5 新人研修
私達は生き残りの村人6人を連れて、拠点の町へと向かっていた。
ただし途中で山に入り、動物を狩って6人のレベルアップを図る。
あんな惨劇の後で、また血生臭いことをさせてしまうのは申し訳ないけど、必要なことだと説明したら、みんなは納得してくれたようだ。
いや、ティティからはほとんど反応が無いので、本当に分かっているのかはよく分からないけれど……。
まあ、戦闘経験がほぼ無い彼女達では、小さなウサギを倒すことすら難しいのだろうけれど、そこは私達が弱らせてから彼女達にトドメを刺すようにしたことで、なんとかレベル上げはできるようだ。
ただ、ステータス的に最弱な上に、精神的な傷も1番大きなティティでは、まともな戦闘行為はまだ無理みたいで、レベルをあげることはできないかもしれない。
「じゃあ、そこで獲物の逃げ道を塞いでいるだけでもいいからね」
「……」
ティティは無言だけど、私の指示を受けて素直に頷いた。
昔の生意気な彼女からは、考えられないほど殊勝な態度だ。
オークに人格まで、破壊されちゃったんだなぁ……。
「あれ?」
戦いが終わると、不思議なことが起こっていた。
ティティは獲物に、トドメを刺していない。
それでも、何故かレベルは上がっているのだ。
え~と、これは戦闘に参加すれば、一応「吸収値」が分配されるということなのかな?
ただ、これが参加人数分の頭割りになるのか──そして誰と組んでもそうなるのかはよく分からない。
もしかしたらティティが私の従属に入っているから、私からのみ分配されているという可能性もある。
ふむぅ……今までは私と親密度が高い者から、「吸収値」が分配されることはあったようだけど、その逆のパターンも有り得るのかな?
でもその条件が、従属している者に対してなのか、それともステータスに名前が載っていて、かつレベルが低い者に対してなのか、あるいは私の気分次第なのか──それはよく分からない。
いずれにしてもこの作業を経て、従業員(予定)の6人は、レベルと従属度を順調に上げていった。
取りあえず5レベルくらいあれば、その辺の強盗には負けないと思うので、これで十分ということにしようか。
まあ、これでは熟練の冒険者とかに襲われたらひとたまりもないかもしれないけれど、さすがに冒険者に勝てるほど育成するには時間がかかり過ぎるし、そもそもそこまで強くなれるのなら、冒険者になった方がいい。
ただ、6人の中に戦闘向けのギフトを持っている者はいないので、冒険者になるという選択肢は無いと思うけれどね……。
彼女達には、ラヴェンダを護衛に付けておこうかな。
さて、町へ帰るとしようか。
町には新しい家がある。
で、6人のレベルアップ作業もあったので、私達は1週間近くかけて拠点の町へと帰還した。
そして私達が向かうのは、キラービーの巣箱を売って得たお金で、借りた屋敷だ。
従業員達も生活できるように、部屋数の多い2階建ての家で、ちょっと古いけれど豪邸と言ってもいいだろう。
ただしお風呂は付いておらず、シャワー室止まりだ。
くっ……こんな豪邸っぽく見える屋敷でも、浴室は無いのか、この世界は……!
お風呂が欲しかったら、新築で作るしかないんだなぁ……。
あと、クルルが出入りしやすいように、町の郊外という立地だ。
ここならば、町を囲む塀を乗り越えれば、すぐに屋敷の敷地内に入ることができるので、夜間ならば「透明化」のスキルを使う必要すら無いかもしれない。
「あら、おかえりなさ~い」
屋敷の前には、キャロルさんがいた。
私達が留守の間に、彼女に家財道具一式を取り寄せてもらい、屋敷へと運び込むようにと、お願いしていたのだ。
「こんにちは。
運び込みは終わりましたか?」
「ええ、作業は終わって、今は最終確認をしていたところよ。
その子達が従業員候補?」
「はい、みんな、挨拶して」
「「「「「よ、よろしくおねがいします」」」」」
……うん、みんなキャロルさんの姿に若干引いているけど、これは慣れてもらうしかないね。
いい機会だから6人には、キャロルさんによる屋敷の内部説明会に参加してもらうことにする。
なんか全員不安そうな顔をしているけど、基本的にはいい人なので害は無い。
そして私は、自室へ行って、荷物の整理をすることにした。
そう、私もついに専用の部屋とベッドを手に入れた訳だ。
これで落ち着いて眠れるようになるね。
……まあ、実際には、そうならないのだけどさ……。
ティティが夜になると独りになるのを怖がって、私から離れたがらないのだ。
たぶん夜に活動するオークが、恐怖の記憶として染みついているのだろう。
だからこの町に来るまでの道中でも、野営で私とティティは一緒に寝ていた。
今晩もそうなるのだろうな……。
でもなぁ……。
ティティの従属度が100%になっているから、いつそういうことが起こってもおかしくないんだよなぁ……。
いや、ティティの年齢だと性知識が乏しいので、彼女の方から求めてくることは無いのかもしれないけれど、私の方が我慢できなくなる可能性もある。
昔は生意気だったので気にしたことはなかったんだけど、今のティティは無口で儚げで、薄幸の美少女って感じなんだよね……。
フワフワの金髪と緑色の瞳は綺麗で、そんな彼女と一緒に寝ていると、変な気を起こしそうになる。
まあ、私が求めれば従属度が100%のティティは拒まないと思うけど、そんなあちこちに手を出していいものなのだろうか……。
そもそも性的な被害で心に傷を負っている彼女に手を出したら、私もオークと同じなのでは?……と、まだ理性は働いているのだ。
できればティティの心の傷を癒やしてから……とは思っているけど、いつかは我慢できなくなりそう……。
だけど私よりも先に、我慢ができなくなってしまった子がいる。
「狡いです、あの子ばっかり。
私だって、ご主人様と一緒に寝たいのに!」
「ラヴェンダ……。
ティティが独りで眠れるようになるまでは、無理だから……」
「じゃあ、3人で寝ましょうよ!」
「狭いから駄目」
と、理由をづけしているけれど、実際にはラヴェンダが何をしてくるのかが分からないからだ。
まだ何も知らないティティに、ラヴェンダとの行為を見せつけるようなプレイはちょっと……。
「それならば、せめて舐めさせてください!」
「え?」
「なんでもやりますので、ご褒美にご主人様を舐めさせてください!」
舐めるってなに!?
犬型獣人だから、習性として私の手や顔を舐めたいってことなの?
その程度なら吝かではないんだけど、テンションが上がりまくって尻尾をブンブンと振っているラヴェンダの姿を見ると、それだけで済むとは思えない。
……でも、これからラヴェンダには、この家の警備や従業員の護衛として沢山働いてもらうつもりだから、その働きに報いたいという気持ちもあるんだよね……。
「……舐めるだけだよ?」
「はい!」
更に激しく振られる尻尾。
う~ん、この駄犬感。
その後ラヴェンダには、シャワー室で2人きりになった際に舐めさせた。
何処を舐められたかについては、聞かないでほしい。
「美味しかったです、ご主人様!」
そういうことは、言わなくていいから!




