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1 招 待

 誤字報告、ありがたいです。

 吸血鬼を倒してお姉ちゃんを取り戻してから、もう1ヶ月近くが経過したけど、まだまだ慌ただしい日々が続いている。

 これまでの間、斡旋所に魔王候補や遺跡について報告し、町の復興に協力し……と、色々なことをしてきたけど、今は引っ越しの準備を進めている。


 それはキャロルさんの店を、この町で再開することがやっぱり難しいからだ。

 なにせ売る物が少ない。

 この地域で原料が手に入って、なおかつ加工することができるものはいいんだけど、他の地域から取り寄せなければならないようなものが、手に入りにくくなっているのだ。

 

 魔物の群れに襲われた町ということで、それに恐れをなした行商人などが寄りつかなくなっているらしい。

 結果的に商品の入荷は勿論、町へ訪れる人も少なくなっている。


 町としては物資が不足している状態なので、商品の需要はいくらでもあるのだけど、今回の襲撃で財産を失っている者も多く、金払いが悪い客ばかりなのではないかという憶測が、商人の間で流れている……と、キャロルさんが教えてくれた。

 前世なら救援物資が殺到し、ボランティアが沢山集まっているような状況だけど、この世界ではそういうことをする余裕がある人は、あまりいないようだねぇ……。


 でもキャロルさんは、食料などを町に提供している。

 店を他の土地に移転させるにしても、あまり大量の荷物は持っていけないので、賞味期限の近い食物は大放出している訳だ。


 ……まあ、私のスキルを眷属に与える「下賜」で、全員に「空間収納」を(くば)ってそれを駆使すれば、全部持って行くことも不可能ではないのだけど、この大放出はこれから去る町への餞別といった意味合いもあるらしい。


 あ、他の商人達は、キャロルさんと同様に無料で物資を出すのが嫌だから、この町にくることを避けているというのもあるのかな?


 ともかく私達は引っ越しの準備を進めているけれど、そればかりをやっている訳ではない。

 オークやゴブリンに(さら)われた隣村の人達をカプリちゃんに救出してもらったけど、先にこの町へ逃げてきた者達の中に家族がいるのならば、彼女達はそこへと返した。


 しかし残念ながらすでに家族が残っていない者達は、我が家で預かることになったんだよね。

 そんな彼女達は、キャロルさんの店の商品を作る従業員見習いとして、現在は冒険に同行させてレベルアップをさせているところだ。

 私に関わることには秘密が多いから、企業秘密を守る為の自衛能力は必要だし、強くなって損になることもないからねぇ。

 

 それに不幸中の幸いか、オークやゴブリンは行軍中だった為、彼女達に性的な暴行を働く時間があまり無かったようで、今のところ妊娠の兆候がある者は確認されていない。

 案外妊娠率は低いのかも……。

 それともレベルが上がると、魔物に対して抗体のような物を持つのだろうか?

 

 あるいは私が下賜した「万能耐性」が、影響しているという可能性もあるのかもしれない。

 少なくともこれで私も吸血鬼化は防げているっぽいから、魔物に対する抵抗力はありそうだな……。


 ちなみに私の『百合』に対しての耐性は無いらしく、親密度が下がるとかいうことは無いようだ。

 つまり魔物とは、正反対の属性の力ってこと……?

 

 とにかく従業員が増えて、家が手狭になったのも引っ越しの一因にはなっている。


 で、何処へ引っ越すかについてだが、ラムラス様の実家があるランガスタ伯爵領が第1候補だ。

 ラムラス様は私の眷属入りしているから、色々と取り計らってもらえるだろう。


 ……しかし、そう簡単にことは運ばない。

 ある日のこと──、


『ご主人様、ご領主の使者がお見えになりました』


「えっ?」


 ティティの報告は寝耳に水だった。

 領主が私に何の用?

 いや、心当たりはあるけど……。

 ここ最近、色々とやっているからなぁ。


「領主か……」


 お姉ちゃんが嫌そうな顔をしている。


「マルルをあまり貴族とは、関わらせたくないのだけどね……。

 昔マルルが騎士に失礼を働いて、無礼打ちにあいそうになったこともあったし……」


「えっ、そうなの!?」


「やっぱり憶えていないんだ……。

 あたしがマルルをぶん殴って、必死に謝罪したから許されたけど……。

 あの時は強く殴りすぎてゴメンね?」


 ああ……お姉ちゃんに棒で殴られたような記憶がわずかにあるけど、これのことなのか。

 でも、これのおかげで前世の記憶を思い出すことができたのだから、お姉ちゃんには感謝しかない。


「ううん、今のあたしがあるのは、お姉ちゃんのおかげなんだから、気にしなくてもいいんだよ。

 ありがとうね」


「マルル……!」


 お姉ちゃんが、感涙しそうになっているけど、


『あの……あまり使者の方を待たせるのは……』


 ティティの突っ込みが入った。


「ああ、そうだね。

 今行くよ」


 あたしが玄関に行くと、まだ少年のような若い男が立っていた。

 騎士とかではなく、小姓かな?

 (いわ)わば貴族の秘書みたいなものだけど、騎士見習いを兼ねていることもあるらしい。

 どのみち現時点では貴族ではなく、ただの平民の身分なので、玄関先で待たせていたという訳だ。


 これが騎士などの貴族階級ならば、応接室に通して丁重にもてなさなければならなかったところだけど、色んな意味で面倒臭いので騎士じゃなくて良かった。 

 その男を、エルシィさんとカトラさんが先に出迎えていた。


「遅れてすみません、私がマルルです」


「君が?

 幼いな?」


 それはお互い様じゃないですかね?


「まあいい。

 我が(あるじ)、ソイゲント男爵閣下からのお言葉だ。

 魔王候補討伐の功績を(たた)え、君達パーティーを晩餐会へ招待する。

 明日(あす)の夕刻、この町の町長宅で開催するので、必ず参加するように」 


「ありがとうございます。

 (つつし)んで参加させていただきます」


 エルシィさんとカトラさんが即答した後に礼をしたので、私も慌てて頭を下げる。

 この招待を辞退するという選択肢は、我々の身分的には無いようだ。


 うわ~……面倒臭……。

 というか、この町に来ていたの、領主!?

 明日は用事があるのでお休みします。

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― 新着の感想 ―
[一言] そりゃまあ男爵だしそこまで町ないだろうし被害出れば視察ぐらいはするだろ
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