6 魔力は見えるか
今日も読んでいただき感謝。
オークの襲撃を警戒して寝ずの番をしていた私のところに、カトラさんが来た。
「まだ、交替の時間ではありませんが……?」
「ちょっと眠れなくて……。
マルルちゃんこそ疲れていませんか?
今日はその……色々と大変だったでしょう?」
確かに故郷の村は滅びたし、お姉ちゃん達がどうなったのかも分からない。
現状では私が天涯孤独の身になったという、そんな酷い現実を突きつけられただけだ。
精神的な疲れを感じるのも事実。
でも……、
「色んなことがありすぎて、まだ実感が薄いです。
むしろ何かやっていた方が、気が紛れていいのかもしれません……」
どのみち、眠ろうとしても眠れる気がしなかった。
今夜は徹夜でもいい気分だ。
だから見張り役をしている。
「そうなんですか……」
カトラさんは、なんとも複雑な顔をしていた。
彼女の身の上はまだよく知らないけれど、さすがに故郷が滅びるような経験はしたことが無いのだろう。
だから安易な慰めの言葉は、言えないのだと思う。
むしろ私の方が、気を遣ってしまうなぁ……。
そんな訳で、話題を変えてみようか。
「あの……カトラさんは、魔法を使えるのですか?」
「ええ、そうですね」
やっぱり使えるんだ。
まあ、そんな魔法使いみたいな格好で魔法が使えなかったら、「詐欺だ」と罵ってしまいそうだけどさ……。
でも、魔法が使えるというのなら、丁度聞きたいことがある。
「魔法はどうやって、習得するのでしょうか?」
「基本的には師匠について、教えを請いますね。
私の場合は、最初に基礎だけ習って、あとは魔道書を読みながらの独学です。
マルルちゃんも魔法を習いたいのですか?」
「はい、冒険者をやるのならば、できることはなんでもできる方がいいと思うので……」
「良い心がけです」
まあ、カトラさんと親密度を上げれば、簡単にスキルをコピーできるんだけど、そもそも魔法とスキルが同じ扱いなのかもよく分からない。
もしも別枠だった場合、魔法はコピーできない可能性だってある。
その場合、カトラさんからコピーできるスキルが、「魔力強化」とかの魔法の補助系ばかりだと、使い道が無くなってしまうんだよねぇ……。
それならば基礎的な魔法くらいは、今から学んでおいた方が、将来的には役に立つんじゃないかな……。
「それでは、私がちょっと教えてあげましょうか?」
「いいんですか?
ありがとうございます!」
「お礼を言うのは早いですよ。
まずはこれを見てください」
「わ!
凄ーい!」
カトラさんは人差し指の先に、青白い炎を蝋燭のように灯した。
そしてそれは、シャボン玉のようにふんわりと空中に浮かび、まるで風に流されているかのように、ゆっくりと動いていた。
おお、本当に魔法でこういうことができるんだ!
「魔法を見るのは、初めてですか?」
「はい」
田舎の農村には、魔法を使える人なんかいない。
そもそも魔法が無い世界から、この魂は来ました。
「この炎に意識を集中して、魔力の流れを感じ取ってください。
この魔力の動きが分からないと、魔法を使うことはできませんよ?」
む? 魔力?
う~ん……まったく分からない。
数値の上では、私にも結構あるはずなんだけど……。
「まあ、最初は無理ですよ。
私の時も何日もかかりましたし」
「そうなんですか……」
うん、私にはいきなり魔法が使えるような、チートな才能は無いようだ。
結局この夜は、魔力を感じ取ることはできなかったけど、カトラさんから色々な魔法の知識を教えてもらったので、無駄ではなかったと思う。
それにカトラさんとの親密度が少し上がって54%になったし、早くスキルがコピーできるようになりたいなぁ。
……って、スキルがコピーできる100%になったら、カトラさんやエルシィさんとも恋人みたいな関係になってしまうのかなぁ……。
でも、2人が相手ってどうなんだろう……。
ハーレムって、この世界的にもありなの……?
なお、この夜はオークの襲撃も無かった。
今は餌が足りているのだろうな……と思うと、寒気がした。
そして朝になると、オークの巣を見つける為の探索が始まった。
クルルの「臭覚強化」を使えば、オークの臭いは追えるはずだ。
それにオークが集団で通った場所は、草が踏み荒らされていて、獣道のようになっている。
それに運ばれた人間の、血の跡も──。
途中で川に入って痕跡を消されていなければ、問題無く巣を突き止めることができそうだ。
痕跡は山の中に続いていて、それを追っていった結果──。
「ここだ……!」
正午近くになって、私達はオークの巣と思われる、洞窟を発見した。