10 対人戦闘
「はあっ!」
私はあらかじめ準備していた「風刃」、そしてカトラさんは「火炎弾」の攻撃魔法を放った。
その攻撃は4人の敵へと直撃する。
「あっっ!!」
「ひいぃぃぃっ!!」
「あああぁっ!」
「かっ……!?」
今の攻撃で即死したのは、私の「風刃」で胴体が真っ二つになった1人だけだったけど、他の者達も重傷を負っているので、少なくともすぐに戦闘に復帰してくることはないだろう。
しかも私が狙って即死させたのは、魔法使いっぽい男だ。
これで相手の魔法によって、一気に逆転されるようなこともないはず……!
それでも人数の上では、まだこちらの方が不利……。
相手の方は、戦える者が未だに4人もいる。
多少は魔法攻撃の余波で怪我をしているけど、戦いに支障があるほどではないだろう。
エルシィさんは既に剣を抜いて、残った4人と戦っている。
彼女はかなり強いけど、さすがに多勢に無勢では厳しそうだ。
これは私も前衛に出て、エルシィさんと一緒に戦った方がいいかな?
後衛からの魔法攻撃だと、動き回っている相手にピンポイトで命中させるのは難しいし、かといって攻撃範囲を広げるとエルシィさんも巻き込んでしまう可能性がある。
よし、こういう時は「眷属強化」!
「な、なんだ、いきなり!?」
私が「眷属強化」を使った途端、ステータスが強化されたのか、エルシィさんの動きが急に良くなった。
相手はそれに面を食らっている。
これなら私も前衛に出れば、なんとか互角以上に戦える。
ただ、私の魔力が物凄い勢いで減っていくので、3分くらいしかもたないな、これ……。
「カトラさんは、魔法の準備を!
待ち伏せしていた連中がこちらに来たら、攻撃してください」
「分かりました!」
さて、私は速度を活かして相手の死角に回り込み、「流し斬り」で膕斬りの黄金パターンだね。
これで相手の動きを封じて、エルシィさんがトドメを刺すという連携が上手くハマった。
ほどなくして、最初の襲撃者である8人は全滅する。
……自分でやったこととはいえ、あまり見たく無い光景だな……。
今夜は眠れなくなりそう……。
だけどまだ待ち伏せしていた連中が残っているし、感傷に浸っている場合ではない。
ただ、私の魔力も残り少ないので、「眷属強化」は解除しないと駄目だな……。
──って、
「カトラさん、来るっ!!」
「はいっ!」
再び接近してくる者達の気配を感知した。
今度は6人!
その6人が射程に入った途端、カトラさんは「土槍」の魔法を放った。
直後、こちらに向かって走ってくる者達の手前──その地面から、無数の土が槍状に伸びる。
「うあっ!?」
「ぎゃっ!!」
「ぐふっ!!」
走ってきた者達は、急に止まることもできず、自ら槍に突き刺さることになった。
それが3人。
まあ即死か、致命傷だろう。
だけどその後ろにいた2人は直前で止まったり、横に飛び退いたりして難を逃れた。
そして更に残る1人は──、
「なっ!?
跳んだ!?」
大きく跳躍して、槍を跳び越えたのだ。
なんだ、あの跳躍力!?
高さが2m以上はあるぞ!?
そしてそのまま彼女は、カトラさんへと飛びかかる。
その手にはナイフがあった。
「駄目っ!!
やめてぇっ!!」
「っ!?」
ナイフを手にしていた女は、私の声を聞いて急に攻撃をやめた。
おっ、『百合』が効いた!?
だけど親密度は高くない相手だ。
効果は一瞬だけ、彼女を動揺させる程度でしかないと思う。
ならば私が攻撃して、無力化させる!
まだ動揺によって動きが止まっているから、狙いやすい……はず!
食らえ、「水弾」!!
「きゃんっ!!」
高速で撃ち出された水の塊の直撃を受けて、女は数mほど吹き飛んだ。
そのまま気絶したのか、女は動かなくなる。
水とはいえ、結構な威力があるなぁ。
「カトラさん、下がって!」
「はいっ!」
さあ、残りは2人だ!
しかしこの2人が──いや、その内の1人が問題だった。
「おらぁっ!!」
「わ!!」
その男は2m以上ある大男で、その手には私の身長以上の長さはあろうかという、バトルアックス?
それともハルバートとかいうの?
とにかく斧を持っていて、それでカトラさんが作った土の槍をなぎ払った。
砕け散った土の槍の破片が、物凄い勢いでこちらまで飛んできたので、私は慌てて避ける。
こいつ……強い!?
野盗のボスか!?
とにかくあの斧の攻撃は危ないな……。
一撃でももらったら、即死するかもしれない。
私は案外レベルが高いから大丈夫な可能性もあるけれど、生命力や耐久が私よりも低いカトラさんでは危険だ。
「カトラさんは後ろで援護をお願いします!
エルシィさん、行きましょう!」
「ああ!」
私が動き回って攪乱し、エルシィさんがボスと直接切り結ぶ。
エルシィさんも強い。
負けていないし、大丈夫。
しかし──、
「きゃっ!?」
「っ!?」
悲鳴が上がる。
そちらの方を見ると、カトラさんの肩にナイフが突き刺さっていた。
それを投げつけたのは、おそらくボスの後ろの方にいたもう1人。
あいつも強いのか!?
明日は用事があるので、更新は休みます。




