11 竜はいずこ
私達はクラグド山脈の奥へと入っていく。
ただ、山脈とは言っても、登山をする訳ではない。
麓を中心に、目的の竜を探し回っている。
まあ、山の上の方は木や草も生えていないし、そういうところには大型の草食獣はあまりいないはずだ。
必然的に、草食獣を食べる肉食獣も、少ないと思う。
いや、だからこそ外敵が少ないというメリットもあるんだろうけれど、おそらくはこの周辺で食物連鎖の頂点に立つ竜には、関係の無い話だろう。
竜だって、獲物が沢山いる麓の方が住みやすいはずだ。
でも、イメージ的に竜って、荒野とか山の頂上とか、あとは……洞窟の奥にいるイメージだよね。
「そういうのは上位竜ですね。
彼らは翼や魔法で自由に移動できるので、多少辺鄙な所に棲み着いても、不都合は無いそうです」
と、カトラさんが教えてくれた。
へー。
魔法で移動できるんだ。
私もそれを習得したいなぁ。
それはさておき、竜はなかなか見つからなかった。
私達が標的にしている下位の竜は、翼を持たない種類なので、森の中に潜んでいるらしいんだけど……。
どうやらレアモンスターらしく、出現率はかなり低いようだ。
その代わり、トロールや大きな虎みたいな魔獣など、ヤバそうな奴らとは何回も戦った。
もうこいつらの素材だけでも、斡旋所に納品すればちょっとした財産になりそうだ。
ただ、私の空間収納は令嬢達には秘密にしているので、さすがに全部は持って帰れないのが残念だ。
普通の荷物として持ち帰る分も、最終的には竜の素材もある為、ある程度荷物に余裕を持たせなければならないし。
まあ、持ち帰れない物は捨てるフリをして、可能なら空間収納に入れておくけどね。
でも、令嬢達が近くにいる場合は、泣く泣く断念しなければならなかった。
なお令嬢達にも素材は分配しているけど、それらは小さくて運びやすく、かつ高価な物を献上している形になる。
つまり私達は残り物をもらっていることになるのだが、身分の差もあるので仕方が無い。
ちなみに令嬢達が獲得している素材は、魔物の体内に希に発生するという魔石がメインだ。
魔力が凝り固まったものらしいけど、つまり尿路結石みたいな物かな?
その他にも角や牙など、これらは魔法の触媒や魔道具の材料になるらしい。
ともかく、竜はなかなか見つからない。
もうかれこれ、2日は探し回っている。
「あ~もうっ!
どこにおるのじゃ!」
いかんな……。
ラムラス様も焦れ始めている。
このままでは彼女に、無茶振りをされることも有り得る。
これは何か、ご機嫌取りをした方がいいのだろうか……?
「なあ、マルルよ。
あの飴はもう無いのか?
お嬢様の気が紛れるかもしれぬ」
カップァ様、ナイスアイデア!
でもそれ、自分が食べたいだけなのでは?
彼女は何処となくそわそわとしていた。
ふふ……餌付けは順調のようだ。
「ありますよ。
これは試作品なのであまり数はありませんが、近い内にキャロル商会というところで販売されるようになります」
と、耳寄りの情報を添えて、カップァ様に飴を6つほど渡した。
「おお、かたじけない!」
そのような交流を何度か経て、カップァ様との親密度は、あっという間に80%超えとなった。
これでステータスを見ることができる。
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・ラムラス 20歳 女 LV・30
・職業 貴族令嬢
・生命力 278/278
・魔 力 186/186
・ 力 203
・耐 久 183
・知 力 99
・体 力 201
・速 度 147
・器 用 98
・ 運 104
・ギフト 騎士道
・スキル
乗 馬
宮廷作法
身体強化
威 圧
鼓 舞
気配感知
大 防 御
心 眼
突 刃
一刀両断
円 月 刃
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うわぁお、私が初めて見るレベル30台だ。
人間としては、今のところ最強だな。
まあ、所持スキルにはどうしても欲しいというものは無いけれど、「大防御」と「心眼」は自分の身を守る為にあってもいいかな?
まあ、この旅の間に親密度が100%にならなければ、コピーはできないけどね……。
それにしてもカップァ様は、あんなにグロ耐性が無いのに、どうやって吸収値を稼いだのだろう?
さすがに流血ぐらいは大丈夫そうだったけど、私が獲物を解体していた時には、内臓を見て吐きそうになっていたし……。
まさか「心眼」のスキルで、目を瞑ったまま戦っていた……?
見た目に反してポンコツなところがあるので、そういう馬鹿なことをしかねないんだよなぁ……。
そしてやっぱり本名は、ラムラスで確定だな。
もう1人の方とは全然親しくなっていないし、あっちの方のステータスが表示されているということは有り得ないだろう。
……なんで自分の名前を、もう1人の方に名乗らせているのかは分からないけれど、貴族の事情には深入りしない方がいいのだろうなぁ……。
ともかくややこしいので、今後もカップァ様と呼び続けるけどね。
さて、竜はなかなか見つからないのだけど、やっている捜索方法と言えば、「気配感知」で大きな気配がする方へ行くというものだ。
これだと強い魔物に総当たりとなる為、非常に効率が悪い。
……う~ん、竜って当然巨体だよね?
動き回るだけでも、痕跡は残すはず。
となると、視覚で追った方が効率は良いかな……。
よし、飛ぶか!




