表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/206

14 ワンワン

 私が家に帰ると、玄関先ではラヴェンダが待っていた。

 忠犬ハチ公かな?


「お、おかえりなさいませ、マルル様」


 ラヴェンダは愛想笑いのように、少し引き攣った笑顔を浮かべる。

 私に気に入ってもらえるようにと、必死になっている印象だ。

 でも、そんなに尻尾を振ったって、餌はやらな──、


「え?」


 ラヴェンダのお尻の辺りで、何かが動いた。

 え、本当に尻尾を振っている!?


「なにこれ!?」


「ひゃんっ!?」


 私は思わずそれを掴んでしまった。

 そこには短めだけど、確かに尻尾がある。

 ラヴェンダの腰には布が巻いてあり、それはファッション的なものだと思っていたけど……。

 この布で、尻尾を隠していたのか……。


 それにしてもこの尻尾、黒い毛並みで犬のような形だな……。

 え……もしかして、ラヴェンダが頭に巻いている布の下にも……!?


「そこに、耳があるの!?」


「うっ……はい」


 ラヴェンダは気まずそうに(うなづ)いた。

 ()せぬ。

 素晴らしいことじゃないか。


「見せて、見せて!」


「………………はい」


 ラヴェンダはかなり迷った末に、頭の布を外した。

 そこからは、立派な犬耳が現れる。


 そうか、ラヴェンダは獣人だったのか!

 ファンタジー小説ではお馴染みだけど、生で初めて見た!

 なるほど、あの高い身体能力も納得だよ。


「これ触ってもいい!?」


「そんな……こんな(けが)らわしいものになんて……」


「え、そんなことないけど?」


「そんな……嘘です」


 どうやらラヴェンダは、獣人であることに強い劣等感を持っているようだ。

 あ~……これはもしかして、獣人が差別を受けているとかいう、異世界あるあるなのかな?

 耳や尻尾を隠していたことを考えると、たぶん間違い無いのだろう。


 でも、そんなことは私には関係ない。


「凄く可愛いから、触らせてね?」


「ふやっ!?」


 私は有無を言わさず、ラヴェンダの耳を触る。

 うん、毛の手触りもいいし、フニフニした感触も最高だ。

 これを毛嫌いするとか、この世界の人間は馬鹿なんじゃないかな?


「だ……駄目ですぅ……!」


 ラヴェンダがプルプルと震えながら、ギブアップともとれるような、切羽詰まった声を上げた。


「ああ、ごめんね。

 強引にやり過ぎたかな?」


「それはまあ……はい」


 ラヴェンダは荒くなった呼吸を、必死で整えようとしていた。

 顔も真っ赤だし、もしかして私は、獣人にとって胸を揉みしだくのと同じくらい、破廉恥なことをやらかしてしまったのだろうか?

 だが、悔いは無いし、反省もしない。


 そしてラヴェンダは、とんでもないことを口にする。


「でも……ご主人様になら、またしてもらっても……」


「へっ、ご主人様!?

 私が!?」


「はい!」


 いい笑顔で肯定されても、理解が追いつかないよ!?

 ……いや、でも犬型の獣人なら、群れのボスに対して従うような習性があってもおかしくないのか。

 どっちが上なのかは、もう完全に分からせているからなぁ……。

 だとしても、ちょろくない!?


 あ、ラヴェンダの従属度がまた上がって、82%になっている。

 これならステータスも見られるようになるけど、マジでちょろい……

 

 ───────────────

 ・ラヴェンダ 15歳 女 LV・11

 ・職業 冒険者

 

 ・生命力 103/103

 ・魔 力 74/74

 

 ・ 力  88

 ・耐 久 96

 ・知 力 68

 ・体 力 123

 ・速 度 138

 ・器 用 87

 ・ 運  84


 ・ギフト 暗殺術

 ・スキル

      気配隠蔽

      気配感知

      暗  視

      スリの手

      臭覚強化

      即死突き

      身体強化

      投  擲

      操  糸

───────────────

 

 ふぁっ、『暗殺術』!?

 剣呑(けんのん)なギフトを持っているなぁ……。

 関連スキルは私向けじゃなさそうだし、コピーしても使う機会もあまり無さそう……。


 う~ん、ラヴェンダには彼女にしかできないことで、働いてもらうことにするかな。

 まあ……スキルだけ見ると、犯罪的な面でしか活躍の場が無いような気もするけれど、私の護衛や諜報(ちょうほう)活動という方向でならなんとか……。


「これから、沢山役に立ってもらうからね、ラヴェンダ!」


 と、私はラヴェンダの頭を撫でる。


「はっ、お任せを!」


 ……めっちゃ、尻尾を振っている……。

 可愛いから、もっと頭を撫でて上げよう。


「あっ……!

 くうぅ……ん」


 ラヴェンダの鼻から、甘えた声が微かに漏れる。

 むう……凄くもふりたくなってくるじゃないか。

 恐るべし、獣人……!


「ん?」


 その時、「トン」と、背中に軽い衝撃を感じて振り向くと、


「わ、クルル?」


 クルルが鼻先を私に押しつけていた。

 そういえば「透明化」のスキルを獲得したから、こっそりと町の中までついてきていたんだっけ。


 クルルはグイグイと鼻先を押しつけてくる。

 ああ、ラヴェンダばかりを構うんじゃなく、自分も構えってことか。


「わかった、わかった。

 クルルも可愛いよー」


 私はクルルをわしゃわしゃと撫で回したけど、今度はラヴェンダが羨ましそうな視線を向けてくる。

 君、熊とペット枠を争う気かい?

 ブックマーク・☆での評価・誤字報告・いいね・感想などの反応があると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ