ちが手に取るように分かり、自分なりに考えてみた。

つんつん、と魚のソテーの横に添えて得るポテトをつつく。

国の封蝋が押された手紙。

要は、王宮からの招待状だ。

それは未婚の子息、令嬢、が参加するいわゆる婚活パーティーだ。

このウェル王国のアトラス王子22歳、カリーナ王女17歳。

ようは結婚適齢期を迎えたお2人の為に、陛下が本人の気持ちを汲み、愛する相手を探そう、というなんとも夢物語の催しなのだ。

そこについでとして、適齢期を迎えた16歳以上の未婚の子息、令嬢、更には、色々な理由で伴侶と別れた殿方、夫人を招待し、普段はまみえることの無い立場の年頃の男女を招待し、出会いを提供する。

まあ、国としては政略結婚も大事だが、その結果、白い結婚、暴力、浮気、等などが問題となり離縁が後を絶たず、結果、少子化、となったのだ。

それならば、と50年程前に始まったのがこの婚活パーティーだ。

勿論、王子や王女には政治的な繋がりも関係してくるので、他国とのお見合い的なものも開いていると聞いている。

表向きは、多方面でお二人の為に動き、運命の相手を探す、という名目だがどこまでが本気なのかわからない。

実際、王子や王女が本当に愛した者が、貴族の中でも取るに足らない立場の人間ならどうするのだろうか?という噂も上がるが、今はお二人とも特に相手もいないようなので、とりたて大騒ぎしていないが、まあ、私達には関係の無い事だ。

正直、我が家はたいした家柄では無いから、このパーティーは低級貴族令嬢にとっては、玉の輿に乗れる大チャンス。

実際、玉の輿、逆玉にに乗った貴族達がいると聞いている。

が、

私には、全くそういう権力とかに興味無い。

いや、

我が家が、

だ。

我が家の家族皆が、目立ちたくもないし、派閥争いなど興味無いし、のんびり、まったり、確実に領民達と安穏な生活を過ごせればいいのだ。

かと言って、断るのもどうなのか。

うーん、どうしたものか。

「スティール、断ろう。もう少しお前の気持ちが落ち着いてからにしたらいい」

「そうよ。何なら、ずっと断ってもいいのよ」

「そうだよ。また、変な男に出会って、姉様が傷ついて欲しくない」

「お姉ちゃま、私とお出かけしましょうよ、ね」

私の無言に、皆が心配し、ぐいぐいと身を乗り出した。

「参加するわ」

ぽい、とポテトを口に入れ答えた。

「何故だ!?」

「やけくそになっていらのる!?」

「姉様、そうなのか!?」

「お姉ちゃま、無理しなくてもいいわよ!」

私の意外な答えに、心底驚いたようで目を見開き私をガン見してきたから、その様子に少しおかしくて笑ってしまった。

「違うよ。別にやけくそになってないよ」

心配しないで、と微笑んだ。

「ただ、今回断っても、また参加の手紙は来るだろうし、それに聞いたところよると、参加、不参加をちゃんとチェックしてるみたい。1度も参加しないと変に目をつけられたらお父様が困るでしょ?」

もぐもぐとポテトを食べる。

ふかしたポテトを、その後カリッといい感じで焼いているから、口の中でポテト本来の甘さと、香ばしさが広がった。

うん。いつものながら美味しい。

「それは気にする事はない。我が家など、たかだかしれている。こんな低級貴族を相手にするものか」

当主であるお父様の口から、こんな低級貴族、とはっきりと言われると逆に清々しい。

「だから、だよ。不意に名前が上がらないように、当たり障りなくしようと思っただけ。今回参加したら、後は参加しない。1回参加しとけば、合わなかった、とか説明できるもん」

「まあ、一理あるわね、私達はずっと婚約としていたから招待状は来ませんでしたが、セシリがあまりに参加しないと王宮から婚約者候補をすすめられた、と言っていたわ」

セシリ様はお母様の親友だ。

「それは、私も聞いた事がある」

同意したお父様に、やっと仕方がない、という空気が部屋に流れた。

「でも、姉様。嫌になったら直ぐにお父様に言ってよ。なんだったら僕の友人達を紹介するから」

必死に言ってくれるイアンその気持ちは嬉しいけど、流石に弟の友人は遠慮するわ。

「あら、それなら私達の友人の子息を紹介するしてあげるわ。ねえ、クーペ」

「そうだな!そうしよう。今度の週末でも夜会でも開こうか」

「ちょっ、ちょっと待ってよ。それはそれで、なんだか私がフラれて落ち込んでいるみたいじゃない。確かに浮気されて婚約解消になったけ、私は喜んでいるんだから」

本気で動き出そうとしている、両親を慌ててとめた。

「ともかく、王宮のパーティーに一度参加して後は不参加にするよ」

「そうね、でも屋敷で夜会を開くのはいい事じゃない?最近招待ばかりされていて、我が家で開く事がなかったもの。皆様が参加してくれたら、スティールが出会いやすくなるんじゃない?」

お母様の言葉に、確かに、と納得した。

「そうだな。色々な人に出会えるのはお互いいい影響を与えるし、友人が増えるかもしれないしな」

とお父様の言葉に、確かに、と納得した。

どうしても参加する茶会とか夜会は、私の友人の流れだから、世界は狭いしなぁ。

「じゃあ、そうしようかな」

「じゃあ。僕の友人を紹介するよ!」

いや、それはいらないかな。

でも、とても目をキラキラさせるイアンに勿論言えず、よろしくね、と言っておいた。

その後は和やかに食事をした。


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