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15 獣王の背後関係

 ちょっと遅れました。

「マルル様ー、また大勝ちしましたよー!」


「あたしもさね」


 獣王ガンザスとの決闘に勝利したニルザ。

 そんな彼女に──しかも分単位での勝利時間を予想して賭けていたリーリエと、彼女の真似をした魔王エルザは大勝ちしたようだ。

 さすがの強運エルフ。

 

 よし、この資金で魔界の名物を買いあさり、国に帰ったらキャロル商会で売りさばくことにしよう。

 そしてその利益を資金にして、人間界の物資を大量に仕入れてこの魔界で売るぞ!

 事業の拡大のチャンスだ。


 でもその前に、ご褒美としてリーリエの耳をマッサージしてあげよう。

 フニフニフニフニ。


「ああん、マルル様ぁ」


 リーリエは恍惚としているが、私も気持ちがいい。

 癖になるな、この感触。


「あーっ!

 マルルお姉様、私にもーっ!!」


 そこへニルザが戻って来て、ご褒美を所望する。

 しかしニルザの耳は、先端がちょっとだけ尖っているけど、エルフのものと比べると触り甲斐は無さそうだな……。

 あ、尻尾があるか。


 どれ……。


「あひゃん!?」


 ニルザの黒い尻尾を握ると、彼女はビクンと背中を()らせて可愛らしい声を上げた。


「お……お姉様……!

 し、尻尾は敏感で……!」


 ふむ……尻尾は弱点なのか。


「それ、戦闘中に触られても大丈夫なの?」


「戦闘中は……闘気でガードしているのでぇ……」


「なるほど」


 それにしてもこの尻尾、触り心地がいいなぁ……。

 柔らかい毛がびっしりと生えていて、まるで黒ネコの尻尾みたいだ。


「お姉様……駄目ぇ……」


 ふふ……ここがいいの?

 ほらほらぁ!


「ああんっ!」


「……あたしゃ、何を見せられているんだい……?」


 エルザが呆れたような顔で言った。

 おっと、祖母の前でやることじゃなかったね……。


「孫のメスの顔なんて、見たくなかったよ……」


「うう……」


 祖母の言葉を受けて、ニルザも顔を真っ赤にしている。

 彼女には悪いことをしたけど、私としては可愛い姿が見られたのでよし!


 


 ……さて、これで暗殺騒ぎは終わった──ように見えて、実はそうではない。

 私への暗殺を直接指示したのは獣王ガンザスだけど、ニルザとの決闘を見ても分かる通り、彼は野心こそあれど、策謀を巡らせるようなタイプではない。


 ガンザスはニルザと同様に、物事を深く考えず、邪魔者は正面から力で叩き潰すタイプだ。

 そういう奴は、暗殺なんて手段は使わない。

 そして直接私に戦いを挑まなかった以上、私のことはさほど危険視していなかったはずだ。


 だけどガンザスは、暗殺を命じた。

 ……洗脳とはいかないまでも、何者によって思考誘導くらい受けたかな?

 そんな私の予想通り──、


「ご主人、ガンザスを裏から操っていたのは、魔界辺境伯のスクエーラです。

 悪魔族の重鎮で、魔王候補の1人ですね。

 ガンザスのハーレムの中に、本人から愚痴を聞かされていた者がいました。


 スクエーラの話に乗った所為で、まずい状況になっている。

 なんであんな話を聞いてしまったのだ……と」


 ガンザスが何者かによって、(そそのか)されていたらしいという情報を、ラヴェンダが調べてきてくれた。

 まあ、直接暗殺を指示したのが彼なので、その結末には同情しないが、ちょっと可哀想ではある。


 そういえばニリスが暗殺に使ったナイフは、結構ヤバイ呪いが付与されている貴重なものだったらしいけれど、それを提供したのもスクエーラだったという疑惑が持ち上がっている。

 ニリスは依頼とともに、そのナイフを受け取ったらしいけれど、こんな暗殺に特化した武器をガンザスが以前から所持していたというのも考えにくいよねぇ……。


 そしてそのニリスは──、


「現在スクエーラは、軍を動かす準備をしているようです」


 そのスクエーラの情報についても、しっかりと調べてくれたようだ。

 そいつは手駒であるガンザスを潰されたことで、自身の身も危ういと悟って戦いの準備を進めているらしい。

 やられる前にやってやる……というところかな?

 

 まあそれについては、これから対策を考えるとして……。

 色々と情報を手に入れてきてくれた2人は、実に優秀で助かるよ。


「ありがとう、よくやってくれたね」


「くぅ~ん」


 私はご褒美にラヴェンダの頭を撫でる。

 そしてニリスには──、


「ニルザ、自分の副官なんだから、褒めてあげて」


「わ、私が……?」


「そう、あなたがご主人様なんだからね」


 ニルザとの主従関係を、強化してもらいたい。


「う、うむ……。

 ではニリスよ、(ちこ)うよれ。

 褒めてつかわす」


 しかしニリスは──、


「結構です」


 と、にべもない。

 元男だから、撫でられるのに照れがあるのかな?

 それとも、私から褒められないことに拗ねたか。

 後でフォローしておこう。


「いや、褒めてやるから……」


「結構です」


 ニルザはなんとか撫でようとするが、ニリスは真顔で(かわ)し続ける。

 現状ではツンデレのデレ抜きだ。


「かあぁぁーっ!!

 いいから、褒めさせろーっ!!」


 あっ、ついにニルザがキレて、強引にニリスを撫で回し始めた。

 ニリスの表情はあまり変わらないけれど、なんだか迷惑そう……。

 この主従の信頼関係が醸成されるには、まだまだ先が長そうだなぁ……。


 さて、私は今後のことを、エルザやカトラさん達と話し合おうかな。

 これを機に、不穏分子は全部潰しておこう。

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― 新着の感想 ―
[一言] まあそりゃあ人に言われて褒めるのはうれしくはないよねえ
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