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4 従業員募集

 私はキャロルさんの店や、共同で始める事業で働いてもらう為に、隣村に預けていた村の生き残りを引き取りにいくことにした。

 勿論、クルル・エルシィさん・カトラさん・ラヴェンダと、全員でだ。


 一応秘密を抱えた事業に(たずさ)わることになるので、万が一の時は自分の身はある程度自分で守れるようにならないと困るんだよね……。

 そんな訳で引き取った者達は、一時的に冒険者として活動してもらい、レベルアップさせようと思っている。

 その為に、仲間達全員で指導をしようという訳だ。


 ただ、オークに襲われた彼女達の心が、冒険者や仕事ができるような状態になっているのかは分からない。

 場合によっては、彼女達を見捨てるしか無いという選択肢も出てくると思う。

 一時的ならば私でも養っていけるかもしれないけれど、永久には無理だし、いつかは自分の足で立って歩いてくれないと……。


 しかし彼女達の状態は、決して良いものばかりではなかった。

 むしろ最悪な者もいた(・・)

 私が彼女達を預かってもらっていた隣村の、村長のところへ行くと──、


「自殺した──!?」


 8人いた生き残りは、6人になっていた。


「オークの子を妊娠しておってな。

 それで取り乱して……目を離した隙に……」


 隣村の村長は気まずそうに言った。

 だけどそういう事情があるのならば、仕方がないのかもしれない。

 正直言ってこの世界の医療技術では、オークの子を堕胎するのは命懸けになるのだろうし、仮に堕胎が成功しても、心身共に一生ものの大きな傷が残るはずだ。

 

 かといって、命惜しさに魔物であるオークの子を出産するという選択肢は、この世界の人間の価値観からは考えられないことらしい。

 たとえ本人が良くても、魔物を忌避する周囲の人間がそれを許さず、苛烈な迫害を受けることになるのだとか……。

 最悪の場合は、母子共々殺されることも有り得るという。

 

 だから死んだ方が楽だという彼女達の選択を、安易に否定する気にはなれなかった。

 ……まあ、本当に自殺だったのかという疑問も残るが、そこに深入りしても嫌な想いをするだけのような気がするし、彼女達をこの村に預けるだけで何もできなかった私には、何かを言う資格は無いのかもしれない。


 ここはむしろ、他の6人が妊娠していなかったことを、喜ぶべきなんだろうか?

 オークの子は受精から3ヶ月程度で産まれるということで、今妊娠の兆候が無いのならば、もう大丈夫らしい。

 

 私達は6人が住んでいるという、小屋へと案内された。

 それは小さな家で一部屋しかなく、そこに6人が押し込められているという印象だった。

 これでは床に全員が寝るだけでも、ギリギリだろう。

 

 まるで家畜小屋のようで、酷い扱いだけど、私が村長に渡した銀貨15枚では家賃や食事代、自殺した人の葬儀と埋葬、その他諸々の出費に足りていたのかは微妙だし、贅沢は言えないのだろうなぁ……。

 発展途上の文化圏の人権意識なんて、こんなものなのだろう。

 むしろこの世界としては、よくやってくれている方なのかもしれない。


 ……それでもこういう状況を、私が変えていければいいんだろうけどね……。

 ただ、今は力が足りないし、やれることをしよう。


「みんな、迎えに来たよ」


「…………」


 私の呼びかけに、返事は無い。

 みんな死んだ目をして、床に座り込んでいた。

 ただ──、


「仕事を用意したから、みんなにはそこで働いてもらおうと思っている。

 強制はできないけれど、できればこれからの生活も考えて協力してほしい」


「…………」

 

 うん、『百合』の効果なのか、一応私の話は聞いてくれているな。

 ただ、何の反応も示していない子もいる。

 まだ幼いのに凄惨な体験をした所為で、心を完全に閉ざしているのだろうか?

 

 彼女は村長の孫娘のティティだ。 

 私とは同い年だけど、祖父が村長だということで偉ぶっていたから、特に親しいということはなかった。

 見た目は可愛いんだけど、居丈高(いたけだか)で関わりたくないタイプだったのだ。


 そんなティティは、見る影もなく生気を失っている。

 正直言って前は苦手な子だったけれど、小さな子供がこんな目に()っているのは、やっぱり可哀想だ。


「もう大丈夫だからね。

 これからは私が守ってあげる。

 だから私の言うことを聞いてね?」

 

 と、ティティを軽く抱きしめ、頭を撫でてあげた。

 すると彼女は、無言で涙を流し始める。


 お?

 えっ!?

 いきなりティティの従属度が、86%になっているんですけどっ!?


 ちょっろぉ……。

 いや……オークに純血も家族も奪われて、心に大きな穴が空いたところへ、私がスッポリと入り込んだ形になったのかな……。


 なお、ティティのステータスはこんな感じ。


───────────────

 ・ティティ 12歳 女 LV・2

 ・職業 村人

 

 ・生命力 13/19

 ・魔 力 14/17

 

 ・ 力  9

 ・耐 久 22

 ・知 力 11

 ・体 力 19

 ・速 度 18

 ・器 用 27

 ・ 運  14



 ・ギフト 忠実なる家政婦

 ・スキル

      料  理

      洗  濯

      掃  除

───────────────


 おお……今の私から見ると、超弱い。

 というか、一部は私の初期値よりも下だよね、これ……。

 これは冒険者として鍛えるのは、ちょっと難しそうだなぁ……。


 どちらかというと家事に適性があるから、我が家のメイドにした方がいいのかもしれない。

 ギフトも「忠実なる家政婦」だしね。


 というかこれの所為で、従属度が爆上げしたのでは……?

 この辺のカテゴライズは、職業や種族にギフト、そして私の意識にも左右されていそうだな……。

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