12 引っ越し開始
さて、夜が明けたら引っ越しの開始だ。
ただ、その前にエレンやジュリエットのような新たな眷属達のレベルと、従属度を上げなければならない。
現状だと従属度が低いので信用できないし、能力も未熟で仕事も任せられないからね。
そこでパーティーを組んでの戦闘だ。
これをやると親密度や従属度などが、かなり上がりやすくなるという傾向が見られる。
新入生が学校行事で共同作業をすると、仲良くなる切っ掛けになる……というのに似ているかな?
あるいは……吊り橋効果ってやつ?
ともかくこの作業は、引っ越しの最中にやる訳にもいかないし、今晩中に終わらせてしまおう。
時間が無いから効率よく、強大な魔物と戦う必要があるので、カプリちゃんの転移でクラグド山脈まで行って下位竜族を狩ることにする。
「ちょっ、えっ、ちょっ、ええ~っ!?」
「無茶ですわ!?
こんなの、死んでしまいますわよ!」
下位竜を前にして、狼狽えるエレンやジュリエット達。
いきなり絶対に勝てない相手と「戦え」って言われても、困惑するよねぇ……。
ただし、危険はそんなに無い。
「私がフォローするから、絶対死なせはしないよ。
だから思いっきり戦って!」
「「「「「は、はい!」」」」」
まあ、フォローというより、メインで戦うのは私やカプリちゃんなのだけどね。
それでも戦闘に参加すれば、「吸収値」は分配されるので、レベルは確実に上がっていくだろう。
ただ、20人近い人数で頭割りなので、普通の魔物だと「吸収値」が低くて効率が悪い。
だから多少危険でも、下位竜くらいの大物を狙わないと、時間がかかりすぎるのだ。
でも下位竜を集中的に狙って死闘を繰り返したおかげで、夜明け前には作業が終わった。
従属度も80%を超えてステータスも閲覧できるようになったし、「下賜」で必要なスキルを配布しよう。
で、出来上がった一例がこんな感じ。
───────────────
・ジュリエット 14歳 女 LV・21
・職業 男爵令嬢
・生命力 112/112
・魔 力 133/133
・ 力 98
・耐 久 117
・知 力 154
・体 力 106
・速 度 101
・器 用 97
・ 運 99
・ギフト 女帝
・スキル
宮廷作法
政 略
護 身 術
威 圧
自然操作
魔力障壁
念 話
転 移
空間収納
無限再生
魔力循環
万能耐性
万能感知
完全隠蔽
雷
───────────────
もうただの令嬢と言うには、過剰なほどの能力だ。
これだけのステータスとスキルがあれば、何か危険なことがあっても自力で乗り切れるはずだし、更には吸血鬼の護衛が付く。
───────────────
・エレン 14歳 女 LV・22
・職業 吸血鬼
・生命力 238/238
・魔 力 196/196
・ 力 243
・耐 久 227
・知 力 128
・体 力 243
・速 度 187
・器 用 134
・ 運 112
・ギフト 執事の鑑
・スキル
事 務
上流作法
流し斬り
大 防 御
吸 血
魅 了
念 話
転 移
自然操作
空間収納
無限再生
魔力循環
万能耐性
万能感知
完全隠蔽
極 寒
───────────────
……もうこの2人だけで、小さな地方都市なら制圧できそうだな……。
奥の手として「雷」や「極寒」のような、広域殲滅魔法も「下賜」しているから、不可能ではないだろう。
これなら領主の監視役として、2人を送り込んでも問題無さそうだね。
ふぅ……これで心置きなく、ランガスタ伯爵領へ出発できるぞ。
でもまだ時間があるから、下賜したスキルの試し撃ちをさせないと……。
スキルは持っているだけでは、使いこなせないからね。
「さあ、もう一戦いくよ!」
「眠る暇がありませんわ!?」
結局私達が帰宅したのは、空が明るくなってからだった。
それからちょっとだけ寝て、いよいよ出発だ!
で、4日後、無事にランガスタ伯爵領の領都へと到着した。
通常なら馬車で1ヶ月くらいかかるけど、カプリちゃんの転移魔法を駆使すれば、あっという間だ。
さて、今日はもう夕方になるので、伯爵様──ラムラス様の父親との面会は、まず無理だろう。
だから、それは明日以降の話だ。
偉い人とアポ無しの面会とか、さすがにそんな常識外れなことはしないよ。
そもそも伯爵が、この領都にいるのかどうかも分からないし。
なのでまずは泊まる宿屋を決めて、その後に今できることをしようか。
「それではキャロルさん、新しい店と家の手続きをお願いします」
「分かったわ。
できるだけ広くて、かつ人目が少ない物件よね?
可能なら浴槽付きの」
もうクルル達の町の出入りに関してはどうとでもなるので、場所は郊外でなくてもいい。
ただ、やっぱりクルルやキララ、そしてカプリちゃんの正体が人に見られるのは避けた方がいいから、周囲の人口は少ない方がベストだよなぁ……。
あと、やっぱりお風呂は欲しい。
「ええ、お金に糸目は付けなくてもいいです。
浴槽が無いのなら、増設の手続きもしてください」
「ええ、任せておいて」
家のことは、キャロルさんに任せておけば問題無いだろう。
それじゃあ私は、家の購入資金を手に入れてこようかな。
今までの冒険で稼いだ金額でも足りているかもしれないけれど、念の為につい先日手に入れた下位竜の素材を売りに行こう。
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