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8 開 墾

 前回にちょっと矛盾点があったので、昨晩の2時頃に加筆修正しました。

「森に畑とか、勝手に作ってもいいんですか?」


「いいのではないでしょうか?

 未開拓の土地には、誰の所有権も無いはずです」


 森へと向かう道すがら、私が質問すると、カトラさんはそう答えてくれた。

 ふ~ん、国有地とかでもないんだ。


「ただ、畑を作った人間の土地でもないから、誰かに作物とかを奪われても、文句は言えない。

 まあ、領主に申請して税金を納めれば、所有権は主張できるようになるけれど」


 なるほど……。

 エルシィさんも、意外と法的なことに詳しそうだな。

 良家の出身なのだろうか?


「それなら、花畑自体には金銭的な価値はあまり無いと思うので、申請はしない方向で考えようと思います。

 貴族にはあまり関わりたくないし」


 重要なのはキラービーの方だけど、そっちは安易に他人が手出しすることはできないはずだ。

 それにキラービーが集まる花畑ならば、結果的に誰も手を出せないだろうし、放置でいい。


「あ、そういえば……」


 私は昨日、何者かに追跡されたことを2人に話した。


「はぁ!?

 なんだよ、それ!?」


「マルルちゃん、今後1人で行動しちゃ駄目ですよ……!」


 すると2人は、その事実を深刻に受け止めて、真剣に怒ってくれた。


「女……ってだけで、()めてくる奴がいるんだよなぁ……」


「冒険者も依頼を受けられなければ、ただの無職……。

 だからお金に困って犯罪を犯す人もいるので、気をつけてください」


 そうかぁ……。

 私がもっと強くなるまで、単独行動は控えよう……。

 今日は尾行も無いみたいだし、やっぱり2人と一緒だからかな?


 その後、クルルと合流した私達は、畑にできそうな適当な場所を見て回る。

 キラービーについてはよく分からないけど、蜜蜂の行動範囲って確か3kmくらいじゃなかったっけ?

 アイドルが農業とかをやる番組で、見た記憶がある。

 その範囲内で少し開けていて、地面に石とかが多くない場所がいいよね。


 クルルに聞くと何ヶ所か案内してくれたので、その中から1番良さそうな場所を選んだ。

 まず、そこに生えている邪魔な木や草を、「風刃(ふうじん)」の魔法で切り倒す。

 

 そしてそこから活躍するのは、「自然操作」のスキルだ。

 これは魔法の一種……というか、魔法の基本みたいなものなんだけど、攻撃用ではなく水を出したり火を付けたり地面に穴を掘ったり……と、生活に活用する為に自然を操るものだ。


 で、「地・水・火・風」の複数の属性を組み合わせることで、制御は難しくなるけど色々なことができるようになるらしい。

 その気になればオリジナルの魔法スキルを生み出すことも可能だけど、それは簡単にできないので、またの機会に試すことにする。

 今は土を操作することで、邪魔な切り株や石を地表に露出させて取り除くことに使うよ。

 露出した物は、筋力があるエルシィさんとクルルに運んでもらった。


 それからカトラさんに魔法で地面を(たがや)してもらい、私は森の中から腐葉土を運んできて、耕した土に混ぜ込む。

 空間収納のスキルがあるから、大量の土を運ぶのも楽だ。

 というか、数百kgの土を入れても問題無いって、便利すぎる……。

 しかも中に入れていた他の物とも混ざらないとか、ちゃんと分別されて入っているんだから不思議だ。


 で、畑が完成したら、花の種を蒔いて終わりだけど、まだ斡旋所に依頼したのが届いていないんだよねぇ……。

 この世界って、花屋とかは一般的じゃないみたいだから、こういう時には不便だよねぇ……。


 あ、畑に使う水を溜めておく為の、池もつくらないと。

 蜂にも水は必要だって聞くし。


 え~と、「自然操作」で穴を掘って、更に底を粘土質の土で固めて、砂利を敷いて……水を溜めれば完成かな。

 うん、畑と合わせても1日かかってない。

 魔法って便利すぎる……。


「マルル、巣箱はこんな感じでいいか?」


「ありがとうございます」


 エルシィさんは魔法での作業中はやることが無いので、彼女には巣箱の加工を頼んでおいたんだけど、それが終わったようだ。

 まあ、蜂の巣箱の構造なんてよく分からないので、蜂の出入り口を作ってもらっただけなんだけどね……。

 取りあえず蜂の巣の横に、箱を設置させてもらおう。


「ついでで良いから、ここに蜜を溜めてくれると嬉しいかな?」


 キラービー達は分かったのか分からないのか、私の周囲を(せわ)しなくブンブンと飛んでいた。

 お、巣箱の中に入っていく子がいるから、大丈夫かな?


 よし、お礼に巣の近くの地面に、「自然操作」で水を作って蒔いておこう。


「ほーら、飲み水だよー」


 キラービー達は、嬉しそうに水に群がっていった。

 喜んでくれたようでなにより。

 これなら花の種も早く蒔いて、花畑の完成も急ぎたいねぇ……。


 なるべく成長が早い品種をお願いしているけど、今から花が咲くのが楽しみだよ。




 で、1週間ほど経過した頃。

 あ、この世界では1週間という概念は無く、それどころか曜日という概念すらないのだけど、私が勝手にカウントしている。

 あるのは月の概念だけで、人々は「何月の何日目」という感じで日にちの経過を把握している。


 ちなみに1ヵ月は65日で、1年は5ヵ月だ。

 つまり冬・春・初夏・夏・秋って感じの分け方だ。

 大体1つの季節が1ヵ月って考え方なんだと思う。


 なお、日本ほど四季がハッキリ分かれている訳ではなく、この地域だと冬は雪が積もるほどではない。

 今は初夏だから、これから種を植えても冬の前までに咲く花も多いだろう。

 そう、ようやく種を手に入れたので、これから畑へ種まきしに行くところだ。


「ん……?」


 なにやら「気配感知」のスキルに、反応があった。

 あれ……また追跡されている?

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