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4 敵の背後を突く

 私達はカプリちゃんの索敵能力と転移魔法によって、オーク・ゴブリン連合軍の背後へと追いつくことができた。

 その連合軍の最後尾は、既に我らが拠点の町に隣接した広い草原に展開している。

 この先にある森を抜ければ、町まではすぐの距離だ。


「おいおいおい、これ千や二千じゃきかない数がいるんじゃ……!?」


 エルシィさんが(うめ)く。

 確かに少し距離が離れているのでハッキリとは分からないが……いや、距離が近くても多すぎて、正確な数は把握できないと思う。

 とにかく凄い数の、オークやゴブリンがいる。

 中にはオークキングのような、上位種らしき姿も複数確認できた。

 身体(からだ)が大きいから、すぐに分かるな……。


 こんなのが町になだれ込んだら、抵抗しきれないぞ……!?

 しかも群れの多くは既に森に入っているから、時間の問題だと思う。


「カプリちゃん、敵の先頭は町に到達している?」


「う~ん、まだですねー」


「それなら背後から攻撃して、敵の意識をこちらに向けさせるのはどうでしょう?

 あいつらが町に攻撃するまでの時間が、稼げると思います。

 まだ太陽が出ているから、()の光が苦手な奴らの動きは鈍いはずだし、やるなら今ですよね?」


「そうですね……。

 あまりにも数が多いので、カプリさんがいなければ逃げ出していたと思いますが……」


 うん、カトラさんが言うように、確かにカプリちゃんがいないと無理だな……。

 いや、それでも私達だけが、彼女に頼る訳にはいかないけれど……。


 まず最優先の目標が、(さら)われた女の人達の救出だ。

 そして町の防衛。

 その為には、カプリちゃんには別行動をとってもらう必要がある。

 

「カプリちゃん、あの群れの中に生きている人間はいる?」


「いますねー」


「じゃあ、全員救い出して、私達の家に運んでくれる?

 その後は、町の方から群れを攻撃してね。

 町に被害が出るような、大きな攻撃は駄目だよ?」


 これは転移魔法を駆使できて、単独で敵軍の中に侵入しても危険が無いほど強い、カプリちゃんにしかできないことだ。


「分かりましたー!」


 次の瞬間、カプリちゃんの姿が消える。

 その直後から、魔物の群れの中でなにやら騒動が起こっていることが、遠くからも分かった。

 上手く救出できたかな?


 あっ!?


 魔物群れの中で、大きな爆発が起こったんだけどぉ!?

 カプリちゃんが置き土産とばかりに、攻撃していったな!?

 まあ、これで敵の数がかなり減ったから、こちらとしてもありがたいけど……。


「あいつらが混乱している今が、チャンスだな……!」


 エルシィさんが剣を抜いて、群れの方へと走っていく。

 そして剣を上段に振り上げると、その(やいば)に闘気を(まと)わせ、5mはあろうかという巨大な光の剣を生み出した。

 それを振り下ろすと、光の剣は弾けるように十数体の敵を飲み込む。


 あれは……「降刃(こうじん)」のスキルだね。

 なかなか強いスキルなんだが、おそらく数千体もいる敵に対しては、焼け石に水……。

 だから多くの敵がエルシィさんへ殺到していくけど、彼女は回転しつつ剣を振って敵をなぎ払い、囲まれることはない。


 あの「円月刃(えんげつじん)」のスキルは、回転して全方位に同時攻撃できるので、乱戦の中では無敵に近い性能を誇る。

 まるで無双系のゲームのようだ。

 まあ、弓矢や魔法のような飛び道具による攻撃には弱いけど、ゴブリンやオークは基本的には使えないし……。

 あの調子ならば魔力が尽きてスキルが使えなくなるまで、エルシィさんが危険に(おちい)ることは無いだろう。


 また、クルルも群れの中へと突入していた。


「ゴガアァァーっ!!」


 ……うん、完全に怪獣だね。

 今のクルルは、「伸縮自在」というスキルを使って、10倍くらいのサイズまで膨れ上がっている。

 あの巨体からすれば、オークやゴブリンなんて蟻みたいなものだ。


 ちなみに「伸()自在」なので、小さくなることもできる為、最近のクルルは仔犬くらいのサイズになって家の中でくつろいでいることが多い。

 クルル的には、こちらが本命の目的として習得したスキルなのだろう。

 その習得方法は本人に聞いても、『なんとなく?』としか返ってこないのでよく分からないが、可愛いので気にしないことにしておく。


 なお、私が「伸縮自在」を使うと巨大化の際に服が破れるし、小さくなればそれはそれで服が脱げるので、ほぼ永久封印だ。


 そしてカトラさんも、大呪文を発動させた。

 広範囲に暴風を巻き起こして、何もかも吹き飛ばす「嵐」。

 続いて雷《かみなり》の雨を降らせる「(いかずち)」。


 これらの連続使用で、百数十を超える魔物が倒されたと思う。

 おそらく私とカプリちゃん以外で、1番の殲滅力を持つのはカトラさんだろうね。

 ただ、あれだけの大呪文は、4~5回も使えば魔力切れになってしまう。


 そこで私に交代だ。


「カトラさんは下がって、魔力の回復を!」


「はい!」

 

 一応カトラさんにも、魔力を急速に回復させることができる「魔力循環」のコツを教えているので、彼女も自力でそれを習得している。

 だから少し休めば、戦闘に復帰することが可能だ。

 ただ、大呪文を使用できるほど回復するまでには、数分はかかる。


 それまでに私が、時間を稼がなきゃ!

 まず、「空中浮揚」で上空へ行き、そこからカプリちゃんよりコピーした「火炎息」を魔物の群れの中心目掛けて撃ち込む。

 口から炎を吐く系の女子ってどうなんだ……?と、思わないでもないけど、背に腹は代えられない。


 私が吐き出した巨大な炎の塊は、数百もの魔物を飲み込んだ。

 ただその代償も大きく、私の魔力も7割以上持っていかれる。

 それでも魔物達は混乱状態になり、バラバラになった連中を各個撃破しやすくなったので、暫くの間は大規模な範囲攻撃をする必要は無くなったと思う。

 いや、密集しているところには、魔力が続く限り、遠慮無く使うけどね。

 ほい、「極寒」。

 

 しかし全体から見れば、倒せたのはまだ4割程度なんじゃないだろうか?

 だからここから重要になってくるのは、戦闘を継続する為の持久力だ。

 力の配分を考え、効率よく回復しながら戦っていかなければならない。


 戦いはここからが、本番だと言えた。

 応援ありがとうございます!

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[一言] 火を吐く女の子って普通では?
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