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19 反逆者の末路

 反乱軍の全体は、本陣が発動した大魔法に巻き込まれて、ほぼすべてが消滅した。

 残るのは本陣の、数百人程度といったところだろう。

 ここだけは魔法の影響が無かったようだ。

 影響があったら、ただの自爆魔法だしね。


 あとは……事前に戦場から逃げ出した者も皆無ではないと思うけれど、あの大破壊の余波に吹き飛ばされて、果たして無事なのかどうか……。


 で、折角生き残った本陣の者達は、激しく動揺していた。

 数万の味方を犠牲にした奥の手すら、私達に通用しなかったんだもんねぇ……。

 もしかしたら自責の念で、自害する者も現れるかもしれない。


「ま……まさか、あの大魔法でも……!!」


「事前に悟って、回避したとでも言うのか……!?」


 うん、そうだね。

 たぶん「直感」のスキルが、働いたんじゃないかな?

 嫌な予感がして、ラヴェンダ達に本陣を調べさせたのは大正解だったよ。


 その時、何者かが大声を張り上げた。


「ええい、狼狽(うろた)えるな!!

 残った貴様らは精鋭中の精鋭!

 まだ勝ち目はある!!

 かかれぇ!!」


 いや、勝ち目は無いでしょ。

 それがあったら、あんな無茶な魔法は使わない。


 それに精鋭だと言っても、脅威を感じるほどの強さは感じなかった。

 大魔法で消滅した自軍の吸収値を得てレベルアップしていたとしても、数百人での頭割りでは大したことはなかったようだ。

 まあ、大半はオークやゴブリンなどの下級魔族なので吸収値も低かったと思うし、事前に私達に倒されて数が減っていたというのもある。

 つまり私達も、レベルアップはしているのだ。


「あの術があれば、魔王城を陥落させることもできる!

 我らは無敵の力を手に入れたのだ!!

 まだ終わりではない!」


 ああ……そういう……。

 確かにあの小型核みたいな威力の攻撃なら、魔王城や首都を更地にすることも可能だろうね。

 でも、統治すべき民を巻き込んで、彼らは何を支配するつもりなんだろう?


 いずれにしても、あれだけ大規模の魔法をそう何度も連発できるとは思えない。

 今この状況を(くつがえ)す為には、役に立たないと思うけどなぁ……。


 それでもここで捕縛されれば、どのみち死罪は()けられないと悟っているのか、兵達は動き出した。

 ただし言い出しっぺの男は、動かない。 

 そいつが反乱の首謀者であるスクエーラかな?

 反乱軍の中で、1番強そうな気配を放っているので、たぶん間違いないだろう。


 スクエーラは、魚のような男だった。

 魚を連想させる顔付き──というよりは、顔の部分的なパーツが魚というか……。

 (まぶた)は無いし、口も魚のそれに形状が近い。

 更に鱗に包まれているのか、肌の色は金魚のように赤く、髪の無い頭頂部には背びれのような物もある。

 これは半魚人タイプの魔族なのだろうか?


 ともかくスクエーラの指示を受けて、兵が私に殺到してくる。

 う~ん、大人しく捕縛されてくれれば、まだ命を繋ぐ可能性もあったのに……。

 「女体化」させて、私の私兵にするという手もあったんだよ?

 でもねぇ……、


「降参するなら今──」

 

 私が口を開いた瞬間、私に殺到してきた者達は両断されていた。

 お姉ちゃんが私の前に出て、斬り裂いたのだ。


「大丈夫だぞ、マルル。

 私が付いている!」


「ありがと……」

 

 うん……降伏勧告が遅かったか。

 私に殺意を向ける奴を、許すような人は私の周囲にはいないからね……。

 眷属達が次々と参戦して、敵兵を蹴散らしていく。


「降伏する者は、殺さないでねー」


 そんな私の言葉通り、降伏した者は殺さず捕虜にすることになった。

 その中に、スクエーラがいるのが()せないんだけど……。

 え、総大将のあんたが、真っ先に降参するの?

 

 情けなー……。

 裏から人を操るのが得意だけど、すべては机上の空論。

 現場での実務はまったく駄目なんだな……。

 

 なんでこんなのが、反乱なんて大それたことをやってしまったのだろう……?

 野心なんて持たずに、大人しく魔王の下で働いていたら、大臣くらいになれた可能性もあっただろうに……。


「なんだ貴様は……?

 将としての(うつわ)が、まったく無いではないか……」


 ニルザも呆れる。


「ひいぃぃ……。

 ゆ、許してくれぇ……」


 スクエーラは情けなくも命乞いをするけど、彼がやらかしたことを考えると、聞き入れられる願いではない。

 とはいえ、彼からは色々と聞き出さなければならないだろう。

 暗殺の動機とか、先程の大魔法の詳細とか……。


「貴様が大人しく尋問に従うのならば、楽な死に方を選ばせてやる。

 それが最大限の譲歩だ」


「ぐっ……くうぅぅ……」


 スクエーラは(うめ)く。

 自身の命運が尽きたことに、悔し泣きをしているのだろうか。

 ……いや、違うかも?

 彼は苦しんでいるようにも見えた。

 自害用の毒物でもあおった!?


 だけどスクエーラは、自害するようなタイプには見えない。

 それに彼からは、おかしな気配も感じた。

 これは……呪い……?


 何者かが口封じの為に、スクエーラへ時限式の術式を仕込んでいたというの!?

 私は慌てて彼に「大浄化」をかけるけど、効いている感じがしない。


 そして私達の目の前では、スクエーラの身体(からだ)が大きく膨れ上がり──、


「オオオオオオォォォォォ────っっ!!」


 化け物と化して、雄叫びを上げた。


 おいおい、用済みになったこいつを暴走させて、私達に始末させようって言うの!?

 つまり後ろでこいつを、操っている奴がいたってこと!?

 このパターンはもういいよっ!

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