表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/206

10 蜂達との別れと出会い

 斡旋所から家に帰った私は、仲間達へお姉ちゃんと会ったという事実を伝えた。

 そしてお姉ちゃんが消えていったのは魔物達と同じ方向で、だから依頼にかこつけて捜しに行きたいのだ──とも。


「そういうことなら、協力するぞ」


「ですね」


 一応みんなからの賛同は得られた。

 そして更に──、


「今回は私も行きますよ、ご主人ー!」


「うん、ラヴェンダは追跡とかが得意そうだから、頼らせてもらうよ」


「任せてくださーい!」

 

 と、ラヴェンダも同行することになった。

 まあぶっちゃけ、カプリちゃんの感知能力の方が期待できるけどね。

 だから今はいないけど、カプリちゃんの参加は必須だな。

 もしかしたら敵の本拠地に突入する必要が出てくるのかもしれないし、我らの最大戦力としても欠かせないと思う。


「それで……私達がいない間は、ティティとキャロルさんに家を守ってもらえれば……と思います」


 店を壊されたキャロルさんは、現在我が家に泊まっているので丁度いい。


「ええ、任せて」


「~~~(この命に代えても)」


 ティティ、重い。

 でもこの前も家の防衛の為に頑張ってくれたし、これからの働きに対するご褒美の前払いも兼ねて、今夜は可愛がってあげよう。

 

 ……いや、実際に可愛がられるのは、私なんだけどね。

 どうやら私は総受けタイプらしく、主導権を握ろうとしても、いつの間にか相手に翻弄されていることが多いんだよねぇ……。

 

 ともかく、カプリちゃんが来たら出発だ!


 ……しかし気まぐれな(ドラゴン)なので、翌日になってもカプリちゃんは姿を見せなかった。

 たぶん町の復興作業を手伝うのが、面倒臭かったのだと思う。

 それに私も、色々な作業を手伝っているので、ここ数日はカプリちゃんに構ってあげる暇があまりなかったからなぁ……。

 ちょっと臍を曲げられちゃったというのも、あるのかも……。


 しかしカプリちゃんを待つ間、何をしないという訳にもいかないので、私は町の復興作業を手伝いつつ、時間を見つけてキラ達の巣の様子を見に行った。


「うわ……ぐちゃぐちゃ……」


 森の有様は、魔物に荒らされて酷い物だった。

 草は踏み荒らされているし、木は枝が折られ、更に餌にしたのかどうか分からないけど、皮が剥がされていた。

 これでは枯れてしまう木も、少なくないかもなぁ……。

 数年後には、森の面積が減っているかもしれない。


 それでもキラ達の巣は勿論、私達が作った花畑は比較的無事な様子だった。

 キラ達が守ってくれたんだな……。

 周囲には無数の魔物と蜂達の死骸が転がっていて、蜂達にとっても激しい戦いだったことが分かる。


『ゴメンね……。

 私の所為で……』


『我らは、我が縄張りと巣を守ったに過ぎぬ。

 どのみち避けられぬ戦いだった』


 キラはそう言ってくれたし、それも事実なんだろうけれど、私が花畑を作らなければ……町の防衛に協力させて戦力を分散させていなければ、もっと少ない被害で済んだかもしれない──そんな想いが拭いきれなかった。

 ただ、蜂達の協力が無ければ、町の被害はもっと大きくなっていただろうし、どっちが良かったとは言えなんだよね……。

 結局、私がどんな選択をしても、後悔することにはなったのだろう……。

 

 そんな私を(なぐさ)めるように、蜂達は私の周囲をクルクルと飛ぶ。

 ああ……蜂達に、何か恩返しをしないとなぁ……。

 でも、私はもうすぐいなくなるかもしれない。

 そうなる前に、やれることはやらなきゃならないし、今後のこともキラと話し合っておかなきゃ……。


 だから私達が拠点を移す可能性について話をしたら、キラは──、


『残念だが我々は今回の戦いで消耗し過ぎたし、もう冬も近いので、巣を移す余裕はないな……』


 私達とは一緒には、行けないようだ。

 キラービーは冬に入ったら冬眠する習性があるらしく、これから巣の蜂総出でその準備に取り掛からなければならないという。

 しかし今回の戦いでは巣も壊れたし、死んでしまった蜂も多いので、その準備が間に合うのかどうかはギリギリといった感じなのだとか。

 最悪の場合は冬眠に失敗して、全滅とはいかないまでも、多くの蜂が死んでしまうかもしれないそうだ。


『そんな……』


『気にするな……よくあることだ』


 そりゃあ、厳しい自然の中では、そういうこともあるのだろうけれど……。

 でも気にするよ。


『私に何か手伝えることがあったら言ってね。

 今度、果物も沢山持ってくるし、巣を寒風(かんぷう)から守る為の布も持ってくるから!』

 

『感謝する……。

 我々はこの地に留まり、そなたの作った花畑を守りながら暮らしていこう』


『私も別の土地に行っても、できるだけ様子を見に来るよ』


 転移魔法を駆使すれば、どうにかなるだろう。


『それには及ばぬ。

 その代わり、この子を連れて行ってくれ』


「え?」


 キラの背後から、30cmほどの蜂が姿を現した。

 2m近いサイズのキラから比べれば小さいけど、それでも他の蜂達から比べれば、3倍くらいは大きい。


『我が1番新しい娘だ。

 いずれは女王となり、新たな巣を作ることになる。

 それはそなた達が移り住んだ土地で……ということになろう。

 我らは個にして全、全にして個……。

 その娘とそなたが一緒にいれば、遠く離れた地でも我らとそなたの繋がりは消えぬ』


 ふ~ん、蜂達は全体で、意識が繋がっているということかな?

 まあ、私と眷属も、何処となく以心伝心ができているっぽいし、そんな感じなのかもしれない。


『分かったよ。

 今、連れて行っても?』


『構わぬ。

 そなたとのこれからの付き合いを考えて、特別製のローヤルゼリーで育てた。

 人との生活にも馴染みやすいだろう』


 よく分からないけど、特殊個体ってところか。


『よし、おいでー』


『あうー』

 

 王女蜂が私の胸に飛び込んできた。

 まだ幼い所為か、念話でも言葉は使えないらしい。

 あ、名前を考えないと。

 う~ん……キララでいいかな。


『お前の名前はキララ。

 これからよろしくね』


『うい!』


 うん、嬉しそうだし、気に入ってくれたようだね。

 お、もうステータスが見られる……というか、既に親密度が100%!?

 キラ達と精神的な繋がりがある所為かな……?

 

 というか、キラが「同盟度」だったのに対して、キララは「親密度」か……。

 今までは生物としてお互いに違いすぎる所為でそうなっていたみたいだけど、キラが私ともっと深い仲になろうと考えた結果、キララに種族の壁を乗り越えるような能力を付与して生み出したってことかな……?

 キララが成長するとどうなるのか、ちょっと怖いな……。


 さて、キララのステータスだけど……。


───────────────

 ・キララ 0歳 雌 LV・1

 ・職業 王女蜂

 

 ・生命力 423/423

 ・魔 力 248/248

 

 ・ 力  198

 ・耐 久 235

 ・知 力 101

 ・体 力 333

 ・速 度 324

 ・器 用 71

 ・ 運  103


 ・ギフト ──

 ・スキル

      絶対命令

      眷属強化

      眷属召喚

      高速飛行

      猛毒生成

      視覚共有

      念  話

      万能耐性

      万能感知

      風  刃

      衝 撃 波

      擬  態

───────────────


 うえっ、なにこれ!?

 レベルが1なのに、キラの能力をそのまま受け継いでいる!?

 いや、それどころか、一部のスキルはバージョンアップして……!?

 生まれたばかりでこれって、末恐ろしいなぁ……。


 だけど、心強い仲間が増えたというのは、間違いないね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] えぇぇぇ 人並みの知識持った蜂が全部意識繋がってるとか怖いわぁ どっかで巣を潰したら、全ての森に入る度に襲われるとかありそうやん。 キラービー こわぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ