15 決 戦
私が眷属達を召喚し終えてから戦いの場へ駆けつけた時、シルルはウルティマに吸収されようとしていた。
危なっ、ギリギリだったよ!
「うう……マルル、遅い……」
「酷い怪我……。
頑張ったね、今アイーシャさんに治療してもらうよ」
私はシルルを、みんなのところへ転移させた。
さすがに眷属達とウルティマを戦わせるのは危険そうなので、離れた場所に待機させている。
カプリちゃんとか、実力が上位の者なら問題は無いかもしれないけれど、彼女達には他の眷属達を守ってもらうことにした。
眷属は私の力の根源だから、近くにいるだけでもいいんだ。
「同じ人間が2人……?
奇妙な術を……!」
ウルティマは訝しげな顔をする。
いや、あんたの触手を身代わりにするのも余っ程だよ?
「さあ、あんたが戦いたかったのは、私の方でしょ?
これからが、本当の決戦だよ」
「ふん……自分からわざわざ顔を出すとはな……。
おかげで、まとめて始末することができる」
「そう上手くいくかな?」
「──!?
グオッ!!」
ウルティマは苦悶の声を吐き出した。
私が障壁を纏った状態で、彼の腹に頭から突っ込んだからだ。
油断もあったのだろうけれど、彼は反応することすらできなかった。
それだけ今の私のスピードは、速かったという訳だ。
うん、もう「眷属の力」を70%近く使っているからね。
今や私のステータスは、眷属達から借りた数値を上乗せして、10倍以上に達しているだろう。
その分、反動も激しくて長時間使えないので、短時間で決めさせてもらうよ!
「『万刃』!!」
「!!」
私は魔力の刃である「聖なる剣」を、1度に制御できる限界の数まで生み出し、ウルティマ目掛けて撃ち出した。
それは洪水のごとく、彼を飲み込む。
これで普通の生物なら、挽き肉になっているはずだが……。
「ガアァァァ──っ!!」
刃の奔流の中から、ウルティマが飛び出す。
その全身は、鱗のようなもので覆われていた。
その鱗で攻撃に耐えたのだろうけれど、それも吸収した生物の能力かな?
ただ、無傷ではなく、全身が血に染まっている。
さすがに回復は追いつかなかったか。
そんなウルティマを、刃はまるで1万匹を超えるの鰯の群れのように空中を蠢いて、追尾する。
「この……っ!!
カアァッ!!」
ウルティマが気合いの声を挙げるのと同時に、その腕から無数の触手が生えた。
しかもそれは赤く発光・発熱している。
炎の属性付与もできるんだ。
その触手を鞭のように振るうと、それに接触した刃達は爆発して霧散する。
じゃあ、刃の群れを分散させて、四方八方から攻撃するね。
するとウルティマは、自らの周囲に触手を渦のように回転させて、突っ込んで来る刃を、次々に打ち落とした。
それでも刃の群れという数の暴力を受けて、触手は再生も追いつかずに損耗していくし、刃のいくつかは触手を突破してウルティマの身体に到達し、直接ダメージを与えていた。
だけど、このままでは倒せない。
ウルティマの耐久力と、再生力が尋常じゃないのだ。
だから私は次の攻撃を発動させた。
「グッ、ガアッ……!?」
眩い光が空から降り注ぎ、防御に徹していたウルティマは、その激しい奔流に晒された。
それは何百という雷だ。
今の私が使えば、あの世界樹を倒した時をはるかに上回る威力になっているはず……。
事実、ウルティマは──、
「アアアァァァァァァァァァァ──!!」
苦悶の叫び声を上げている。
効いている……!!
効いているけど……、
「え……?」
ウルティマの叫び声が変質していく。
最初は人間の声だったものが、獣の雄叫びのように──いや、それも1匹だけではなく、無数の獣の群れによるざわめきのような……。
そしてウルティマの姿も、人間の形から崩れていった。
全体的に膨れ上がり、秩序を失っていく。
「うわ……うわわ……っ!?」
湧き水が地面から噴き出すかのごとく、ウルティマが溢れ広がっていく。
あれは……今までウルティマが吸収してきた生物達の姿……!?
おびただしい肉塊の中に、様々な生き物の姿が混ざり合っていた。
もう元の生物がなんなのか分からないところも多いけど、所々に見覚えのある生物の部位が露出しているのが、より悍ましさを引き立たせる。
それが津波のように押し寄せてくるのだ。
グロいよ!?
しかもその肉塊に飲み込まれれば、私もその一部になってしまうことだろう。
それを想像して、私は身震いする。
そして事実、肉塊の中から触手を飛び出してきて、私を絡め取ろうとした。
「くっ……!!」
私は触手を回避しつつ、反撃しようとしたが……反撃?
どこに反撃する?
そもそもウルティマの本体はどこ!?
それが分からないのでは、巨大な肉塊の中に多少の攻撃を撃ち込んだとしても、有効打になるのか分からない。
それどころかこのままじゃ、また逃げられる……!!
そうなる前に、すべてを──ウルティマのすべてを消し去る!
しかし、今やちょっとした湖ほども広がったウルティマの身体を、消し去るには「眷属の力」を100%まで引き上げないと駄目だな……。
今でも軽く限界なんだけど、死なないよね?
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