表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/206

7 ボス戦

 昨日は間に合いませんでした……。

 そこにいたのは、まさに小鬼(こおに)と呼ぶべき存在だった。

 幼児のように小さな体躯だったけど、皮膚の色は青く、長い白髪に隠れた(ひたい)には、短いけど一対(いっつい)(つの)がある。


 あれはああいう種類の魔物なのか、それとも何かの魔物の子供なのか……。

 その見た目だけならば、ちょっと可愛くすら見えるなぁ。

 が──、


「いっ!?」


 小鬼が物凄いスピードで跳びかかってきた。

 私はなんとか(かわ)すことができたけど、小鬼が勢い余って突っ込んだ家の壁には、大きな穴が空いている。


「なんなの、あのスピードとパワー……!?」


 それは子供のような姿には、まったく見合わないものだった。

 あれは魔物の子供なのではなく、これで既に完成された存在なのだろう。

 ……というか親がいて、あれ以上強いとは思いたくない。


 もしかしてこいつが、町に侵入した魔物達のボスなんじゃないの?

 ならばここで片付けておかないと、町への被害が拡大してしまう。

 

 それじゃあ……ここはまず、キラ戦法を試してみるかな。

 え~と、「猛毒生成」と「水弾(すいだん)」のスキルを合成して──、


「それっ、『猛毒水弾』っ!!」


 直径1mほどもある猛毒の水塊を、小鬼が突っ込んだ壁の穴に撃ち込んだ。

 結構勢いを付けて投げ入れたから、何かに当たれば弾けて広範囲に毒をまき散らすことだろう。

 その無数の水しぶきを回避するのは、転移魔法でも使わなければ無理だと思う。


 しかし小鬼は、構わずに壁の穴から飛びしてきた。

 ゴブリンやオークならば即死するような毒だけど、小鬼には効いていないようだ。

 うげぇ、耐性持ちか……。


 じゃあ、毒を浴びた状態は、百害あって一利無し。

 確か空気に触れていれば、数時間で毒は分解されていくはずだけど、それでもあの状態で他の人間に(さわ)られたら困る。

 今度は普通の「水弾」をぶつけて、毒を洗い流そう。


 ……って、「水弾」を避けようともせず、突っ込んでくる!?

 その程度では、ダメージにもならないってこと!?


 私は小鬼の攻撃を回避しながら、焦りを感じ始めていた。

 う~ん、「水弾」が効かないとなると、「極寒(ごっかん)」か「嵐」や「(いかずち)」、そして「火炎息」クラスの魔法じゃないと効かないのかもしれないけど、こんな町の中では他人を巻き込む可能性が高いので使えない。


 いや、範囲を絞って──というのは、やってやれないことはないかもしれないけれど、ぶっつけ本番では試したくないし……。

 実際、難しいんだよ、広範囲に広がる攻撃を、1ヶ所にとどめるのは……。


 となると、あまり得意ではないけれど、近接戦闘で戦うしかない?

 ……まずは「身体強化」!

 これで動きは、小鬼を上回れるはず。

 

 ただ、私は「身体強化」と他のスキルを同時には使えないので、攻撃系のスキルを使いたい時は一旦解除して、攻撃が終わった瞬間に再び使う……という、面倒臭い切り替えが必要になる。

 それが上手くできないと、急に強化が途切れて隙に繋がるという訳だ。


 まあ、近接戦闘がメインの熟練者だと、切り替えも必要とせずにスキルを同時に使うことも可能らしいけど、私は魔法中心の戦闘スタイルなので、そういうのはあまり練習してこなかった。

 ……練習しておけば良かった。


 それでもやるしかない。

 まずはスキル構成を入れ替え、ナイフを構え──、


「はあっ!!」


 私は跳びかかってきた小鬼に対して、ラムラス様からコピーした「一刀両断」を使う。

 ラムサス様本人ならば、トロールの腕を簡単に斬り飛ばしていたけど──、


「き、斬れないっ!?」


 小鬼の身体(からだ)に、薄く血の筋は生じた。

 でも、両断とまではいかない。

 私の安物のナイフでは切れ味が足りず、そして「力」や技術も足りないのだろう。


 くっ……私の物理攻撃じゃ、勝ち目が無いじゃんっ!!

 小鬼はそれを確信してなのか、遠慮無く跳びかかってくる。

 だけど、防御ができないとは言ってないぞ!


「えーい、『魔力障壁』!」


 魔力で構築した壁が、小鬼の攻撃を受け止め、一瞬だがその動きを止めた。

 そして──、


「私のこと、忘れてないかしら?」


 小鬼の背後に、キャロルさん登場!!

 彼女は最初の小鬼の攻撃で、ちょっとの間だけ気絶してはいたらしいけど、すぐに回復して私に加勢する機会を(うかが)っていた。

 私はそれに気付いていたし、だからこそ小鬼にかかった毒も洗い流したのだけど、それを読み取れなかった小鬼にとっては、致命的な敗因となったね。


「プギュッ!?」

 

 小鬼が背後からかけられた声に気付いて振り向こうとした時、キャロルさんの(こぶし)は既にそいつの顔面を捉えていた。

 あれは鉄板すらも(つらぬ)くという、「鉄破拳(てっぱけん)」のスキルだね。

 しかも「力」の数値が私よりもかなり高いので、今度こそ攻撃は効いている。

 ただ、それでも小鬼の顔面を貫くほどではない……が、何十mも吹き飛ばしてはいた。


「ありがとうございます。

 助かりました!」


「いいのよ、いいのよ。

 私もマルルちゃんが隙を作ってくれなきゃ、あれほど綺麗に攻撃は入らなかったと思うわ」


 そうだね……。

 2人で協力しなきゃ、勝ち目は無かったと思う。

 ……って、まだトドメは刺していないけれど。


 私が小鬼の方を見ると、まだ地面に倒れていた。

 さすがにダメージは大きいようだ。

 あれならば、トドメを刺すことは難しくはな──、


「ん?」


 今一瞬、小鬼の身体が膨らんだような……。

 ……いや、見間違いじゃないな!?

 あ、もしかして!?


「あいつ、クルルと同じ、『伸縮自在』のスキルを使っていた(・・・・・)!?」


 小さい身体の方が、町に潜入する時に目立たないから!?

 だとすればあいつってば、もっと前から町に潜入していて、仲間を町へ引き入れる準備をしていたってこと?

 そして実際には、もっと大きな身体を持った存在だった!?


 事実、小鬼の身体は大きくなっていく。

 いや、もう小鬼じゃない。

 大鬼──もしかしてオーガって奴?

 しかもおそらく、ただのオーガではなく、上位個体だ。


 倒したと思ったら正体を現すとか、ラスボスかい!?

 ブックマーク・☆での評価・誤字報告・いいねに感謝です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ