4 斡旋所へ
翌朝──。
「んっ……んっ」
目が覚めると、上の方で鼻から抜けるような声と、粘り気のある水音が聞こえてきた。
私は薄らと目を開けて確認して見ると、私を挟んでカトラさんとエルシィさんがキスをしていた。
うおぉい、なに人の上で百合ブリッジを作って、いちゃついているんだよっ!?
というか、やっぱりこの2人、そういう関係だったの!?
これ……このまま親密度を上げていったら、お姉ちゃんの時みたいにまた襲われるかも……。
……って、2人の親密度が上がって、80%を超えてる!?
一緒に寝ただけで!?
ああ……でも、お姉ちゃんの時だって抱きついたりしたら親密度が上がっていたし、密着すると効率的に上がるのかな……?
じゃあ、ステータスはもう見られるな……。
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・エルシィ 17歳 女 LV・13
・職業 冒険者
・生命力 154/154
・魔 力 99/99
・ 力 104
・耐 久 99
・知 力 56
・体 力 143
・速 度 103
・器 用 58
・ 運 71
・ギフト 剣の心得
・スキル
二段突き
筋力強化
気配隠蔽
気配感知
大 切 断
燕 返 し
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・カトラ 19歳 女 LV・14
・職業 冒険者
・生命力 81/81
・魔 力 177/177
・ 力 68
・耐 久 81
・知 力 123
・体 力 91
・速 度 64
・器 用 68
・ 運 77
・ギフト 魔道の秘奥
・スキル
火 炎 弾
水 生 成
風 刃
土 槍
照 明
催 眠
癒やし小
罠 感 知
魔回復小
自然操作
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あ、意外にも、私よりもレベルが低い。
だけど数値では、私よりも上の項目もあるな……。
つまり私の初期値や、レベルアップ時の上昇率が低いってことなのかな……?
ともかく2人がいちゃつくのをやめてくれないと私も起き出せないから、寝たふりをしながらステータスの確認をしてようか……。
そんなことをしている間に、私いつの間にかは二度寝をしてしまった。
で、改めて目を覚ました私は、3人で朝食を食べる……のだが……。
うう……なんだか2人の顔を、直視できなくて困るぅ……。
そして朝食を終えると、斡旋所へと向かうことになった。
斡旋所は登録している冒険者から手数料をとって、仕事を紹介してくれる場所だ。
まあ、この世界の派遣会社みたいなものかな。
別にここに頼らなくても冒険者はできるらしいんだけど、その場合は依頼を得る為の交渉などを全部自分でやらなければならなくなるので、そういう手間を減らす為に大抵の冒険者は所属しているらしい。
まあ有名な冒険者になると、人を雇って依頼交渉などの雑務を任せるってこともできるらしいけどね。
つまりマネージャーみたいなものか。
私もお金を沢山稼いだら、救出した村の皆をそういう形で雇うのも良いかもしれないな……。
そして斡旋所では、余剰に採取した素材の買取なんかもやっているらしいので、私はクルルが狩ってきた動物を持ち込むことにした。
ただ、「空間収納」のスキルを持っている人はあまりいないらしく、人前で使うと目立ちすぎるようなので、拠点の家から運んでいくことにする。
でもイノシシのような大きな獲物もいるので、さすがに荷車を使う必要もあって、ちょっと面倒だった。
「じゃあ、私はこれを買取に出してくるから、カトラはマルルの登録手続きに付き合って上げてくれ」
「ええ、任せてください」
「よろしくお願いします」
正直言って、私1人での登録は難しい。
私はこの世界でろくな教育を受けておらず、字の読み書きができないからだ。
代行で職員さんに書いてもらうこともできるそうだけど、私が読めないのでは、その書かれたことが正しいのか判別できない。
何かとんでもない契約条件が含まれていても、私だけでは知る術が無いのだ。
その結果、借金を背負うようなことになっても困るから、カトラさんに頼らせてもらう。
まあ……もしもカトラさんが私を騙そうとしていたらどうしようもないんだけど、そこは信頼するしかないよね……。
そして手続きが終わると、私は晴れて冒険者として正式に依頼を受けられるようになる。
でも私には斡旋所の壁に貼られている依頼書らしき物は読めないので、私が勝手に依頼を受けるということはできない。
2人と話し合って決めることになる。
「下取り、終わったよ~。
銀貨11枚になった」
「あ、エルシィさん。
丁度私の手続きも終わったところです。
それじゃあ、銀貨は3等分しましょうか」
「えっ、クルルが狩ってきたものだし、私達はいいよ」
「いえ、私達は仲間ですし、家にも居候させてもらうのですから……。
どうか受け取ってください。
とりあえず1人3枚にして……残りの2枚はどうしようかな……」
「あら、マルルちゃんは字が読めないのに、計算はできるのですね?」
小学校低学年レベルの算数だし、そりゃあ……ね。
でもこの世界では珍しいのか……?
「じゃあ、残りの2枚もクルルの分ということで、マルルが取っていいよ。
村の人達のこともあるし、これからお金は必要だろ?」
「そ、そうですか?
それではありかだく……」
と、頭を下げる私に対して、エルシィさんは、
「ははっ、なんだか子供らしくないな、マルルは」
「え……そうですか?」
前世を加えると、もうアラフォーだしなぁ……。
私は誤魔化す為に、愛想笑いをするしかなかったよ……。
その後私達は仕事を斡旋してもらい、一旦家に帰ることにした。




