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13 ランガスタ伯爵

 ランガスタ伯爵領の領都に来た私は、泊まる宿屋を決めた後、次は冒険者の斡旋所へと向かった。

 家を買う為の資金を得る為に、下位竜の素材を売る為だ。

 商人であるキャロルさんに売ってもらうことも可能だけど、まだ店の準備もできていないし、地元の商人や購買客との人脈の構築もまだなので、どのみち高く売れるルートが無い。

 それならば、地元の業者に売っても大差ないし……。


 ちなみにお姉ちゃんは、まだ日が沈みきっていないので寝ているし、カプリちゃんは人混みが嫌いだということで、宿屋でお留守番だ。

 ティティや従業員達にお願いして、露店で名物料理っぽいものを大量に購入してもらい、カプリちゃんに与えることになっているので、大人しくしているだろう。


 また、クルルとキララは、家が決まるまで領都の外で待機してもらうことになっている。

 なんならキララは、近くの森で新しい巣を作る場所を決めてもらってもいい。


 で、訪れた斡旋所だが、新入りの眷属の中で「冒険者として働きたい」という希望者には、冒険者の登録をさせることにした。

 どこか1ヶ所で登録すれば、全国的に斡旋所は利用できるそうだ。

 

 まあジュリエットとエレンは、冒険者として活動する予定が今のところ無いので、登録はさせていないけどね。

 2人には我々の拠点が決まったらすぐに、ソイゲント男爵領に戻って領主の監視をしてもらうつもりだ。

 何かあれば転移魔法で拠点(我が家)に帰還させて、詳細を報告してもらう手はずになっている。

 将来的にはこういう連絡員の眷属を、各地に置こうかと考えているところだ。


 さて、現在は下位竜の素材を査定してもらっているところだけど、少し時間がかかるということなので、買取額の受け取りをエルシィさん達に任せて、私はランガスタ伯爵家へと行くことにする。


「私も行きます、ご主人!」


「うん、一緒に行こうか」


 ラヴェンダは散歩が好きなので、たまに連れ歩いているけど、伯爵家へ行くついでにこの領都での散歩コースを2人で模索することにしよう。

 なお、伯爵家に行くとは言っても、貴族といきなり会える訳が無いので、面会の予定を取り付ける為の訪問だ。


 その目的地である伯爵の屋敷……というかちょっとした城は、大きくて街の中心部にあるので、すぐに場所は分かった。

 で、屋敷の正門に近づいていくと、門番が──、


「何者だ!!」


 と、槍の先端を向けてきた。

 まあ、見た目がまだ幼い女の子達が、貴族の屋敷に近づいてきたら怪しいよね……。


「済みません、私は冒険者のマルルという者です。

 伯爵様との面会をお願いしたく……。

 いつならば面会が可能なのか、予定を確認していただけないでしょうか?」


「なんだお前は?

 お前のような者と、伯爵様はお会いにはならない!」


 門番はすげないが、私には奥の手がある。


「私は第3王女クリーセェ殿下の臣下で、ラムラス様と直接面識もあります。

 その証拠である、紋章入りのコインもここに」


「む……これは……」

 

 コインを見せると、門番の態度が変わった。

 一応、話を聞いてくれる気になったようだ。


「明日の昼にまた訪問しますので、それまでにいつならば面会が可能か、確認をお願いしたいのです。

 宿泊している宿屋を教えますので、急ぐのであれば夜中でも構わないので、呼びつけてくださっても……。

 伯爵様には、王都でのことについて話し合いたい……と、お伝えください」


「む……良かろう。

 確かに(うけたまわ)った」


 よし、目的は達成した。

 宿屋に帰るかな。

 転移を使って一瞬で戻ってもいいんだけど、今はラヴェンダとの散歩を楽しもう……と、思っていたのだが──、


「お待ちください」


 暫く歩いていたら、呼び止められた。

 なにやら老齢で、執事風の格好をした男だった。

 急いで追ってきたのか、息を切らしている。


「マルル様ですね?

 ランガスタ伯爵が、お会いになります」


 おおっ!?

 コインの効果か!?

 それとも……見ず知らずの私に頼らなければならないほど、事態が切迫している──?


「ラヴェンダ、先に宿屋に戻っていて。

 みんなには、遅くなるって伝えてくれるかな?」


「了解です、ご主人!」


 ラヴェンダを見送った私は、その執事風の男に連れられ、伯爵の屋敷に戻る。

 門をくぐり、応接室へ通されると、そこには既に誰かがいた。

 何処となくラムラス様に似ていて、父親だということがすぐに分かる。


「ランガスタ伯爵閣下ですね?

 お初にお目にかかります。

 マルルと申します」


 私は応接室に入るなり片膝を突いて、挨拶をした。

 すると伯爵は──、


「よしてくれ。

 上位竜を操り、魔王候補を倒した者が相手では、私の方が立場が弱い。

 普段通りで、構わぬ」


 うん?

 そういうことなら、礼儀作法は放棄するけど。


「私のことは、ラムラス様からお聞きに?」


 私は伯爵に勧められるまま、ソファーに座りつつ質問した。


「クリーセェ殿下と王都へ向かう途中で、ここに立ち寄った際にな……。

 娘が色々と世話になったようで、感謝している」


 と、伯爵は頭を下げた。

 貴族が平民に頭を下げることなんて、なかなか無いことだろう。

 それだけ私達のしたことが偉業だったのか、それとも伯爵自身にはあまり貴族としての意識が無いのかはよく分からないが……。

 気さくなラムラス様と親子であることを考えると、後者の可能性も捨てきれない。


「だが、失礼ながら、君達のことは調べさせてもらった。

 まさか数千の魔物の群れを退け、魔王候補をも倒すというのは、予想外だったが……」


「為政者としては、当然の行為だと、理解します」


「済まぬ」


 まあ、その辺のよく分からない存在が、強大な力を持っていたら警戒するし、調べるよねぇ。

 今の私は、一般人が核ミサイルのボタンを持っているようなものだし。

 これはある程度他の貴族達にも、私達の情報が知られていると思った方がいいかも……。

 それならクリーセェ様を後ろ盾にして、盤石の地位を手に入れた方がいいかもしれない。


「それで……調べた結果、私達の評価はどうなんです?」


「敵対しない限りは、危険は無い……と、私は思っている。

 まあ……多くの貴族共にとっては、目障りな存在にはなるのだろうが……」

 

「ええ、これからクリーセェ様に助力するつもりでいますから、敵対派閥にとっては脅威でしょうね。

 邪魔をするのならば、貴族でも王族でも排除します。

 その為に、王都での詳しい情報を、伯爵に聞きたいと思って訪問したのです」


「……そうか」


 伯爵は、緊張したのか、少し顔を(こわ)ばらせた。

 まあ私の言葉は、ある意味「革命を起こす」って言っているようなものだしね……。


「王都のことは、よく分からぬ。

 クリーセェ殿下とは接触できぬし、娘とも連絡が取れぬのだ。

 娘が拉致されており、それを盾に殿下は脅されているのではないか……との憶測もあるが……」


「ラムラス様が……!」


 我が眷属を……!

 それは許せないね……!


「正直、今も生きているかどうか……」


「そんな……!!」


 いや、待て。

 ステータスから、ラムラス様の名前は消えていない。

 これは生きている証拠だ。

 

───────────────

 ・ラムラス 20歳 女 LV・37

 ・職業 貴族令嬢

 

 ・生命力 41/312

 ・魔 力 87/186

───────────────


 ほら、生きて……って、生命力やばぁっ!?

 こりゃ、救出を急がないと!

 明日は用事があるので更新を休みます。

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