1 異世界と私
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時は少し遡る。
私がギフトを得る少し前のその日、私はいつものように農作業をしていた──訳ではなく、休憩していた。
この農作業は我が家の生活を支える糧となるが、努力したって大幅に収穫量が増える訳でもないし……。
そもそも前世で農業の経験をしていない私としては、収穫量を増やす方法なんてほとんど知らないよ。
それに収穫量が増えたところで領主から税として取り上げられ、我が家には事前に決められていた量しか残らない。
それどころかノルマを満たしていなければ、最低限の量すら残してくれないという。
役立たずは飢えて死ねということだ。
うん、馬鹿らしい。
ノルマさえ満たしていれば、努力する意味なんか無いじゃん。
だから親も作業を私にぶん投げて、他に収入になりそうな内職をしている。
それが最底辺の農民の生活だ。
いや、農民というか、農奴や小作人に近いんじゃないかな……。
領主から土地を借りて、細々と作物を作っているって感じなんだもの。
「さて……と」
今日も日課をすることにしよう。
それはステータスの確認だ。
前世の記憶が戻った後、冗談でweb小説みたいにステータスを確認しようとしたらできた。
できてしまったのだ。
なんなんだ、この世界?
しかもこれは他の人にはできないらしく、もしかしたら噂の「転生特典」というものなのかもしれない。
そんな訳で、毎日ステータスを確認して、自分の成長を確認するのが私の数少ない楽しみだった。
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・マルル 11歳 女 LV・2
・職業 農民
・生命力 18/20(-2)
・魔 力 34/34
・ 力 16
・耐 久 18
・知 力 54
・体 力 29
・速 度 21
・器 用 13
・ 運 41
・ギフト ──
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ちなみに、何故か日本語表記である。
この世界の文字は読めないので、ありがたいけれど……。
目をつぶっても見えるし、たぶん私の脳を通して色々と変換されて表示されているのかもしれない。
で、内容についてだが……、
「うへぇ、生命力が減っているじゃん……」
少し悪くなっていた。
最近季節の変わり目の所為かバテ気味だし、昨日下痢をした所為かな……。
それ以外の数値は、変化が無かった。
レベルがあるようなので、その上昇でしか数値は変わらない──という訳でもなく、鍛えるとそれなりに上がるらしい。
熟練度ってやつ?
ただ、熟練度での数値の上昇は、かなり遅い。
一方、レベルは経験値で上がる──訳ではない。
経験値はどちらかというと、熟練度と同じ物だと思う。
じゃあ何をやったらレベルが上がるのかというと、どうやら生き物を殺すと上がるらしい。
農作業の合間に害虫や害獣を駆除していたら、勝手にレベルが上がったので、たぶんそうなのだろう。
理屈はよく分からないけれど、殺した相手の生命力とかを奪っているのかもしれない。
名付けるのならば、「殺戮値」……は、なんかイメージが悪いから、「吸収値」とでも言おうか。
他の生物から何かを奪っているのだから、それでいいだろう。
ともかくレベルが高いということは、それだけ生き物を殺して「吸収値」を稼いだということなので、積極的にレベルを上げたいとも思えないんだよねぇ……。
というか、このレベルアップシステムを理解している人はあまりいないようだ。
これが世の中に周知されていたら、ところかまわずに虐殺を繰り返すヤバイ奴らが増えまくるんじゃないかな……。
いやだよ、そんな修羅の国。
まあ、戦争とかに行ったことがある人は、このシステムについてなんとなく気付いているかもしれないけれど、「死線をくぐった」とか、そういうことで強くなったと勘違いしている可能性もあるので、これは私が墓まで持っていかなければならない秘密だろうね……。
ともかくレベルアップ以外で強くなるには、熟練度を上げるしかない訳だけど、その熟練度を上げる為の方法は、地道な訓練しかない。
たとえば「力」を上げたいのなら筋トレを、「速度」や「体力」を上げたいのならば走り込みを──って感じだけど、さすがにだるいよねぇ……。
そういう身体を使うことは、農作業だけで間に合っているよ……。
いや、農作業もサボるけどね。
しかし──、
「こら!
何やっているんだ、お前!」
「お姉ちゃん……!」
鬼が来たので、居ぬ間の洗濯時間は終わってしまった……。
昼にもう一度更新するかも。