2 積み上げてきた矜持
森での爆発騒ぎは、町でちょっとした騒ぎになり、調査の為に冒険者が派遣されるなんてことになっていた。
だけど結局、詳しいことは何も分からずに、調査は打ち切られることとなる。
どうやらカプリちゃんが吐き出した炎は、ゴブリンの群れを完全に焼き尽くしてしまったらしく、存在の痕跡すら残さなかったらしい。
結果的にゴブリンの襲撃が起きかけたという事実そのものが、町の人達にとっては最初から無かったも同然となってしまった。
ただ、謎の爆発のおかげで、警戒態勢自体は当分の間、維持されるだろう。
……それならば、それでもいいか。
まあどのみち、ゴブリンの群れはもういなくなったのだから、無駄な警戒になるのかもしれないけど……。
あと、カプリちゃんが約1000匹ものゴブリンを倒してくれたおかげで、私にも大量の吸収値が分配されることとなる。
そんな訳で、私のレベルは40に達した。
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・マルル 12歳 女 LV・40
・職業 冒険者
・生命力 245/245
・魔 力 303/303
・ 力 152
・耐 久 164
・知 力 276
・体 力 188
・速 度 184
・器 用 132
・ 運 171
・ギフト 百合
・スキル(25/25)
●身体強化
●気配隠蔽
●万能耐性
●流し斬り
●空間収納
●眷属強化
●万能感知
●無限再生
●魔力循環
●視覚共有
●念 話
●水 弾
●火 炎 弾
●風 刃
●自然操作
●空中浮揚
●高速飛行
●猛毒生成
●極 寒
●魔力障壁
●転 移
●火 炎 息
●家 守
● 雷
●女 体 化
以下略
親密度 クルル 100%
カトラ 100%
エルシィ 100%
ラムラス 100%
カプリファス100%
クリーセェ 53%
従属度 ラヴェンダ 100%
ティティ 100%
以下略
同盟度 キ ラ 100%
ケヴィン 100%
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あれ?
なんか「女体化」ってスキルが増えている……。
え、つまりこれって、男の人を強制的に性転換させて、私の眷属に加えることが可能ってこと!?
ちょっと試してみるか……。
この世界にいる鶏っぽい鳥──コカトリス・ミニ。
魔獣の仲間だけど、小型で比較的大人しい品種である為、食用として一般でもよく飼育されている。
こいつは鶏冠のサイズによって、ハッキリと雄と雌が外見で区別できるので、「女体化」の実証実験には丁度いい。
そのコカトリス・ミニの雄鶏を購入し、「女体化」のスキルをかけてみる。
おお……雌鶏に変化した!
失敗したら食用にしようと思ったけど、今後は卵を取る為に飼育しよう。
ともかく動物実験は成功したので、人間に使用してもおそらく問題は無いだろう。
敵対する人間に使って、強制的に私の眷属として従属させるということも可能だね。
だけど他にも、自らに使いたいと思っている人もいるんじゃないかな?
ということで、キャロルさんの店に足を運ぶことにする。
彼女の身体は男の人だけど、心は女の人だ。
なお、本名はケヴィンである。
「──という能力を手に入れたのですが、キャロルさんは使ってみますか?」
「……ちょっと、考えさせてちょうだい」
私はキャロルさんが、即この話に飛びつくものだと思っていたのだけど、意外にも彼女は悩んだ。
そして長い時間をかけて出した答えは──、
「私は……やめておくわ」
「えっ、いいんですか!?」
予想外の答えだった。
「私ね……この身体が本来の自分とは、違う性別のものだとは感じているけれど、それでもこの身体のまま、自分の思う通りに女性として生きてきたわ。
誰になんと言われようと、決して折れずに理想の女性像を追い求めて貫き通してきたのよ。
この今の私の姿は、誰にも負けずに勝ち取ってきたという証なの。
それを今更捨てるというのは、忍びないわ……」
ああ……確かにキャロルさんは、一見では変人に思えるけど、それでも町の人々からはある程度受け入れられているし、彼女の店も人々から頼られてもいると思う。
それは彼女が、乗り越えてきた艱難辛苦の末に得た勝利だ。
大変な苦労の末に築き上げた自分自身の在り方に、彼女はおそらく愛着というか、誇りのようなものを持っているのかもしれない。
……それを大事にしたいというキャロルさんの気持ちも、分からないではないな……。
「それにマルルちゃんのその能力は、望む人全てに使う訳じゃないのでしょ?」
「それはまあ……そうですね」
希望者全員となると、何百、何千という人達の相手をしなければならなくなるかもしれない。
それはさすがに生活に支障が出そうなので、使うとしたら私が必要だと感じた時だけだ。
「だから私は、私と同じような立場の人達の為にも、この姿のままで生きて、こういう生き方でも幸せになれるのだという、道標になりたいと思うの」
「……素敵なことだと思います」
なんというか、キャロルさんに対しては適切ではないのだろうけど、「男前」という言葉が頭に浮かんでしまった。
やっぱり格好いいよ、この人……。
そしてそんな人だから、安心して一緒に商売ができるんだよね。
これからも彼女との関係は、大事にしていこうと思った。
それからキャロルさんと雑談をした後、家に帰ることにしたんだけど、店を出ると商店街の方が騒然としている気配が伝わってきた。
そして──、
「避難民の集団が現れたぞぉ~っ!!」
そんな声が聞こえてきた。
……なんだか嫌な予感がする……。
私だって、元避難民だと言えばそうだ。
そんな私と同じ立場の人達が来たということは、もしかしたら──。
「マルルちゃん……大丈夫?」
「え……ええ……」
オークに滅ぼされた故郷のことを思い出していた所為か、私は険しい顔をしていたらしい。
キャロルさんに指摘されて、初めて気付いた。
「とにかく、行ってみましょう」
「は、はい」
私達は、避難民と会ってみることにした。
見覚えの無いスキルがあると思いますが、他の眷属もレベルアップ時などに新しいのを習得したので、それをコピーしたものです。
相変わらずストックが無いので、そろそろどこかで休みを入れる必要がありそう……。それ以外でも、用事で休むこともありますが。




