エピローグ その後の世界
実質的な本編のラストです。
魔王ウルティマを倒してから、結構な時間が経つ。
その後の私は、お役御免で暇になった……ということもなく、むしろ忙しくなっていた。
ウルティマの脅威が無くなったとはいえ、各国が受けた被害は小さくなく、その復興の為の話し合いを行う会議は、幾度となく行われている。
そんな訳で、会場の警備に眷属共々駆り出されている。
それだけならまだいいのだけど、復興活動に女性のみの多国籍軍を活用するという話になってしまい、各国から集められた女性達と交流して眷属化させ、更にスキルを下賜するという作業に忙殺されていた。
まあ、結果として私の各国に対する影響力は、大きくなったけれどさ。
でも、多国籍軍に参加した女性が、本当に大きな力を得たということが分かった為、各国から大量に女性が派遣されることになったので、処理しきれなくなってきた。
しかも中には貴族や王族の娘も混じっていて、対応に困る……。
あちこちにコネが増えまくるというのも、考え物だなぁ……と。
各国の眷属達から相談を受けたら、いかにその国独自の問題だったとしても、無視する訳にもいかないからなぁ……。
ただ、シルルよりはマシかな。
シルルは魔王を倒した勇者ということで、世界一有名な人になっちゃったし、有名人なりに色々と仕事を求められて忙しいようだ。
その激務に耐えかねて、ついには「分裂」を使って増殖したという。
世界各地でシルルが同時に目撃されるようになり、「勇者は複数人いる」という都市伝説が生まれたそうだ。
噂話にしては、珍しく真実を言い当てている……。
私もまた分裂しようかなぁ……。
まあ、この状況も眷属達の間で人材が育っていけば、彼女達に仕事を任せることができるようになるから、それまでの我慢かな……。
その日私は、久しぶりに我が家へと帰宅した。
「あ~、マルルさん、お帰りなさい。
お土産はなんですか?」
「ただいま、ウルティマ様。
お土産は、チコ王国のお団子ですよ」
「ありがとう!
今は美味しい物が増えていいですよねぇ。
数千年前の食は、貧相だったわ」
ウルティマ様はお土産を受け取ると、すぐに包みを開けて食べ始めた。
う~ん、この駄女神、食っちゃ寝ばかりしているカプリちゃんと、そんなに生活スタイルが変わらないんだよなぁ……。
いや、カプリちゃんは私達の移動手段としてよく働いてくれるけど、ウルティマ様は実質的にニートだし。
でもウルティマ様だって、最初の頃はちゃんと働いていたんだよ?
魔王ウルティマと、あの邪教徒には繋がりがあったらしく、その記憶を利用して邪教徒に接触し、その反社会的な性質の教義を矯正したのだ。
さすがは女神なだけあって、人の信仰を誘導することは得意なようだ。
今では邪教徒達は、慈善団体に生まれ変わっている。
当初の計画通り、吸血鬼による乗っ取りだと、吸血鬼が増えすぎるという弊害があったので、ウルティマ様は良い働きをしてくれたと思う。
しかし、その後はまったく働いていない。
「ウルティマ様……そろそろ新しい仕事、見つかりました?」
「えっ……!?」
私の言葉にウルティマ様は、ビクリと身を震わせた。
「え……え~と……。
女神の私に相応しい仕事って、なかなか無いです……ねぇ……」
ウルティマ様の答えはしどろもどろで、最後の方は殆ど聞こえないほど小さな声だった。
いずれにしても、働く気は無いということだ。
イラッ。
「じゃあ、オヤツの量を減らしましょうか?」
「いやあぁぁぁぁぁっ!!
やめて、生きる楽しみが無くなってしまうじゃないですかぁぁぁぁぁ!!」
と、必死ですがりついてくるウルティマ様。
「じゃあ、働きましょうね?」
「うぐっ……!」
ウルティマが返事に窮する。
私は更に彼女へと圧力をかけた。
「……ね?」
「で、でも、神として生きてきた私に、人間の仕事なんて、どうすればいいのか……!」
まあ、人間としての生活能力が無いのは、事実だろうねぇ……。
「それならばアイーシャさんに、教団のお仕事を紹介してもらいましょう。
神様にお祈りすることくらいはできるでしょ?」
「え~……後輩に祈るのは、ちょっと……」
「……分かりました。
食費を納めてくれないのなら、今後食事抜きです」
「や、やります!
やりますよぉ!!」
「よろしい」
我が家の方針は、「働かざる者食うべからず」です。
そしてウルティマ様とのやりとりを終えたのを見計らって、ティティが話しかけてきた。
『お帰りなさいませ、ご主人様』
「ああ、ただいまティティ。
ウルティマ様のお世話、ありがとうね」
『いいえ、私の勤めですので。
子供の相手をしているのだと思えば、楽しいですよ』
ティティも言うようになったなぁ……。
『それよりもご主人様、お食事になさいますか?
それともお風呂になさいますか?』
「ん~、今はティティにするかな」
『……!!』
ティティは顔を赤くなりつつも、コクリと頷いた。
私とティティは、寝室に向かう。
その途中、彼女は1つの要望を口にした。
『ご主人様……私、そろそろ赤ちゃんが欲しいです
ウルティマ様のような大きな赤ちゃんではなく、本当の……』
「ティティ……!!」
うおぉぉぉ……ついにスキル「百合妊娠」を使う時が来たか……!?
正直言ってティティとの子なら、私は欲しい……!
私は答えの代わりとして、ティティの口をキスで塞ぐ。
もう寝室まで我慢できないな。
よし、転移だ。
……これからも色々なことはあるだろう。
でも私は、この世界で百合を振りまきながら生きていく。
たぶん、遠い未来までずっと。
次回は蛇足となります。
あと、新作の『百合狐、異世界を征く。』を始めました。序盤は過去作の『乗っ取り魂~TS転生して百合百合したいだけなのに、無慈悲な異世界が私の心を折りにくる。』とほぼ同じですが、途中から分岐して、まったく別の物語になります。




