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9 襲撃者の気配

 いつも応援ありがとうございます。

「エルシィさん、カトラさん、ちょっと早歩きで。

 誰か付いてきているかも」


「!」

 

 私は小声で2人に知らせた。


 2人は無言で、歩調を速める。

 すると背後の気配も、速度を上げた。

 あ、これは確実に私達を狙っているわ。


「これは、私達を狙っていますね」


「確かに……。

 しかしマルルは凄いな。

 私よりも先に気付くなんて」


「いえ、そんな……。

 それに追跡している者達も、私達の気配を完全に把握しているようです」


 これ、それなりに実力がある人が、いるってことだよね?


「それよりも問題なのは、相手が私達に勝てると確信を持っているってことですね。

 気配は8人もいますし……」


 今までは3人でいる時は狙ってこなかったけど、徒党を組めばいけると判断したらしく、人数が増えているね……。

 でも、そんなに人を集めて、利益が出るのかな?

 エルシィさんとカトラさんは美人だから、人身売買が目的ならば高値が付きそうだけど、それでも実力がある冒険者を狙うのは、ちょっとリスクが大きいような気がするけれど……。

 そもそも2人は私のだから、やらんぞ!


 ……となると、やっぱり最初に狙われた私が目的?

 私にそんな価値があるのかな?

 それとも私を人質にすれば、なんとかなると思っている……?


「これは早くクルルと合流した方がいいかも。

 急ぎましょう!」


 と、私達は小走りに、森の奥へと続く小道を進む。

 背後からの気配はやっぱりついてくるけど、焦っている印象ではない。

 これは……なんかおかしい!?


 そう思っていると、前方からも人の気配があることが分かった。


「止まって!

 待ち伏せされているっ!!」


「なっ!?」


「まだかなり距離があるけれど……このまま進めば、挟み撃ちに()うと思います」


「それは……困りましたねぇ」


 うん、困ったねぇ……。

 道の脇に逸れて森に入っても、足場が悪くて人間の足では速く動けないから、体力がある男の人が相手だと逃げ切れない可能性が高いし、いざ戦闘になっても障害物が多い森の中では、私の素早さや魔法が活かせないかもしれない。

 上手くクルルと合流できればいいけど、それよりは……。


「戻って、戦いましょう!

 今ならカトラさんと私の魔法で、一網打尽にできます……!」


 一塊になって道を歩いている者達が相手ならば、魔法の標的にしやすいので、数での不利を(くつがえ)せるかもしれない。

 いつでも魔法を撃てるように準備しながら近づけば、いざ戦闘が始まっても先制攻撃ができるはずだ。


 なお、前方で待ち伏せしている連中は、後方よりも人数が少ないけど、道から逸れて木々の中に潜んでいるようだ。

 なので一網打尽にすることは難しい為、後回しにした方がいいだろう。

 ただ、問題なのは……、


「殺人って、罪にならないんですか……?」


 それが気になる。


「町の外だと目撃者もほとんどいないし、誰がやったのかを立証するのは難しいから、犯罪行為はまず罪には問われないな……。

 そもそも野盗とかも多いから、むしろ野盗の殲滅は推奨されている」


 それは……町の外での犯罪が罪に問われないから、野盗が多いのでは?


「……それならいいです」


 本当はよくないけどね!


 でも人間と戦う以上は、殺人も覚悟しなければならない。

 それがいいことだとは思わないけど、私はオークとの戦いを経て、酷い現実を見てきた。

 被害に遭った村の人達みたいに、あんな人の尊厳をすべて奪われるような死に方を私はしたくない。

 

 それにお姉ちゃんに救ってもらったこの命は、絶対に無駄にしないと決めている。

 その為ならば私は、なんだってやる!


「それじゃあ、まずエルシィさんは後ろの人達と接触して、何をしようとしているのか問い詰めましょう。

 私達は後ろでこっそり魔法の準備をしているので、合図をしたら横に飛び退()いてください」


「おう、任せろ」


 作戦を立て終えた私達は、今来た道を引き返した。

 前方で待ち伏せしている連中が戦いに気付いて駆けつけるまでの時間は、できるだけ稼いでおいた方がいいので、なるべく距離を取る為には戻るしかない。


 そして歩きながら魔法の準備をする。

 ちなみに無詠唱だ。

 この世界の魔法は、基本的に呪文の詠唱が必要無いらしい。

 まあ、いちいち詠唱していたら、敵に何の攻撃なのか事前に察知されてしまうのでね、当然だよねぇ……。


 で、30mほど戻ると、追跡者達の姿が見えてきた。

 数は男達ばかり8人。

 冒険者風の格好をしているけど、ガラはあまりよくない。


 でも、外見だけで判断するのはあまりよくな──、


「大人しくしていれば、命までは取らない」


 おっと、こちらから聞く前に、いきなり見た目を裏切らない発言だ。

 そして彼らは、それぞれが手にしていた武器を構えた。


 ……そうか、そういうことなら、こいつらのことはオークだと思うことにしよう。

 どうせやろうとしていることは、大差ないみたいだし。


「エルシィさん!」


 私は数mほど先行していたエルシィさんに、声をかけた。

 彼女はその合図で、道から逸れて草むらに入る。

 それを確認した私とカトラさんは、事前に用意していた魔法を撃ち放った。

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