幕間 シルルの日常
今回はちょっと短いです。
私はシルル。
しかしちょっと前までは、「マルル」と呼ばれていたという感覚なので、まだその名前には違和感がある。
そう、私はマルルの「分裂」というスキルによって、生み出された分身なのだ。
ただ、分身とは言っても、私の能力はマルルとほぼ同じように見えて、実のところ『百合』が引き継がれなかった。
だから女性を無条件に味方に付けるという便利な能力はもう無いし、私自身も女性に対しては以前ほど恋愛感情は持てなくなっている。
いや、マルルと分裂する前までの記憶は全部共有しているから、今更男性には恋愛感情を持てないとは思うけどねぇ……。
眷属のみんなとは、あんなことやこんなことを色々としちゃったので、それがすっかり身体に染みついてしまっちゃった……というか。
女の子の柔らかい肌の感触とか、かぐわしい匂いとか、可愛い声とか……実にいいよね……。
なによりも私が1番好きなのは、マルルだし……。
私も性別が女である以上、彼女の『百合』が放つ魔力には勝てなかったよ……。
元々は自分自身だったのに、今では彼女のことをアルルお姉ちゃんと同じような感覚で見ている。
つまり大好きで仕方がないという……。
これが『百合』の効果による感情だと思うとちょっと複雑だけど、今は離ればなれになっていることの方が寂しくてたまらない。
そんな訳で、その寂しさを紛らわせる為に私は──、
「あうぅ……姐さん、もっとぉ……!」
「ふふ……ここ?
ここがいいの?」
「にゃ……にゃふ~ん」
「甘えん坊だねぇ……」
ライオン娘のゲルニタをモフる。
スキルで「獣化」した彼女は、全身が毛に覆われているので、絨毯を撫でているような感触が心地良い。
今の私には『百合』による魅了効果は無いけれど、毛繕いのテクニックは以前と同様なので、ゲルニタは懐いてくれた。
まあ……魔界の王女ニルザは甘えてこなくなったので、ちょっと寂しいが。
それでも──、
「シルルお姉様、そろそろ訓練の時間だぞ」
「うん、今行くよ」
私の実力は認めてくれているようなので、一応「お姉様」と呼んでくれてはいる。
でも、最初はマルルが「分裂」した事実にはちょっと引いていたので、まだ精神的な距離があるなぁ……。
で、「訓練」とは、太古の魔王ウルティマの襲撃に備えて、眷属達の強化だ。
ただし眷属とは言っても私のではなく、あくまでマルルの眷属であり、その多くは反乱軍の生き残りが「女体化」を受けて眷属化した者達だ。
そもそも私も、マルルの眷属という扱いだしね。
だから実のところ私には「眷属強化」と「眷属召喚」、そして「下賜」や「眷属の力」のような眷属に関わるスキルは使えなくなっていた。
眷属を持っていないのでね……。
あと、スキルのコピーも無理だねぇ……。
まあ、元々持っていたステータスを見る能力だけは使えるけど、マルルの眷属のは閲覧できなくなってしまった……。
でも、自分のを見ることができるのだから、頑張って鍛えれば他人のも見られるようになるかな?
というかこれ、異世界物でよくある「鑑定」だよね?
成長させれば、チート能力になるのかもしれない。
いずれにしても私の能力は、大きく低下したと言える。
そんな訳で、私自身もレベルアップしないと心許ないので、竜族は無理でも適当な魔物の生息地を魔王エルザに教えてもらい、そいつらを狩ってレベルアップを図ろう。
現状ではまだウルティマの動きは掴めていないし、攻撃してくる気配は今のところ無いのだけど、いつ何が起こってもいいように強くならなきゃ!
「じゃあ、行こうか。
ゲルニタ」
「おう、姐さん!」
「ニルザもね」
「うむ!
誰が戦果を1番上げるのか、競争だ!」
ちなみに暗殺メイドのニリスは、ウルティマに関して調べてもらっているので、訓練には参加しない。
有益な情報は欲しいけれど、いっそこのまま何の情報も得られず、そしてウルティマもそのまま2度と姿を現さなければいいのに……というのが本音だけど、そうも上手くいかないのだろうなぁ……。
これから何が起こるのか分からない魔界に、私はただ1人の人間として取り残されてしまったけれど、まあ寂しくてもなんとか元気で生きているよ。
いつも応援ありがとうございます。
次回から新章ですが、明日に間に合うだろうか……。




