11 姉を求めて
キララを仲間に加えた翌日、ようやくカプリちゃんが姿を現した。
これ以上姿を見せないようなら、キララが持っていたスキル「眷属召喚」で、強制的に呼び出そうかと思っていたところだよ……。
「マルルー、来たですよー」
「カプリちゃん、早速で悪いけど、遠征に出掛けるから手伝ってくれる?」
「オー、お出掛けですかー?
いいですよー」
カプリちゃんとしては復興中の町には興味が無いらしく、遠征で冒険することの方が嬉しいようだ。
……まるで散歩に出掛ける時の犬のようにはしゃいでいるけど、ラヴェンダも同じような状態になっているな……。
「さー、ご主人、行きますよー!」
尻尾がブンブンである。
そんな訳で私達は、お姉ちゃん捜索の旅へと出発した。
まあ、表向きの理由は、斡旋所から依頼された「魔物の群れの追跡と、可能ならばその殲滅」なんだけどね。
だけど私としては、ついでの事柄だ。
ただ幸いなことに、この2つの事柄は両立できる。
魔物の群れが撤退した痕跡は、少し分かりにくいことになっていた。
それは彼らが侵攻してきた時と、まったく同じ道を逆戻りしている為、足跡が混じっているからだ。
でもだからこそ、その行く先は辿りやすい。
数千匹という魔物が歩いた跡は河のように残っており、その先に彼らが逃げ込んだ拠点のような物があると推測できた。
そしてお姉ちゃんも、その拠点があると思われる方角へと飛んでいった。
お姉ちゃんと魔物達の間にどんな関係があるのか、それとも無いのか、それはよく分からないけれど……。
思えばあの時のお姉ちゃんの格好は、黒い鎧と黒いマントを纏い、まるで悪の組織の女幹部のようだった。
……悪堕ちしている……?
お姉ちゃんが町の攻撃に参加していたとは、思いたくないんだけどねぇ……。
でも本当にそうだった場合、私はどうすればいいんだろう……?
……まずはお姉ちゃんに会って、色々と確かめないとね……。
で、追跡方法についてだけど、普通に徒歩で追うと時間がかかるので、空を飛べるカプリちゃんに竜の姿へと変身してもらい、その背中に乗って移動することになる。
何かあったら彼女の転移魔法で、いつでも家に帰ることができるので楽な旅だ。
「それにしても、随分と長距離の移動をしているな……」
地上を見下ろしたエルシィさんは、そんな呟きを漏らした。
確かに魔物の群れが通った跡は、上空からでもハッキリ見えるほどで、それが遠くまで続いている。
そんな長距離移動の所為か、途中で力尽きて倒れている魔物の姿も無数に見えた。
それにこれ……たぶん私の故郷だった村の、その跡地よりも先まで続いているよね?
だとしたら村を襲ったオークの群れは、本体の先遣隊でしかなかったんだろうな……。
仮に私達が上手くオーク達を撃退できていたとしても、その後に来る数千匹の魔物の群れに蹂躙されて、村が滅びるという運命は変わらなかったということか……。
その後、実際に踏み潰された村の姿を目の当たりにして、なんとも言えない気持ちになった。
そしてそんな村の跡を越えて更に進むと──、
「あれは……?」
魔物達の足跡は乾いた土だらけの荒野に入り、グランドキャニオンのような深い渓谷の底へと続いていく。
そしてそこには、古い石造りの建物が見える。
それはかなり大きなもので、城や神殿と言っても良さそうなものだった。
「これは……遺跡ですね!」
カトラさんは、テンション高めな声を上げる。
ああ……魔法使いって、遺跡とか遺物とかの歴史的・学術的価値がありそうなものが好きそうだもんね。
彼女も例外なくそうなのか。
「しかしこんなところに、あのようなものがあるとは……。
この土地に都市があったという資料は残っていなかったと思いますが、未発見の先史文明の遺跡なのでしょうか……?
これは大発見なのでは……?」
カトラさんがブツブツと早口での独り言を続けているけど、それに構わず──、
『あれ、我のブレスで吹き飛ばしますかー?』
と、カプリちゃんが提案してきた。
「そ、それを壊すなんて、とんでもない!
人類の歴史を知ることができる、宝なんですよ!?」
『一撃で敵を一掃できて、楽ですよー?』
「駄目ですっ!!」
カトラさん激おこ。
普段は大人しいのに、珍しいな……。
いや、夜は結構激しくて、エルシィさんが受けに回るくらいだし、本当は荒い気性を隠しているのかもしれない。
私も夜のカトラさんには、いつも負ける。
というか、誰かに勝ったためしが無い……。
それなのにエルシィさんと2人がかりがデフォとか、過剰戦力だよぉ!
……まあそれはともかく、私もカトラさんに賛成かな。
「カプリちゃん、中にお姉ちゃんがいるかもしれないから、大規模な攻撃は禁止」
『え~?』
え~?じゃないが。
カプリちゃんの攻撃でお姉ちゃんに何かあったら、今後我が家の敷居はまたがせないよ?
そんな私の内心が伝わったのか、カプリちゃんは、
『ソ、ソーリー……』
と、謝ってきた。
「察しのいい娘は好きだよ。
カプリちゃん、あの遺跡の前に着陸して」
『はーい!』
こうして私達は、敵の拠点と思われる遺跡に辿り着いた。
さあ、突入するぞー。
ブックマーク・☆での評価・誤字報告・いいね・感想に感謝です。




