3 冒険者
2日後、依頼を受けてくれた冒険者達が集まったということで、私は村の入り口へと呼び出された。
村長の奥さんのご厚意で、新しい服や靴とちょっとした食料を貰ったので、準備も万全だ。
そして門のところへ行くと、門番のおじさんが声をかけてきた。
「よう、お嬢ちゃん。
あのイノシシを換金しておいたぞ。
毛皮が売れた」
あ、忘れていた。
門番の人に、クルルが狩ったイノシシの換金を頼んでいたんだっけ。
まあ、装備や食料を村長の奥さんに用意してもらった今となっては、すぐに使い道は無いお金だけど、今後のことを考えるとありがたい。
「ありがとうございます」
渡されたのは銀貨2枚。
感覚的には1万5千円くらい?
貧しい農民なら、1ヶ月分の生活費にはなるのかな?
一見少ないように見えるけど、ぶっちゃけ農民って、自給自足なところがあるから、お金が無きゃ無いでどうにかなるし……。
でもこのお金があれば、結構楽できるな……。
だけど私はもう農民ではないから、今までと同じような使い方はできないのか……。
そんな風に掌のお金を見つめながら、少ししんみりとしてしまった。
「お嬢ちゃん、冒険者の方々が既に外に集まっているぞ。
あんまり待たせると、嫌味を言われるから、はやく行った方がいい」
「あ、はい」
おじさんに促されて門をくぐると、そこには8人の冒険者と思しき人達がいた。
うわぁ……いかにも荒くれ者という感じの風貌の人もいて、ちょっと身の危険を感じる。
これは夜のコンビニの前にたむろしているヤンキーの集団に、近づいて行くのと似たような感覚があるな……。
実際──、
「遅ぇぞ、ガキンチョ!」
と、怒鳴られた。
「ひぃ、ごめんなさい!?」
うう……今や私はオークともそこそこ戦えるし、クルルも味方だからある程度の荒事は切り抜けられるんだけど、それでもやっぱり厳つい男の人は怖いな……。
「こら、小さな女の子にイキるなよ!」
あ……!
剣士風の女の人が庇ってくれた。
女の冒険者は2人だけしかいないけど、それでも「百合」の効果によって無条件で私の味方になってくれる可能性は高いから、それだけでも心強いな。
「なんだと、この生意気な……!」
「あぁん?」
うわ……冒険者同士で言い争いを始めそうになっている。
私の所為で険悪な雰囲気になるのも困るな……。
ここは助っ人を召喚しておこう。
「あの、済みません……。
今から私の相棒を、ここに呼んでもいいでしょうか?
頼れる戦力になります」
まあ、許可されなくても呼ぶけど。
クルルがいないと、私が困る。
「あら、まだ一緒に行く人がいたのですか?
いいですよ、呼んでください」
魔法使いっぽい服装をした女の人が答える。
おお……魔法は見たことが無いから、見てみたいなぁ。
それにこの人との親密度を上げれば、魔法系のスキルもコピーできるかも。
うん、積極的に絡んでいこう。
「はい、それでは。
あ、皆さん、攻撃はしないでくださいね。
安全ですから」
「え?」
私はみんなに警告してから、大声で叫ぶ。
「クルルー!!」
しかし反応は無く、暫しの沈黙──。
「あ、あれぇ……?
遠くにいて聞こえなかった?」
だとしたら、叫び損で恥ずかしい。
もしかしたら、このままクルルは来てくれないのではないか──と、不安になったが、3分ほど経つとその大きな姿が見えてきた。
「「「「「熊ぁ!?」」」」」
冒険者達が驚愕の声を上げる。
中には、剣の柄に手をかける者すらいた。
だから私が冒険者達の前に出て、クルルを出迎えた。
「わはっ!」
クルルは私に飛びつき、ペロペロと顔を舐める。
「あはは、くすぐったいよ、クルルー。
寂しかったねー。
ゴメンねー」
「グゥ!」
私はクルルのを頭を、一杯撫でてやる。
「おい……ガキンチョ。
そいつがお前の相棒だって……?」
その時、冒険者の男が、ちょっと引いたような感じで声をかけてきた。
「そうですよー。
オーク3体を一瞬で倒してしまうくらい、強いんですよー」
「そ、そうか……」
クルルの登場で、冒険者達の私を見る目が変わった。
さっきまでは足手纏いを見るような目だったけど、今は畏怖しているような……。
まあ、その方が色々とやりやすいかな?
「私とこのクルルとで、村まで案内しますので、どうかよろしくお願いします」
そんな私の言葉に、異論を唱える者はいなかった。
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