13 迷宮の奥へ
私達はラヴェンダに罠の有無を確認してもらいながら、遺跡の奥へと進む。
彼女にはお姉ちゃんの匂いも追跡してもらっているので、着実に進んでいるという実感があった。
実際その後、私達は地下への入り口を見つけ、その階段を下ると敵の襲撃が増えてきた。
そして進めば進むだけ、その攻撃は激しくなり、間違いなく敵の中心に近づいているということが分かる。
ただ、ラヴェンダだけの判断に頼り切るのも危険なので、一応クルルにも匂いの追跡はしてもらっている。
この子も「臭覚強化」のスキルを持っているからね。
両者の意見が合うようならば、道筋はたぶん間違ってはいないのだろう。
一方カプリちゃんもラヴェンダに対抗して先頭を進み、自ら罠に引っかかるということを繰り返していた。
まあ、彼女ならば罠に引っかかっても死ぬどころか、ダメージを受ける可能性すらほぼ無いので、私達さえ巻き込まないのならば……と、彼女の好きなようにさせている。
それにカプリちゃんが罠を発動させることで、その位置が特定でき、私達が何の苦労も無く罠を回避できるというのも事実だ。
実際、ラヴェンダも罠を見つけることはできても、それを解除できるかというと、完璧にはできないので助かってはいる。
しかし──、
「あっ!?」
私達の目の前で、カプリちゃんの姿が消えた。
落とし穴に落ちたとかいう訳ではなく、その場から少しも動いていなかったのに、姿が完全にかき消えたのだ。
「え……何処へ行ったの?
今の感じ、転移魔法に似ていたけど……?」
「つまり転移の罠で、何処か遠くへ飛ばされてしまったのでは……?」
おそらくカトラさんの推測通りのことが、カプリちゃんの身に起こったのだろう。
まあ、カプリちゃん自身は、岩の中は勿論、深海や溶岩の中に放り込まれたとしても、無事に脱出してくるとは思うけど……。
ただし、いつ帰ってくるのかは分からない。
転移魔法が使えるカプリちゃんでも、自分が今どこにいるのかを把握していないと、正確な転移はできないからなぁ……。
しかも転移させられたのが、遺跡の外だという可能性だってある。
そうなるとまずは、太陽の位置から方向を確認するなどして、自分の知っている場所に辿り着く必要があった。
それができれば、既に位置を把握している遺跡まで再び戻ってくることは可能なのかもしれないけれど、この遺跡の中では気配を感知しにくいみたいなので、私達と合流するまでにはちょっと時間がかかるかもしれない。
いや……一応「眷属召喚」という奥の手があるんだけど、カプリちゃんほどの強大な存在を──しかも遠い場所から呼び出すとなると、魔力を完全消費してしまう可能性があるので、本当に奥の手だ。
まあ、魔力が尽きても死にはしないけど、時には気絶してしまうこともあるので、敵地でその状態になるのは避けたい。
つまり私達は、最大戦力を一時的に失ってしまったのだ。
「う~ん、カプリちゃんの自爆罠解除法は、結構頼りにしていたんだけどなぁ……」
強制転移のような魔法を用いた罠は、事前に見抜いて回避ができたとしても、魔法の専門家では無いラヴェンダでは解除することは難しいし、魔法の専門家のカトラさんも罠の専門家ではないので、やっぱり解除はできない。
もしも絶対に通らなければならないような場所に、そのような罠が設置してあったとしたら、お手上げである。
……いや、転移魔法で突破することはできるか?
ただ、転移先にまで罠があったら、アウトだけど……。
あ、でも罠の発動って、仕掛けに触った時にだよね?
それなら空中を飛んでいるキララには、無効かな?
キララに先行させて、「視覚共有」のスキルで安全を確認しながら行けば、なんとかなるか。
そんな訳で私達は、約一名の脱落者を出したけど、更に遺跡の奥へと足を踏み入れる。
順調だ──私がそう感じていた時、
「そういや、こんな罠だらけのところを、魔物はどうやって移動しているんだろうなぁ……?」
「え……?」
エルシィさんが、そんなことを言い出した。
「知能の低いゴブリンやオークじゃ、罠の位置を記憶して回避できないだろ?
でも、連中が罠に引っかかった形跡は無いし……」
「た、確かにそうだけど……。
あ、あれ?」
私達は、重大な何かを見落としていることに気付いた。
「あ……もしかして、隠し通路……?」
「!!」
カトラさん、たぶんそれで正解!
「あ……袋小路なのに、魔物の臭いが濃い場所がいくつかあったような……」
「ラヴェンダ、そこだよ!
場所を、憶えている!?」
「え~と……確か……」
ラヴェンダの案内で怪しい場所に行き、そこを調べると──、
「階段だ……!」
壁に隠し扉があり、その奥に階段があった。
上に行くのも、下に行くのもある。
もっと早くこれに気付いていれば、一直線に目的の場所まで行けたのに……!
たぶんこの階段の一番下の階層に、敵の黒幕がいる。
それに近づいていることを自覚しつつ、私達は周囲を警戒しながら、階段を下りていった。
そして階段が尽きると、そこには──、
広間が──いや、闘技場かな?
円形の広い部屋があり、周囲は観客席のようなもので囲まれている。
無論、その観客席には誰もいないが。
で、その闘技場の中心には──、
「お姉ちゃん……!」
我が姉、アルルが待ち構えていた。
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