18 戻る日常
それから私達は、久しぶりに家へと帰る。
「オー、ヒューマンのハウス、小さいねー」
カプリちゃんがそんなことを言っているけど、これでも大きい方なんだよ……。
でも今回の遠征では実入りが良かったから、増築や新築を考慮してもいいのかもしれないね。
そろそろお風呂も欲しいし……。
「ご主人様~!」
あ、ラヴェンダが出てきて、私にまとわりついてきた。
私の匂いを嗅ぎ取って、帰宅を察知したようだ。
う~ん、相変わらずの忠犬ぶり……。
「お帰りなさい、ご主人様!」
「ただいま。
問題は無かった?」
「はい、しっかり留守を守っていました」
満面の笑みのラヴェンダ。
くっ、可愛いなぁ……。
頭を撫で回しておこう。
「私もお願いしまーす」
「グゥ(わたしもー)」
うわ、クルルとカプリちゃんも、頭を押しつけてきた。
仕方が無いなぁ……。
カトラさんとエルシィさんも羨ましそうに見ているけど、切りがないのでまた今度にしてください。
そもそも遠征中の野営でも、隠れていちゃいちゃしましたよね?
それから家に入ると──、
「「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」」
ティティや従業員達が出迎えてくれた。
あれ? ティティはともかく、私に対する他の従業員の態度が、随分と恭しくなったような……?
従属度を確認してみると……。
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従属度 ラヴェンダ 100%
ティティ 100%
コリス 87%
エトナ 76%
イネス 74%
シーマ 71%
ト チ 68%
───────────────
何故か全員の数値が、出発前よりも上がっている……。
私がいないことで、寂しさから想いが募った?
それとも──、
「ラヴェンダ、留守中に従業員達へなんかやった?」
「え? 特には……。
いつも通り、ご主人様の素晴らしさを説いて聞かせて……。
あとは、いかにしてご奉仕するのかを、教えただけですよ?」
と、どや顔のラヴェンダ。
その所為か!
う~ん、悪いことじゃないんだけど、みんなが100%になったら、全員に夜のお相手をしなきゃならなくなる……?
未亡人もいることを考えると、なんだかインモラルだなぁ……。
いや、既に複数人と関係があるから、今更だけど……。
でも取りあえず先に考えることは、ティティへのご褒美かな。
夜は私と一緒に寝ないと悪夢を見て怖がるのに、頑張って私を遠征に送り出してくれた。
その献身には報いなきゃね。
とはいえ、それは夜に二人きりになってからだ。
「今日は大仕事の成功を祝って、ささやかな食事会でも開きましょうか」
「いいね」
「グゥー(わーい)」
そんな訳で、遠征で手に入れた素材を売るついでに、キャロルさんを誘って食事会を開くことにした。
「オー、ヒューマンの餌、美味しいでーす」
カプリちゃん、「餌」って……。
そう言われると、ちょっと不味くなるな……。
「あらあら、新しい子は今まで見てきた中で、1番の美人さんねぇ。
化粧や服のモデルさんをしてくれたら、凄く人気が出そう」
「ほう、面白い案ですね、キャロルさん。
カプリちゃん、働いてみる気はない?」
「えー?
働くとか、意味が分からないでーす」
と、カプリちゃんはすげない。
まあ、大自然の中で自由気ままに生きている竜の感覚としては、そうなるかー……。
「あと、ヒューマンの町は狭いし、空気が悪いので、長居はしたくありませーん」
「カプリちゃん、事実でもハッキリ言うと気分を害する人もいるから、気をつけようね?」
実際、「じゃあ帰れよ」と言われても、仕方が無い言動だ。
まあ、竜にこの手の気配りを期待すること自体が、無理な話なのかもしれないが……。
「ソーリー?」
カプリちゃんも分かっているのかいないのか、首を傾げながら謝る。
ただ、彼女の言葉に嘘は無いようで、食事会が終わったらすぐにクラグド山脈へと帰ってしまった。
でも、転移魔法が使える彼女のことだ。
私に会いたくなれば、明日にでも顔を出すことだろう。
それから後片付けを終えた私は、ティティと一緒に寝室に入る。
彼女は久しぶりに私と寝ることができるということで、嬉しそうだ。
だけど心なしか、何かを求めるような視線を、私に向けている。
ああ、ご褒美を期待しているのか。
とはいえ、いきなり約束していたキスの続きをするのもなぁ……。
取りあえず私は、ベッドに座り、隣に座ったティティに語りかける。
「ティティは私の留守中に、誰と一緒に寝ていたの?
ラヴェンダ?」
「~~~!」
ティティは顔を赤くして、うつむきながら頷いた。
え、なにその反応?
私が訝しんでると、彼女は私の肩に頭を預けてきた。
くっ……可愛すぎ。
私の理性を殺す気か!?
「留守中、頑張ったね。
はい、ご褒美だよ」
ティティの顔を私の方に向かせると、彼女は目を瞑って、私の動きを待つ。
長いまつげがフルフルと震えていて、緊張しているのが分かる。
あまり待たせるのも悪いな……。
「ん……」
私はティティにキスをした。
で、私はこれで終わるつもりだったのだが──、
え、舌が入ってきた!?
なんでティティがこんなことを!?
しかも上手い!?
前はそんな知識はともかく、テクニックなんてを持っていなかったよね!?
そんな風に混乱している私を、ティティは更に翻弄する。
このやり方……ラヴェンダのに似てる……!!
『あとは、いかにしてご奉仕するのかを、教えただけですよ?』
ラヴェンダのあの言葉は、そういう意味だったの!?
あいつ、ティティに何をした~っ!?
その後私は訳が分からなくなり、更に旅の疲れもあってか、いつの間にか意識が飛んでいた。
朝になったら全裸になっていて驚いたよ……。
そんな私の横で、やっぱり全裸になっていたティティの、恥ずかしそうにしながらも満足そうな顔が忘れられない。
「お、おはよう……」
しかしまいった……。
ラヴェンダは昨夜のティティと同じ技術を、他の従業員にも……?
おいぃ……全員の相手にしていたら、身体が持たないんだけどぉ!?
一晩1人の交代制にしても、一巡するまで1週間じゃ足りないぞ!?
うん、なるべく他の従業員とは、これ以上隷属度を上げないようにしないと……。
それとラヴェンダには、もう余計なことをするなと、言い聞かせておかないと駄目だよね……。
いや、罰も必要か。
だからその夜、ティティと2人がかりでラヴェンダにお仕置きしたけど、ドMだからむしろ喜んでいた。
ストックがほぼ尽きたので、今後毎日更新することは難しくなりそうです。




