5 王都の攻防戦
ディガイアの王都を攻めている魔物の数は、数十万を数える。
おそらくこいつらが人間を虐殺してレベルアップした後に、太古の魔王ウルティマが取り込んで自らの糧にするつもりなのだと思う。
だからそうなる前に、この目の前にあるレヘルアップの材料──大量の「吸収値」は、ウルティマの手の届かないところへ確保する必要がある。
その方法とは──、
「カプリちゃん!
聖属性の『火炎息』を!」
「ラジャーでーす!」
カプリちゃんが口から吐き出した聖なる炎が、魔物の群れを飲み込む。
それは邪悪なものだけを焼き払う炎だ。
一気に千を超える魔物が消滅した。
まあ、中には聖属性に対して耐性を持っているのか、無事なのもいるけれど、いずれにしてもこれを繰り返せば大量の吸収値を得られる。
そう、カプリちゃんをレベルアップさせてしまえばいいのだ。
カプリちゃんほどの実力があれば、ウルティマだっておいそれとは手が出せないだろう。
ただ、さすがに数が数だけに、カプリちゃんだけではすぐに魔物の群れを殲滅できるという訳にはいかない。
だから私達も当然戦う必要がある。
「雷光よ!!」
膨大な数の雷が、魔物の群れの中に降り注いだ。
しかもそれだけでは終わらず、地面に落ちた電流は消えることなく地面を走り回り、そして再び空へと還っていく。
勿論、魔物を飲み込みながら──。
こういう時はカトラさんの、広範囲魔法攻撃が威力を発揮する。
ただ、近接戦闘はまったく駄目なので、エルシィさんによる護衛は必須だけどね。
あとはキララによる、空中からの猛毒散布が大軍には有効かな。
ただし毒は人体や動植物にも有害なので、使う場所や風向きは考える必要がある。
まあ、短時間で分解される毒だとはいえ、場合によっては後で浄化魔法による処理が必要かもしれない。
そして他の者達は近接戦闘がメインなので、ちょっと効率が悪いけど、それぞれのペースでやれることをやってもらおう。
そして私はというと──、
『街に入り込んだ魔物達に攻撃を!』
魔物達の中にも当然雌がおり、そいつらには私の『百合』が効く。
入り組んだ市街地の中に侵入した魔物を、少ない人員で虱潰しに掃討するのは簡単なことではない。
だから魔物の雌を操って、同士討ちをさせるのだ。
そして最終的には、その操った雌の魔物達も私が倒す。
眷属として使役し続けることも可能だけど、既に人間を襲った魔物は、さすがに許すことはできない。
利用するだけ利用して使い捨てするのは外道の所業だと思うけど、人間を襲った連中に情けをかけるのは甘すぎるからね……。
せめて苦痛が無いように、終わらせてあげるね……。
それから戦いは数時間ほど続き、魔物の数は最初の1割か2割くらいまで減っている。
しかしそれでも、万単位の数は残っているけど……。
この激戦を生き抜いたのだから、かなり強力な個体も混じっている。
ただ私達だって、20~35レベル程度は上がっていた。
ちなみに私のステータスはこんな感じ。
───────────────
・マルル 12歳 女 LV・136
・職業 女神の使徒
・生命力 662/662
・魔 力 703/703
・ 力 454
・耐 久 502
・知 力 611
・体 力 487
・速 度 508
・器 用 395
・ 運 352
───────────────
そして眷属で最強のカプリちゃんはこう。
───────────────
・カプリファス 183歳 雌 LV・142
・職業 守護神
・生命力 9166/9166
・魔 力 9564/9564
・ 力 3376
・耐 久 4120
・知 力 1571
・体 力 6182
・速 度 2543
・器 用 1127
・ 運 1003
───────────────
私とレベルはそんなに変わらないのに、桁違いだ。
このカプリちゃんに勝てる存在って、ちょっと想像できないなぁ……。
だけどウルティマが狙うとしたら、カプリちゃんということも有り得るのかな?
彼女を倒せば、とんでもなく大きな吸収値を手に入れることができるだろう。
ただ、私ならばそんなリスクは取らない。
そしてウルティマも慎重なタイプっぽいので、直接カプリちゃんは狙わないと思う。
来るとしたら、確実に勝てるようになってからだ。
でもこのままだと、折角の餌である魔物達が全滅してしまう。
それをウルティマは、見逃すのだろうか?
いや……その前に何かしらの攻撃を、仕掛けてくるとは思うのだけど……。
『みんな、ウルティマの動きがあるかもしれないから、警戒は怠らないでね』
と、私は、「念話」で眷属達に呼びかける。
長く続く戦いで、みんなも少なからず消耗してきているし、油断も生まれる頃合いだ。
しかし特に変化が無いまま、戦いは続いていく。
私はその事実に違和感を覚えつつも、時間だけが過ぎていった。
だけど魔物の数が減り、余裕ができてくると、ようやくあることに気がついた。
「……死体が減っている?」
我々の攻撃によって完全に消滅したものも少なくないけど、それを差し引いても魔物や、犠牲になった人間の死体の数が少ないような気がしたのだ。
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