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4 餌 場

 私達は魔物の群れによる襲撃を受けたという、ディガイア王国へ向かうことになった。

 ディガイア王国に訪問中の王妃ナスタージャ様や、現地の要人などの救出が最優先だけど、可能ならば魔物の群れを殲滅して、その脅威を取り除きたいと思う。


 そんな訳で私の眷属達については、戦える者はなるべく連れて行くことにした。

 その規模は100人以上となる。

 

 ただ、エルフの入植地を守る為に、チエリーさんとリーリエの姉妹(しまい)や、エルフの眷属達は残留。

 彼女達にはランガスタ領での異変が生じた場合にも、ケヴィンさんやキララの分身達と協力して対応してもらうことになっている。

 

 また、王都にも守りを固める為、クレセンタ様は勿論、ラムちゃんやジュリエットとエレンも残した。

 こちらもキララの分身と協力して、有事には対応してもらおう。

 他にも私が名前を憶えていないような眷属を数十人単位で残しているから、多少の魔物の群れ程度ならなんとかなると思うけど……。


 で、ディガイア王国へは、「転移」のスキルで行くことになった。

 ただ、一度も行ったことが無い場所なので、直接王都へは転移できない。

 なので目的地の方向へ向かって、目の届く範囲に空中を連続転移する方法で移動することになった。


 その移動の合間には、ディガイア王国の風景が目に入る。

 国境付近にはまだ変化なんて無く、人々の生活も壊れてはいない。

 しかし王都に近づくにつれ、壊滅した村や町が目立つようになっていった。

 

 生き残りはたぶん……いない。

人の気配は感じなかった。

 

「これは……酷いな……!」


「……」

 

 エルシィさんのつぶやきに、私はなんとも言えない気持ちになる。

 これはたぶん、お姉ちゃんも同じだろう。

 どうしてもオークに滅ぼされた故郷の村を、想起させるから……。

 他の生き残りであるティティ達には、見せられない光景だよなぁ……。

 戦闘力が無いとは言え、家に残してきて本当に良かったと思う。


 ……あの地獄を見てきた私達だからこそ、それが繰り返されている現実を許せないと感じている。


「カプリちゃん、急いで!

 でも、魔物が人を襲っているのを見つけたら、教えてね」


 王都へは急ぎたいけど、そこだけを救えばいいという話にはならない。

 だけど時間が無いのも事実なので、比較的小規模の群れによる襲撃ならば、レベルが低めの眷属達に任せることにした。

 回復系のスキルも「下賜(かし)」してあるから、怪我人の救護も問題は無いだろう。


「ここが終わったら、情報収集をしながら王都へ向かって。

 他に襲撃を受けている集落があったら、そちらのフォローもお願い」


「はっ!!」


 必要最低限の人員を現地に残して、私達は進む。

 ただ、どうしても私達の通り道以外の場所は、後回しにするしかない。

 断腸の想いだけど、今は何処にどれだけの被害が広がっているのか、それが把握すらできていないので、確認している余裕は無かった。

 

 それは王都での戦いが終わった後に、人口密集地から順番に確認していくことになるだろう。

 それがすべて終わるまでには、何日もの時間を要するだろうし、被害を完全に把握できるまでには、1ヶ月以上かかるかもしれない。


 それから程なくして王都が見えてきたけど、地獄のような状況だった。

 王都の周囲は、地面が(うごめ)いている。

 いや、それはすべて魔物だった。

 通勤時間帯の、満員電車よりも酷い過密具合だ。

 それだけ無数の魔物がひしめいているけど、あれって魔物同士で押し合って圧死しないのだろうか……?


 いずれにしてもこれは、数万どころか数十万はいるのでは……?

 ミーヤ様は、よくこれを突破できたな……。

 まあ、脱出した時は、ここまで魔物が集まってきていなかったのかもしれないけれど……。


 王都を囲む壁はまだ形を保っているけど、一部の壁に穴が穿(うが)たれ、魔物が市街地に入り込んでいる。

 逃げ遅れた住民や兵士達が犠牲になり、無残にも食い散らかされていた。

 王城の城壁はまだ突破されていないけれど、この尋常ではない魔物の数を考えると、いずれは城にも魔物がなだれ込むだろう。


「アイーシャさんは先に城へ行って、防壁を形成してください。

 それが終わったら、怪我人の救護をお願いします。

 ラヴェンダは護衛をお願い」


「了解でございます」


「分かりました、ご主人!」


 直後、「転移」でアイーシャさんとラヴェンダの姿が消え、それからすぐに城が光の壁に包まれる。

 それによって魔物達は(はじ)かれ、弱い個体はそのまま消滅すらした。

 さすがは聖女の術だ。

 これなら当面の間は大丈夫だろう。


「私達は手分けして、魔物達の処分を!

 まずは壁の外の大軍から、一気に片付けようか」


「しかしあの数は、少々骨だな……」


 お姉ちゃんの嘆きには、私も同感だ。

 あの魔物の数は、ちょっと異常だと思う。

 

 とてもこの群れが自然発生したものだとは思えないから、太古の魔王ウルティマの関与があるのは間違い無いだろう。

 ウルティマにとって、人間を大量に虐殺してレベルアップした魔物は、自身を強化する為の餌だ。

 そして魔物を倒してレベルアップした人間も──。


 ここはウルティマにとっての餌場なのだ。

 ウルティマは今も何処かで、獲物を刈り取る時を待っているのだろう。

 だけどその獲物を、私達が横取りしてやる。

 この魔物の群れを殲滅することで、大幅なレベルアップをして、対ウルティマの力としてやるんだから!

 なんだか忙しくて、ギリギリの更新が続いています。

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