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3 授かったギフト

 私が12歳になる日──。

 この日私は、村の教会で神様からギフトを授かる為の儀式を受けることになっていた。


 ちなみに教会とは言っても、前世でよく見たことがあるような立派な物ではなく、普通の家の玄関に、木の板へ神様の紋章を彫り込んだ物を(つる)しているだけ……という簡素な物だ。


 なお、どんな教義なのかはよく知らないし、興味も無い。

 ただ神様は神様でしかなく、特定の名前は持っていないらしい。

 それに(なら)ってなのか、教会にも「~~教」みたいな名前は無いらしい。


 それってつまり、この世界には神様も宗教も1つしか存在しないってことなのかな?

 他と差別化する為の名前が無いというのは、そういうことだよね。

 歴史的なことは分からないけれど、他の宗教を淘汰(とうた)した結果そうなったのか、最初からそうだったのか……。


 でもギフトなんて奇跡的な物を与えてくれる神様が実在していることは確かなので、この世界がたった1柱の神様によって(つく)り出されたということも、本当に有り得るのかもしれない。

 はは……、こんな世界で「進化論」とか唱えたら、異端視されて縛り首になりそうだね……。


 さて、このギフトを授かる儀式だけど、実は私よりも意気込んでいる者達がいる。


「神様への日頃の感謝が届けば、いい『ギフト』が貰えるだろう。

 頑張ってお祈りするんだぞ!」


 個人の感想です。

 祈ればいいのが引けるとか、なんの根拠も無いはずだ。


「しっかりね!」


 そう、親からの期待の目がプレッシャーだよ……。

 まあ姉みたいにいい『ギフト』を当てれば、生活環境が大きく改善するのだから、私に期待するのも分かるけどさぁ……。

 

 実際我が家は貧しいのに、このギフトを授かる為の儀式を受ける為、少なくない金額を教会に寄進している。

 それだけ『ギフト』による恩恵が大きいということだ。

 だからこの儀式を受けないのは、寄進できないほど貧しいか、教会に出入りできない犯罪者か、そして奴隷か──くらいらしい。


 ちなみに父は『強力(ごうりき)』、母は『木工』のギフトを授かったそうだ。

 農民としてならば、色々と使い道はありそうだけど、もっと稼ぎのいい職業に転職する為には、ちょっと微妙な感じだね……。

 それだけに両親は、子供のギフトを凄くあてにしているようだ。


 う~ん、もしも使えないギフトを手に入れたら、親から凄くがっかりされる……だけならまだいいけど、扱いが酷くなる可能性もあるから怖いな。

 かと言って、良いギフトが手に入ったら、それはそれで依存されて面倒臭いことになるかもしれない。

 12歳で一家の大黒柱になるとか、勘弁してもらいたいものだ。


 そんな訳で私の希望としては、良すぎることもなく、悪すぎることもなく、丁度良い感じのギフトが手に入ればいいと考えていた。


 教会に訪れた私は、司祭様に(うなが)されて祭壇の前に(ひざまず)き、祈りを捧げる。

 そうしていると、授かったギフトの名前が頭に浮かんでくるらしい。

 司祭様がお経のようなものを唱えはじめたので、それを聞きながら祈る……って、何を祈ればいいのだろうか?


 元日本人としては、信仰心はあまり無いんだけどなぁ……。

 勿論、あえて罰当たりなことはしないけれど、それだって神仏を信じているというよりは、万が一にでも祟りとか死後に地獄行きとか、そんな不利益を(こうむ)るような結果になったら嫌だ──という、気分の問題だし。


 ここはむしろ余計なことを考えないように、心を無にした方がいいのだろうか?

 そうだ、座禅みたいな感じでやってみよう。


 そんな感じで心を無にしようと奮闘すること、数分間──。

 何かが頭の中に浮かんできた。

 文字……ではない。

 識字率の低いこの世界で、文字によるお告げなんてされたら、その殆どは謎のまま終わってしまうだろう。


 かといって、声とも何か違う。

 う~ん、言葉のイメージが具現化しているというか、ちょっと説明しにくい感じだけど、意味自体はハッキリと伝わってきた。


「ゆ……り……。

 『百合』……?」


「おお、ギフトを授かりましたか?」


 司祭様に質問された私は、逆に質問で返した。


「あの……『百合』ってなんなのでしょう……?」


「さて……私は聞いたことがありませんなぁ……」


 結構お爺ちゃんな司祭様が知らないって、つまり前代未聞ってことか!?

 少なくとも、数十年……あるいは百年に1度レベルの、レアなギフトってことだよね?

 SSR引いちゃった!?


 だけど、どう活用すればいいんだろ、これ?

 『百合』という名前以外は、何も分からないんですけどっ!?


 こんな使えるかどうかも分からないギフトを引いちゃって、両親はがっかりするだろうな……と思っていたら、案の定──、


「使い道が分からないギフトってなんだよぉ……!

 まったく、使えない娘だなぁ!」


 と、父は(なげ)いた。

 酷い言われようだが、この世界だと家計に寄与しない子供は奴隷として売り飛ばされることもあるらしいから、それよりはまだマシ……と思わないとやってられない。

 大金持ちの子供なら、ニートをやってられる余裕もあるんだろうけどなぁ……。


 ともかく、レアな当たりギフトを引き当てたはずなのに、外れを引いたような扱いを受けてちょっと落ち込んだけど、


「ギフトの力がよく分からなくても、それでマルルの価値が無くなった訳じゃないんだから、気にしなくてもいいのよ。

 あなたにはいつも農作業とかで助けられているしね」


 と、母が(なぐさ)めてくれた。

 それは嬉しい。

 嬉しいが……、


 ……うちの母って、私に対してこんなに優しかったっけ?

 父と同じように、お小言の1つでも言ってきてもおかしくないようなタイプだったと思うんだけど……。


 

 そんな違和感を抱えながら、私達は家に帰るのだった。

 明日更新できるのかは、まだ分からないです。

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