15 闇の眷属
なんだかお姉ちゃんが、吸血鬼になっているっぽいんだけどぉ!?
誰だ、私のお姉ちゃんを、こんな風にした奴は!?
お姉ちゃんが言う、「あいつ」とやらか!?
……でもこれで、お姉ちゃんがオークとの戦いを生き延びることができた理由が分かった。
やっぱりあの時にお姉ちゃんは、ほぼ死んでいたんだと思う。
そのお姉ちゃんを、何者かが吸血鬼として復活させたんだ。
そのおかげでお姉ちゃんと再会できたことは感謝してもいいけど、お姉ちゃんを惑わせて苦しめたことは許さないぞ!
でもまずは、お姉ちゃんを止めなきゃ……!
「お姉ちゃん、大丈夫だよ。
さっきの私の仲間を見たでしょ?
人間じゃない子もいるから、お姉ちゃんが人間じゃなくなっていても気にしないよ!」
だけどお姉ちゃんは、私の言葉を聞いても首を大きく左右に振る。
「しかしあたしは、お前を餌として見ようとしている!
そして血を吸って、同じ吸血鬼にしてしまおうと……っ!」
ああ……お姉ちゃんは、それが嫌なんだな。
私のことを、人間のまま尊重してくれようとしている。
でも、吸血の誘惑に抗いきれないから、苦しんでいるんだ。
ただ吸血鬼化については、「万能耐性」を持っているから、私は大丈夫なんじゃないかな?
それに今や私の生命力は結構高いし、「無限再生」のスキルもあるので、いくらお姉ちゃんに血を吸われても、簡単に致死量になるということはないと思う。
駄目ならその時はその時だ。
今はお姉ちゃんを、楽にしてあげることを優先したい。
「気にしなくてもいいよ、お姉ちゃん!
その欲望、好きなだけ私にぶつければいいさ!」
私は服の襟から首筋を露出させた。
「さあ、ここに思いっきり噛みついてもいいんだよ!」
「や、やめろぉ!
あたしを誘惑するなぁ!」
お姉ちゃんはそう言いつつも、フラフラと吸い寄せられるように、私の方へと歩み寄ってくる。
まさに飢えて仕方がないといった感じだ。
ああ、この感じ……もしかして──、
「お姉ちゃん、今まで人間の血を我慢していたんだね?
でも、もう我慢しなくてもいいんだよ。
私がお姉ちゃん専用の、ゴハンになってあげる」
「う……あ……あぁ……!」
お姉ちゃんは口を大きく開き、私の首筋に牙を近づけてきた。
生暖かく荒い息づかいが、私の首筋を這う。
うん……お姉ちゃんと初めての時を思い出して、ちょっとゾクゾクするね……。
「ん……っ」
軽い痛みと共に、牙が私の首筋に食い込む。
ああ……すーっと血が抜けていく感覚がある。
漫画や小説で、吸血行為が性行為並みに気持ちいいって描写されているのがあったけど、確かにちょっと気持ちいいかも。
それにお姉ちゃんは──、
「しゅごい……んっんくっ、美味ひぃ……っ!」
ふふ……赤ちゃんみたいに、一生懸命吸ってる。
お姉ちゃんたら、可愛い……。
私は思わずお姉ちゃんの頭を撫でる。
お姉ちゃんはそれを、身じろぎもせず受け入れ、ひたすら私の血を貪っていた。
……うん、そろそろかな?
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親密度 アルル 67%
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お、ステータスから消えていたお姉ちゃんの名前が、再び浮かび上がってきた。
親密度がリセットされていたのならば、また上げればいい。
お姉ちゃんが私の血を飲めば飲むほど、親密度は上がっていく。
そしてそれは、私からの影響力も上がっていくということだ。
よし、お姉ちゃんのステータスも、見られるようになったよ。
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・アルル 16歳 女 LV・47
・職業 吸血鬼
・生命力 428/428
・魔 力 276/276
・ 力 426
・耐 久 315
・知 力 127
・体 力 343
・速 度 246
・器 用 134
・ 運 139
・ギフト 戦乙女
・スキル
強 打
回転蹴り
防御強化
暗黒闘気
気配隠蔽
無限再生
魔力循環
毒 無 効
日光耐性
流し斬り
円 月 刃
見 切 り
斬 鎧
百 撃
暗 視
高速飛行
霧 化
吸 血
魅 了
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おお……!
クルルやキララに匹敵する能力だ。
レベルもカプリちゃんと私の次に高い。
人間の血は吸っていなかったようだけど、オークやゴブリン、そして動物の血は吸っていたのかな?
そして「吸血」ってスキルもあるから、これだと吸収値が通常よりも多く稼げそうだし、レベルの高さの秘密もそこにあるのかもしれない。
まあそれはともかく、これだけ親密度を上げた今なら、あれが効くかも。
そう、キラービーの固有スキルだった「絶対命令」。
眷属に拒否することのできない命令を与えるスキルで、その気になれば眷属に命を捨てての特攻をさせることだってできる。
まあ……私はそんなことには使わないけれど。
使うとすれば、こうだ!
「お姉ちゃん、私のことを思い出してっ!!」
「んんっ!?」
私の命令を受けて、お姉ちゃんの身体は、ビクンと跳ねるように震えた。
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