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12 暴食との戦い

 私はウルティマを攪乱する為に、何ヶ所も「転移」を繰り返す。

 そしてそれぞれの場所に、「自然支配」で巨大な土の壁を作った。

 いざという時には、これを盾にして身を守る──というのは、本命の仕掛けをウルティマに気付かせないようにする為のブラフだ。


 実際には、一ヶ所だけにとある仕掛けをしておいた。

 それがウルティマに見つからないように、私は再び最初の場所の近くへと転移する。

 仕掛けの周囲をうろついていたら、たとえウルティマに気付かれなかったとしても、彼の攻撃によって偶然仕掛けが破壊されるなんてこともありえるしね。


「波動砲!!」


 私はウルティマに一撃を入れると、再び転移して壁を作る。

 これをひたすら繰り返して、本命を隠す。


 しかし私も全力で攻撃しているのに、ウルティマにはさほど効いている感じがしない。

 回避できるはずの攻撃を、あえて正面から受け止める余裕がある。

 ただ、今は様子見をしているだけだろうけど、そろそろ本気になってくるかな……?


「チョロチョロと鬱陶しいぞ、貴様」


「っ!?」


 私の転移についてきた!?

 転移した直後なのに、すぐ近くにウルティマの姿があった。

 私は慌てて「高速飛行」で上空へ逃れ、ウルティマ目掛けて極大の火球を放つ。

 彼は大きな爆発に飲み込まれるが──、


「くっ……!!」


 爆炎の中から、触手が伸びてくる。

 しかもそれは、何十本も──だ。

 触手はウルティマの両腕から生えていた。

 これに捕まったら、私も吸収される。


 私は空中で転移を繰り返して回避するけど、触手は何百mも伸びて追ってくるし、それ以上伸びなくなった場合は、ウルティマ自身が転移してくる。


「この……!!」


 私はあらかじめ作っておいた土壁の裏に回り込み、その壁からウルティマに向かってハリネズミのように鋭いトゲを生やした。

 だけどウルティマは、触手を鞭のように振るうだけで、そのトゲを粉々に打ち砕く。


 むう、牽制にもならないか。

 ならば──、


「む!」


 壁そのものを、ウルティマに向かって倒す。

 これで押し潰されてくれればいいんだけど、まあ脱出するだろうなぁ。


 そんな私の予想通り、ウルティマは壁に大穴を穿(うが)ち、空中に飛び出した。

 でもそれが予想通りなら、狙い撃ちできる。

 空から降り(そそ)(いかずち)がウルティマに命中するが、それでも彼は止まることなく、こっちに向かってくる。


「じゃあ、これは!」


 今度は超低温の冷気をウルティマに吹きかける……けど、やっぱり効いていない。


 このままじゃ、いつか捕まるな……。

 そう思っていたその時、私に向かってきた触手の先端が、傘のように開く。


「口!?」


 それを認識した瞬間、その口から熱線が撃ち出された。

 そのあまりの速度に、(かわ)す余裕も無く、「万能障壁」で防御するのが精一杯だった。

 しかし防御が間に合ったとはいえ、その威力は抑え切れない。


「きゃっ!!」


 私は障壁ごと大きく(はじ)かれる。

 そこに熱線の追撃──。

 

「ぐうっ……!!

 やっぱり強いっ!!」


 熱線を防ぐ為に動きが止まった私を、触手が取り囲む。

 こうなると、たぶん転移で逃げることもできないな……。

 おそらく私を取り囲んでいる触手は、転移を(さまた)げる磁場のようなものを発しているような気がする。

 なんだか気配がおかしい。


 私を追い詰めたと、ウルティマはほくそ笑んだ。


「やはり情報通り、接近戦となると大したことはないようだな。

 距離を詰められると、すぐ手詰まりになる」


 そうだね……近接戦闘は大したことがなかった(・・・・)

 だけどすべてを見せた訳ではない。 

 

「眷属達も知らない私もある──って言ったよね?

 今までのが私の全力だと思っちゃ、困るよ……!」

 

 そう、()には、眷属達にも知られていない力がある。

 今こそそれを発揮する時だ。


「……『英雄の盾』!」


 今まで私を球形に囲んでいた障壁が、四方に配置された4枚の盾となった。

 その盾は、私が動いても一定の距離を保ってついてくる。

 そして私が動いたことで、触手は反応して襲いかかってくるけど、それは盾が防ぐ。

 しかも、自動でだ。

 その守りは過信できないけれど、防御を盾に任せることで、私は攻撃に集中することができる。


 私はウルティマとの距離を詰めていく。


「ほう、俺に接近戦を挑む気か……?」


 と、嘲笑(あざわら)うような笑みを浮かべるウルティマ──。

 それだけ近接戦闘は、得意なのだろう。


 そして事実、彼の両肩からは、虫──あるいは甲殻類の脚のようなものが生えた。

 その先端は、鎌状になっている。

 あれはカマキリ型の魔物を吸収して得た力か?


 その鎌が、私に襲いかかってくる。

 背後からは、相変わらず触手も迫る。

 でもそれは、盾が防いでくれるから大丈夫だ。

 が──、


「!」


 ウルティマの蹴りが跳ね上がった。

 私は身を()()らせ、それを回避するけど、ウルティマの爪先が私の顎をかすめていく。


 危なっ!

 爪先からかぎ爪が生えて、間合いを見誤らせようとしたよ、こいつ!


「今のを、躱すか!」


 楽しそうにウルティマは笑う。

 まだまだ余裕がありそうだな。

 でもその余裕、いつまで続くかな?


「『聖なる(つるぎ)』──!」


 私は右(てのひら)から、光り輝く魔力の剣を生み出した。

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