10 予想外の襲撃
突然、会場に轟き渡った爆音──。
私はその正体を確かめる為に、テントの外へと飛び出した。
すると宿営地の方から、火の手が上がっているのが見える。
太古の魔王ウルティマの攻撃か!?
いや、その割には、被害の規模が小さいような気がする。
『状況が分かる人、いる!?』
私が「念話」で眷属に語りかけると、
『しゅ、襲撃です、ご主人!!
会場にいた何処かの国の人間が、無差別に攻撃を始めました!』
人間!?
ウルティマじゃなくて!?
なんで!?
『とりあえず止めて!
可能なら、殺さずに取り押さえて!』
その暴れている奴を捕まえることができれば、攻撃の理由が分かるだろう。
誰かに操られているのか、それともなにかしらの目的があるのか……その辺は分からないけど、こんな混乱状態の時にウルティマが襲撃を仕掛けてきたらまずいな……。
いや、ウルティマの襲撃があった場合の対応は事前に決めてあるから、大きな問題は起きないとは思うけれど……。
それでも私は眷属達に指示を出す。
『担当者は各国の首脳を、「転移」で帰国させる準備をしておいて!』
すぐに襲撃を鎮圧できるのならば、急いで帰国させる必要は無いけど、状況が悪化するようなら避難させた方がいいだろう。
暫くして、襲撃者が全員取り押さえられたとの報告が入る。
そして被害は、会議に出席した者達に同行してきた従者などが、十数人も死傷したということだ。
それでもこれがテロだと考えれば、被害は小さい方だと言えるのかもしれない。
本来なら各国の重鎮が集まった会議の場を直接狙うと思うのだけど、そちらは警備が厳重すぎて諦めたってことなのかな?
ただしこれは陽動で、他に本命の攻撃がある可能性も残っているので、警備は更に厳重にする必要がある。
私は捕縛された者達が収容されたテントへ行き、尋問を開始することにした。
見たところ全員普通の人間だけど、所属している国はバラバラのようだ。
おそらく各国の出席者に同行してきた、騎士や従者の男達だと思う。
……嫌な予感がする。
「お前達はなんなのだ?」
お姉ちゃんが、「魅了」のスキルをかけた上で問う。
これをやると、余っ程精神力が強くない限り、質問には正直に答えるようになる。
「我々は……我らが神に逆らう愚か者達を、誅する為に来た!」
「神を恐れぬ愚か者に天罰を!」
なんかヤバイことを口にしだしたぞ……。
「神……って、ウルティマのこと?」
そんな私の問いに、男は──、
「我らが神の御名を、軽々しく口にするな!!」
あ~……こいつら、邪教の崇拝者とかそんな感じかな?
こいつらの信仰する神とウルティマが、本当に同一の存在なのかは分からない。
だって封印していたエルフですら、ウルティマの存在を忘れていたくらいだし、人間の間でウルティマの情報が数千年も正しく残されていたとは思えないもの。
たまたま彼らの終末的な教義と、ウルティマの破壊行動が一致したので、便乗して神認定してしまったという可能性もある。
まあ、それはこの際どうでもいい。
問題なのは、この邪教の信望者が、各国に広く浸透している可能性があることだ。
国の重鎮に同行する者達の中にも紛れ込んでいるくらいだし、かなり大きな組織なのかもしれない。
そいつらが今後も、各国でテロ行為を起こす可能性を考えると、頭が痛くなる。
「お姉ちゃん、こいつらを眷属化させて国に帰そう。
そしてこいつら自身に、仲間を処理させた方が手っ取り早いよ」
「そうだな」
お姉ちゃんに血を吸われて吸血鬼化した者達が、帰国してから邪教の関係者に接触し、そいつらの血を吸って更に吸血鬼化させる。
その繰り返しで、いずれは邪教の関係者は根絶できるだろう。
結果的に何千、あるいは何万もの吸血鬼が誕生することになるかもしれないのは、ちょっと問題かもしれないが……。
それでも今は、ウルティマ対策に集中したいので、余計なことに労力は割きたくない。
「で、ここに来ている仲間は、これで全員なの?」
「それは……」
私の問いに、男達は言いよどむ。
つまり、まだいるってことか。
それを私達が捜すのは、ちょっと難しい。
……こいつらに任せるか。
「国に帰す前に、他の仲間達の血を吸ってもらった方が良さそうだねぇ……」
とか、言っていると──、
『今度はウルティマが現れた!!』
そんな念話による報告の声が響く。
私は慌てて外に飛び出す。
「あれが……!!」
会場から数kmほど離れた空に、巨大な物体が浮いている。
それは、足だけしかないタコのような姿だった。
ディガイア王国に出現した触手もあんな感じだったから、あれがウルティマで間違い無いだろう。
まさか全身が触手だったとは、思わなかったけれど……。
しかし正面から来るとは、今度は勝てるという自信があるのだろうか。
でもこちらだって、負ける訳にはいかない。
直後、眷属達の遠距離攻撃が始まり、閃光が周囲を染めた。
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