3 拠点へ
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3日ほどかけて、カトラさんとエルシィさんが拠点にしている町へと辿り着いた。
そして相変わらずクルルは、町の外で待機だ。
なんとか町へ入れるように、許可をもらえないものかなぁ……。
「町長とかの偉い人に頼めば、許可をもらえる可能性はあるけど、一介の冒険者の言うことは聞いてくれないんじゃないかなぁ……。
有名な冒険者なら、分からないけど……」
「どのみち許可が出たとしてもこの町だけですから、他の土地では無効になって不便ですね」
「そうですか……」
国の許可とかがあればいいんだけど、貴族や王族とは関わりたくないしなぁ……。
関わるのならもっと力を付けて、何があっても対抗できるようになってからだなぁ。
「ごめんね、クルル。
隠れて待っていてね……」
「グゥ……」
しょんぼりしているように見えるクルルを見ていると、なんとかしたくはなるけど……。
ファンタジー小説の中には、よく動物が人間に変身できるスキルや魔法が出てくるけど、そういうのがあれば……。
でも、クルルはこの熊の姿のままが可愛いんだし、人間にしてしまうのもなぁ……。
じゃあ、姿を消せるスキルとかあれば……。
う~ん、「気配隠蔽」があるのだから、そういうのもあるような気がするけれど、問題はクルルがそれを習得できるかどうかだなぁ……。
「お前が姿を消せれば、こっそり入り込めるのにねぇ~」
「グゥ!」
そんな私の一言でクルルは、何かを思いついたかのような顔をして、山の方へ走っていった。
え……大丈夫かな……?
その後、町に入った私は、その都会っぽさに驚いた。
日本と比べたら全然発展はしていないんだけど、今世では最近まで村から一歩も出たことがなかった私としては初めて見る光景だし、こんなに沢山の人を見るのも初めてだ。
大きな町って、こんなに活気があるんだ!
「マルルちゃんたら、キョロキョロして。
そんなに珍しいものがあるのですか?」
「はい、初めて見る物ばかりですよ」
たぶん地球にもあった物も多いのだろうけど、あっちでは文明の発展とともに廃れてしまった物もあるのだろうな。
ある意味ではこの光景自体が、博物館みたいなものなのかもしれない。
そして賑わっていた町の中心部を通り過ぎて郊外の方に行くと、カトラさんとエルシィさんが借りているという家に着いた。
大きくはないけれど、貧しい農民だった私の家よりは立派だと思う。
少なくとも冬の隙間風に、悩まされることは無さそうだ。
「この物置に使っている部屋を片付けたら、マルルの部屋として使えると思うよ」
「え、私に部屋なんて、いいんですか?
リビングの片隅に、毛布を敷いてそこで寝泊まりしてもいいんですよ?」
部屋は嬉しいけど、居候としては贅沢は言ってられない。
「いえ、それでは可哀想ですよ。
それに体裁も悪いですから、部屋を用意させてください」
「そうですか、ありがとうございます」
カトラさんは体裁って言うけど、それは私を納得させる為の建前だと思う。
実際、この家に他人を招き入れなきゃ、私の部屋の有無なんて誰にも分からないのだし。
優しい人だ。
「ただ……部屋の片付けはすぐ終わらないし、ベッドもすぐ用意できないから、今日は私達と一緒に寝てくれ」
「え……?」
確認して見ると、この家には1つしかベッドが無いらしい。
つまりカトラさんとエルシィさんは、いつも一緒に寝ているってこと!?
もしかして、そういう関係なの?
そこに私が挟まってもいいのだろうか……?
それから夕食を食べたあと、寝ることになったのだけど──、
本当に3人で川の字になって眠るらしい。
だ、大丈夫かな……?
私、もう何日もお風呂に入っていないし、クルルに乗っていたから臭くない?
ダニとかだって、ついているかもしれない。
「あの……できれば身体を綺麗にしたいんですけど、水浴びとかできませんか?」
水は貴重なので、浴室がある家はこの世界では珍しいらしく、この家にも無いようだが……。
「ああ、それなら庭だな」
「え……?」
まさか、庭で全裸に……?
庭に井戸があって、その水でやれってことなのかな……?
私はそんなことを想像して戦慄したけれど、そういうことではないようだ。
庭を見ると、小屋が建っていた。
個室トイレのようなサイズ感だ。
これは……シャワールーム的な……?
たぶん家の中に作ると、湿気でカビが生えて大変なことになるので、屋外に作っているのだろうけれど、これはこれで虫や蛙が棲みつきそうだし、普段からの掃除が大変そうだな……。
あと、脱衣所が隣接されていないので、結局私は家の中で服を脱いでタオルを身体に巻き、その小屋へ行くことになった。
周囲は塀に囲まれているし、この家の敷地を覗き込めるような高い建物が無いとはいえ、なかなかスリリングな経験になりそうだ……。
「可愛いな……」
「エルシィさん、あまり見ないでください!」
というか可愛いって、胸のサイズが!?
「今、水を溜めますね」
と、カトラさんは、小屋の内部に取り付けられた革袋の中に、魔法で生み出した水を入れた。
袋には無数の小さな穴が空いていて、シャワーのように水が出てくる。
この水が尽きる前に、身体を洗う必要があるということだね。
ただ、シャンプーや石けんは無いので、短時間で十分に綺麗になるとは思えなかったけど、それでも無いよりはマシだった。
でもやっぱり、お湯に浸かりたいなぁ……。
冒険者でお金を稼いだら、お風呂を作ろう。
きっと作ろう!
あと、余裕ができれば、石けんやシャンプーとかも開発しよう。
でも、どうやって作るのかは、ぼんやりとしか知らない……。
もっと勉強をしておけば良かった……。
その後、カトラさんとエルシィさんに挟まれて眠ることになったけれど、妙に良い匂いがするし、2人の寝息とかが気になって、寝付くまでに凄く時間がかかった。
……でも、なんだかんだで安心して眠ることができたと思う。
目が覚めたら、大変なことになっていたけどね……。




