表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
202/206

16 全力の一撃

 今までは身体(からだ)への負担が大き過ぎて、全力で使えなかった「眷属の力」──。

 眷属達のステータスを借りるこのスキルは、世界樹と戦った時は30%程度での使用で限界を迎えたけれど、今やレベルアップの繰り返しによって100%でも短時間なら耐えられるようにはなった。


 ただ、以前よりも眷属が増えたおかげで、私に流れ込んでくる力も大きくなっている。

 力加減を間違えれば、命に関わるかもしれない。

 それでも今使わなければ、いつ使う!!

 

 ウルティマは今も増殖しつつ、空中に逃れた私に触手を伸ばして、取り込もうとしている。

 いや、私だけではなく、周囲の草木だって飲み込んでいた。

 このままだと大陸全土に広がって、すべてを食べ尽くすかもしれない。

 巨大な肉塊として増殖していくこいつを、一刻も早く根絶しなければ……!!


 よーし、「眷属の力」発動!


「はあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 ……80%……90%……100%。

 よし、まだ大丈夫。

 身体は耐えることができている。

 しかしこの巨大な力を、制御しきれるかどうか……!


『カプリちゃん、そっちにも影響があるかもしれないから、もっと離れて全力の防御をお願い!』


『イエスでーす!!』


 数kmほど離れた場所にいる眷属達に、「念話」で注意を(うなが)す。

 よし、いくぞ!


 私の右手の人差し指──その先に小さな光の(たま)が生まれた。

 それは見る見る間に膨れ上がり、直径100mに迫る大きさになった。


「くうぅ……!!」


 光の球の(そば)にいるだけで、ビリビリと力の波動が私の身体を震わせる。

 力が大きすぎて、気を抜けば暴発してしまいそうだ。

 だけどそうなってしまえば、私自身も暴発に飲み込まれる。

 

 このスキル、使った後に自分自身を守る手段を用意していないと、私も巻き込まれて自爆同然の結果をもたらす。

 しかし不意の暴発では、身を守る余裕も無くなるので、そうなってしまう前に手放してしまおう。

 私は必死に力を制御しつつ、光の球をウルティマ目掛けて投げ放った。


 するとウルティマから巨大な触手が生え、光の球を止めようと襲いかかるけど、光に触れた瞬間にその部分が瞬時に焼け落ちる。

 一方光の球も、触手に触れたその時から、急激に膨れ上がっていった。


 そう、100mほどのサイズがあってもなお、それはエネルギーが凝縮された状態だったのだ。

 その凝縮されていたエネルギーがまさに今、一気に解放されて爆発しようとしていた。

 私はそれに巻き込まれる前に、「転移」で避難。

 その上で「万能障壁」を展開する。

 それが終わった時──、


「あ……!!」


 先程まで私かいた場所──そして今もウルティマがいるであろう場所から、巨大な爆発の光が見えた。

 爆発から生じた衝撃波が私の周囲にあった木々をなぎ倒し、更に遅れてきた熱風がすべてを焼き尽くす。

 

 これこそが、シルルからコピーした勇者スキル「天罰」だ。

 本家のシルルが使ってもあそこまでの威力にはならないけど、「眷属の力」で強化された私が使えば、核兵器に匹敵する威力がでるようだね……。


 うん、正直言って、ここまでの威力になるとは思っていなかったよ……。

 でもそれだけに消耗が激しく、酷い脱力感が全身を襲う。

 この後で「眷属の力」の反動もあると思うと、気が重いどころの騒ぎじゃない。


 ……でも、まずはウルティマの生死を確認しなければならない。

 レベルはかなり上がったけど、これがウルティマを倒したからなのか、それともあれだけ大量の肉塊を(ほうむ)ったおかげなのか、その辺はハッキリしないんだよねぇ……。


 そして私が元の場所に戻ると、そこには何も残されていなかった。

 すべてが爆発によって破壊され、爆心地には数十mほどの深さがあるクレーターもできている。

 これならウルティマも地下から逃げることはできなかったのではなかろうか……。


 さすがに我がことながら、とんでもない力だ。

 ……そう思っていると──、 

 

「あっ……!」


 何かが、焼け残っている。

 黒焦げの状態だったけど、人の形をしていた。

 でも、あの爆発の中で原型が残っていること自体が、異常なことだ。

 しかもまだ、瀕死だけど確かに生きている。


 ……一体どれだけの生命力と耐久力があれば、あの「天罰」を耐え凌ぐことができるのだろうか?

 そしてこんな真似ができるのは、ウルティマしか考えられなかった。

 それならば、彼にトドメを刺さなければならない。


 あまりにも無残な姿に一瞬迷いはしたけど、こいつが今までしてきたことを考えたら、同情なんかしてられないし……。

 私は「聖なる(つるぎ)」を生み出して、その切っ先をウルティマに向けた。

 今のウルティマになら、この一刀で問題無く倒せるはずだ。


 だが──、


「……?」


 私は特に理由も無く振り返る。

 背後に気配を感じたとか、そういうことは一切無い。

 ただ本当になんとなく、振り返ったのだ。

 おそらく「直感」のスキルが働いた。


 そして振り返ったその先に、こちらへと突っ込んでくるウルティマの姿が見えた。

 あっちが本物で、こっちの黒焦げのは偽物!?

 シルルで騙されたことの意趣返しか!?


 いずれにしても、このタイミングでは、防御は間に合わな──

 ブックマーク・☆での評価・誤字報告・いいね・感想をいただければ、モチベーションが上がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ