表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/206

4 『百合』というギフト

 ブックマーク・☆での評価・誤字報告・いいねをいただき、ありがとうございました!

 家に帰ると、狩りに出ていた姉が既に帰ってきていた。

 今日は兎を捕まえてきたそうだ。


「どうだった?」


 そんな姉の問いに、私は口ごもる。

 役に立たないギフトだったとは、ちょっと言いにくい。

 ただ、黙っていたら、姉が怒り出すかもしれない。

 だからモゴモゴと、私は小さな声で答えた。


「あの……『百合』っていう、よく分からないギフトだった……」


「ふ~ん……」


 姉が私の前に立つ。

 これは「役立たず」とか言われて、怒られるのかな……?

 そして姉は、私の頭の方に手を出してきた。

 叩かれると思い、私はつい首を(すく)めてしまう。


「まあ……気を落とさず、頑張れ」


「え……?」


 予想に反して姉は、私の頭を優しく撫でる。

 んんっ!?

 今までこんなことされた経験は、一度も無いんだけど!?


 誰……?

 こんな優しいの、私の姉じゃないでしょ!?

 それともこんな時に気を使えるような、デリカシーがあったとでも言うの!?


 いや……もしかしたらそうなのかもしれない。

 さすがにハズレを引いて落ち込んでいる妹に、追い打ちをかけるほど、姉も鬼畜ではないはずだ。

 そうだ、そうに違いない!


 だけど翌日以降も姉と母は、私に対してなんだか優しかった。

 うるさく小言を言わなくなったし、私だけ食事の量を増やしてくれるなんてことも増えた。

 そしてそんな特別扱いに不満を(つの)らせて不機嫌になった父から、私を庇ってくれるようにもなったのだ。


「なんだよ、そいつばかり……。

 大した役に立っていないんだから、そんなに食べさせなくてもいいだろ」


「マルルは成長期なんだから、たくさん食べさて大きくなってくれた方が、色んな仕事ができるようになっていいでしょ?」


「そうだよ父さん、非力な子供のままじゃ、畑仕事も(はかど)らないよ」


「む……」


 こんな風に、村で1番強い姉が味方になると、もう怖い物なんてない。


 おお……これってもしかしなくても『百合』の効果!?

 百合って前世では、女性同士がイチャイチャとかすることだったよね?

 つまりこのギフトの効果って、女性に対して私への好感度が爆上げさせるって感じなのかな?


 やった! このギフトがあれば、この世界でも安泰に暮らしていけるんじゃない!?

 上手く上流階級の女の人を味方に付ければ、この貧乏生活からだって抜け出すことも不可能じゃないよ!

 よっしゃー! ようやく異世界チート生活が始まるよーっ!!


 ……と思ったんだけど、まだまだギフトの効果には謎の部分もあるし、下手に動くのは危険だな……。

 取りあえずギフトの検証は、これからも続けないと……。


 実際のところ、『百合』のおかげで、私の生活は改善してきているし、焦る必要は無い。

 嫌で嫌で仕方がなかった異世界生活も、少し楽しくなってきたのだから、今はこれを満喫するのも悪くないんじゃないかな。


 特に大きく変わったのは、姉……アルルお姉ちゃんとの関係だろう。


「おはよう、お姉ちゃん!」


 私は起床後、先に起きていたお姉ちゃんの顔を見るなり抱きついた。


「あはは、何よマルル。

 相変わらず甘えん坊なんだから」


「だって、アルルお姉ちゃんのこと、大好きだもん」


 強くて優しくて、こんなに頼りになる人はいない。

 こんなの私じゃなくても、(なつ)いちゃうよ。

 でも、以前はあんなに苦手だったお姉ちゃんに対する認識がこんなに変わってしまうなんて、もしかしたら『百合』が私の精神にも影響を与えているのではないか──そんな不安感もある。


 自分の意思とは関係なく、心が変化していくってのは、ちょっと恐ろしいよね……。


 だけど──、


「ほら、マルル。

 髪をやってあげるから、そこに座って」


「う、うん」


 お姉ちゃんが(くし)で、私の寝癖を整えてくれた。

 以前だったら、こんなことは絶対にしてくれなかったから、凄く嬉しい。

 こんな理想的な姉の魅力には、逆らいがたいよ……。

 

 それとステータスに変化があった。

 ギフトを授かってから、1週間ほど経過した頃だろうか。

 ギフト『百合』のところに、今までは無かった項目が出現したのだ。


───────────────

 ・マルル 12歳 女 LV・2

 ・職業 農民

 

 ・生命力 24/24

 ・魔 力 38/38

 

 ・ 力  17

 ・耐 久 20

 ・知 力 55

 ・体 力 31

 ・速 度 22

 ・器 用 14

 ・ 運  43


 ・ギフト 百合

  親密度 アルル 59%

───────────────


 ん?

 お姉ちゃんとの親密度が59%って、なんだこれ?

 今までこんな表示が無かったってことは……50%を超えたら表示されるのかな?

 

 お母さんともそこそこ親しくなったけど、表示されていないってことはまだ50%には達していないということなのだろう。

 お母さんの近くには父がいることも多いから、なんだか近寄りがたいものがあるんだよね。


 いずれにしても、知り合いの女性全員の親密度が表示されたらさすがに邪魔だから、特に親しい人物だけが表示される仕様は便利だと思う。


 ……でもこれ、100%になったらどうなるのだろう?

 能力の検証の為にも、試した方がいいのかなぁ?

 予定が変わって今日は更新できたけど、明日に予定がずれ込んで出掛けることになった為、明日の更新はお休みします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 一方的な精神汚染や洗脳だったらちょっと複雑な気分だったけど本人も一緒に汚染/洗脳されるんだったら最高だね!
[一言] ひえー、精神汚染だ。 百合のためなら仕方ない!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ