1 不穏な動き
今回から新章です。
王女クリーセェ様の依頼を終えてから時が経ち、そろそろ秋を迎える。
あれから次期国王が決まったという話は聞かないけど、何か大きな事件があったという話も聞かないので、たぶんクリーセェ様は上手くやっているのだと思う。
少なくとも、死んだり失脚したりはしていないはずだ。
一方私はというと、のんびりと冒険者家業を続けていて、特に大きな変化はない。
「う~ん、デリシャスでーす」
「~~~」
今日も朝からカプリちゃんが遊びにきていて、朝食を食べていた。
そんな彼女の言葉に、朝食を作ったティティが、恐縮したように頭を下げている。
いつもの朝の風景だ。
そういえばカプリちゃんとの親密度も上がって、今や100%に達していた。
でも、竜には人間のような性欲が無いのか、それとも発情期がまだなのか、とにかく襲われることはまだ無い。
そしてカプリちゃんのステータスが閲覧できるようになったんだけど、それを見て度肝を抜かれたね。
───────────────
・カプリファス 182歳 雌 LV・102
・職業 自由人
・生命力 8592/8592
・魔 力 9236/9236
・ 力 4581
・耐 久 3795
・知 力 1045
・体 力 5699
・速 度 2223
・器 用 995
・ 運 891
・ギフト ──
・スキル
食いつき
ひっかき
尾 撃
無限再生
万能耐性
万能感知
火 炎 息
自然操作
魔力循環
魔力障壁
高速飛翔
転 移
念 話
人 化
───────────────
う~ん、私達とは次元が違う……。
私が100レベルになっても、ここまでにはなれないよねぇ……。
カプリちゃんは、絶対に怒らせないようにしよ……。
いや、怒らせなくても、これだけ体力がある彼女に身体を求められたら、死ぬかもしれない……。
……まあ、カプリちゃんからかなり強力なスキルをコピーできたから、それなりに耐えられるかもしれないけど。
魔力がある限り、ダメージが回復していく「無限再生」があるからね。
これも魔力が尽きれば無効化されるけど、大気中に含まれる魔力を循環させて吸収できる「魔力循環」もあるので、余っ程強力な魔法を連発でもしない限り、魔力切れすることはなくなった。
もうカプリちゃん以外の相手に、一対一で負ける気はしないなぁ……。
色んな意味で。
で、朝食が終わると、エルシィさんから話があった。
「さっき市場に行ったら、帰還しない冒険者がいるって噂になっていた」
「よくあることではないですか?」
と、カトラさんは言う。
悲しいことだけど、実際によくあることらしい。
その理由は様々で、魔物にやられたり、犯罪を行って雲隠れしたり、単に誰にも言わずに旅へ出たり……。
「いや、それが増加傾向なんだってさ。
危険な魔物が増えているんじゃないか……って話になっている」
それって、場合によってはこの町にも被害が出かねないってことかな?
「カプリちゃん、山脈で魔物の動きがおかしいとかいう兆候はある?」
「うーん、気付きませんでしたー」
じゃあ、広域での話ではないのか。
つまりこの町の周辺で、何か異常が起こっているってこと?
それならキラービー達にも話を通して、調べてもらった方がいいかな?
そんな訳で私は、蜂蜜の回収も兼ねて、近隣の魔物の動きを確認する為に森へ行くことにした。
で、その道すがら──、
「お、ゴブリンだ」
エルシィさんが、3匹のゴブリンを見つけた。
ゴブリンはオークよりも弱い魔物らしいけど、その性質はオークと似ているらしい。
つまり人間を襲って食べたり、女性を攫って妊娠させたりするということだ。
うん、個人的な恨みは無いけど、生かしちゃおけないね。
まあ、数が多ければ別だけど、今や私達の敵ではないので、瞬殺である。
「こんなところに出てくるなんて、珍しいですね……」
ゴブリン達の死骸を見て、カトラさんはそう言った。
普通こういう人型の魔物って、町の近くにはいない。
人間にとって危険過ぎる相手なので、見つけ次第駆除される存在だからだ。
そして私は、この珍しいケースに心当たりがある。
私の故郷の村──その近くの山にオークの斥候が現れて──。
あの時と、似ているような気がする……!
「これ、ゴブリンの群れが近くにいるのでは……」
「その可能性もありますね……」
となると、捜し出して駆除した方がいいよね……。
あ、そうだ。
「カプリちゃん、この辺にいるゴブリンの群れの位置、分かる?」
竜の感知能力なら、10km先にいても見つけ出すことができるだろう。
「ん~……いるでーす。
千匹くらい」
「せんっ!?」
待って、それはさすがに私達の手に余る数だ。
100か200くらいなら、私の「極寒」を駆使すればいけるような気がするけど、それ以上だと魔力がもたない。
いくら「魔力循環」で魔力が回復できても、回復スピードよりも消費スピードの方が上回ってしまうだろう。
「カプリちゃん、悪いけど倒してきてくれる?」
「いーですよー!」
ここはカプリちゃんに頼ろう。
でも、穏便に──
「あ」
私が注意する前に、カプリちゃんは転移してしまった。
それから暫くして、巨大な爆発のキノコ雲が見え、衝撃波がこちらにも伝わってきた。
……これは町で騒ぎになりそうだなぁ……。
こうなると思ったから、「穏便にやって欲しい」って言うつもりだったのに……。
私達は何も見なかったことにして蜂達の所へ行き、今後何か異常があったら報せてくれるようにお願いした。
爆発について暫く町が騒然とするだろうけれど、取りあえずはこれで問題は解決したのだ。
……そう思っていたんだけどなぁ……。
ブックマーク・☆での評価・誤字報告・いいね・感想などは、大変ありがたいです!




