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18 魔 王

 何本もの(かみなり)が、吸血鬼に落ちた。


「グ……ガ……ガ……」


 それでもまだ、吸血鬼は生きている

 私とカトラさんによる最大威力の魔法攻撃を連続で、しかも下位竜ならばとっくに死んでいるはずの攻撃を受けてもなお──だ。

 

 あ、なんか嫌な予感がする。


「みんな、すぐにトドメをっ!!」


「おおっ!!」


 私の号令を受けて、お姉ちゃん達が一斉に攻撃を仕掛けようとした──が、


「ガアアアァァァーッ!!」


 吸血鬼が吠え、彼から発せられていた魔力が膨れ上がった。


「やっぱりみんな、下がって!!」


 私は攻撃の指示を撤回するのと同時に、スキル「家守(やもり)」を発動させる。

 これは魔力の箱──所謂(いわゆる)「結界」を形成して身を……というか、本来は家を守る為のスキルだけど、今は仲間がバラバラの位置にいる為、全員は守れない。

 だから──、


「そぉい!」


 吸血鬼自体を囲んで封じる。

 魔力は結構込めたつもりだから簡単に「家守」は壊れない──はずだったのに!


「ガアッ!!」


 吸血鬼の気合いの声とともに、「家守」が弾け飛んだ。


「なっ……!?」


 そして焼け焦げていた吸血鬼の皮膚の下から新しい皮膚が現れ、それが膨れ上がる。

 んもぉーっ!!

 ボスキャラは、変身しなきゃならない決まりでもあるの!?


 しかもこれは、オーガの時のようにただ大きくなるだけではない。

 吸血鬼は何か別の生物へと、変形していった。


 これは体高が3メートルほどもある、巨大な吸血コウモリ……?

 いや、蝙蝠には無いはずの腕もあるし、足も人間の物に近い。

 それにどちらかという翼は、背中から生えている感じだ。

 ちょっと悪魔っぽいとも言える風貌だけど、長い尻尾はネズミのようにも見える。


 あー……吸血鬼って、伝染病の象徴みたいなところもあるから、伝染病を媒介するコウモリやネズミの要素が入るのかな?

 ……お姉ちゃんがあんな風になったら嫌だなぁ……。

 まあ、お姉ちゃんは変身系のスキルを持っていないから、現時点では大丈夫だろうけれど……。


 って、そんな場合じゃない。

 私は再び「眷属強化」を使用する。

 

 吸血鬼はたぶん、完全に本気になった。

 つまり先程までよりも確実に強くなっているので、気を抜けば私達は一気に潰されかねない。


 実際──、


「うわっ!?」


 吸血鬼の身体(からだ)が、黒いオーラに包まれる。

 先程も見た「暗黒闘気」だろうけれど、倍以上の量に増えていた。


「消え失せろ、小虫どもがぁっ!!」


 暗黒闘気の中から無数の黒い球体が浮かび上がり、それがあらゆる方向に向かって撃ち出された。

 各自が回避行動に入るけど、カトラさんは()けきれないと思うので、私が間に入って「魔力障壁」で防御する。

 しかし障壁に当たった黒い球体の威力はかなりのもので、その衝撃で私は後方へ押しやられた。

 そんな私の身体をカトラさんが受け止める。


「だ、大丈夫、マルルちゃん!?」


「え、ええ、おかげさまで……」


 私に怪我は無い。

 しかし──、


「きゃっ!!」


「ちょっ、ラヴェンダーっ!?」


 ラヴェンダが攻撃の直撃を受けた。

 即死はしていないけど、生命力が3割を切っていて、彼女は気絶してしまったようだ。

 いかん……このままでは死人が出かねない……!


 これはもう、カプリちゃんを召喚するしかないな……!!

 でも、大きな魔法を使ったばかりなので、魔力が足りない。

 回復しないと無理。

 しかも今魔力温存の為に「眷属強化」を解除すると、間違い無く状況が悪化するんだよなぁ……。

 それでもやるしかない。


『みんな、時間を稼いで!

 私からの支援はもう難しいから、命を大事にね!』


 私は念話で仲間に呼びかける。

 するとクルルが──、


「ゴガアァァァァ!!」


 スキル「伸縮自在」で巨大化して、吸血鬼に襲いかかった。

 身体の大きさで言えば互角だし、生命力や耐久力は、カプリちゃんに次ぐので、自ら盾役となったのだろう。

 そして彼女が吸血鬼の気を引いている間に、他の仲間が攻撃を担当するけど、あまり効果が出ていないように見える。

 それどころか、吸血鬼が何かする度にクルルの生命力は──いや、他の仲間達の生命力も大きく削れていった。


 クルルには「再生力大」、お姉ちゃんには「無限再生」があるけど、それでも回復が追いついていない感じだ。

 そのような回復手段を持っていないエルシィさんも、後方からカトラさんに回復魔法をかけてもらっていなければ、とっくに倒れていただろう。

 空中を高速移動できるおかげで、回避能力が高いキララだけは比較的無事だけど、攻撃系のスキルをあまり持っていないので、現状を有利にするほどの働きは期待できない。


 みんなは本当に、ギリギリのところで耐えている──。

 ここまで苦戦するとは想定外だ。

 もう相手は、上位竜に近い実力があると思った方がいいのかもしれない。

 

 しかしなんでこれほど強大な魔物が、何千もの魔物を操って、人間の世界に攻撃を仕掛けてきたんだろ?

 これじゃあまるで、魔王みたい……。


 いや……まさか!?


「あなた、魔王なのっ!?」


 私の問いに、吸血鬼の動きが止まる。

 まるで余裕を見せつけるかのように──。


「は……ハハハハハっ!!

 ようやく誰を相手にしているのか、理解できたか?

 そう、我こそは偉大なる未来の(・・・)魔王!

 ツングーダ様だっ!!」


 ……未来の?

 魔王じゃないじゃんっ!!

 今日はギリギリ間に合いましたが、スケジュール調整の為に、近い内にまた休むかも……。

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