13 魔王候補との対決
暗殺メイドの名前はニルザと一字違いだったので変更しています。
数日が経過し、私達は再び闘技場に来ていた。
ここでまた、決闘が行われる。
ただ、今度はニルザと、別の魔王候補との決闘だ。
私に負けたことで、ニルザの魔王候補としての立場は少し悪くなった。
それを挽回する為には、彼女が他の魔王候補を倒す──それも圧倒的な差を見せつけて倒す必要がある。
それができるのならば、魔界の人々は彼女の実力について、問題無しと判断することだろう。
「今のニルザの実力なら、問題は無いよ」
「う……うむ、お姉様方に鍛えられた今の私に敵は無い……はず……?」
ニルザはちょっと自身なさげだ。
一応彼女の修行は、そこそこ順調に進んでいた。
とはいっても、近隣には適当な魔物の狩り場が無かったので、レベリングはしていない。
あくまでスキルの使い方について、鍛えただけに過ぎなかった。
それでも戦闘力は、相当上昇したと思う。
今ならクルルとも、互角程度には戦えるだろう。
まあ、お姉ちゃんが相手なら、絶対に勝てないくらいの実力差はあるけれど、それがニルザの自信のなさに繋がっているようだ。
でも、お姉ちゃんは私の血を定期的に吸うことで、今もぐんぐんと能力を伸ばしているので、カプリちゃんでもなければ勝つのは無理だよ。
比べたって仕方がない。
「ラヴェンダとニリスに調べさせた対戦相手の情報からは、ニルザが負けるとは思えないし大丈夫だと思うよ」
「そ、そうだ。
私ならできる……!!」
「うん、私の為にも頑張ってね」
「うむ!!」
と、私はニルザを送り出す。
彼女が向かう闘技場の舞台には、既に対戦相手が待ち構えていた。
彼の名は、獣王ガンザス。
獅子の顔を持つ巨漢だ。
ラヴェンダ達のように、耳や尻尾などが部分的に獣の獣人とは違い、どちらかというと本物の獣が直立しているという印象が強い。
勿論、手足の形が人間に近いなど、完全な獣という訳でもないのだけどね。
元々の獣人はこういうタイプが多くて、私達がよく知るのは、人間などの他種族と混血が進んだ部族ということらしい。
う~ん、モフモフ具合だけで言えば、ある意味可愛いとも思えるけれど、このガンザスは許すことができない相手でもある。
なにせ暗殺メイドのニリスに私の暗殺を命じたのは、この男なのだから。
この決闘は、それの報復という意味もある。
「よく逃げずに来たな。
その勇気を褒めてつかわす!」
「貴様……っ!!」
ニルザの挑発的な言葉に、ガンザスは苦虫を噛み潰したような顔になった……と思う。
ライオンの顔だから、ちょっと表情が読みにくい。
ただ、彼がこの状況を忌々しいと感じるのは当然なので、なんとなく反応は予想できた。
ニルザが申し込んだ決闘について、ガンザスは拒否することもできるらしい。
しかしその場合、人々から「弱腰」と見なされかねないので、もっともらしい理由を考える必要は出てくるが……。
勿論、どんな理由があろうとも何度も拒否していれば、魔王候補としての評価を落としかねないので、いつまでも逃げていられるものではない。
それでも1~2度程度なら、取りあえず拒否をして時間を稼ぎ、対策を立てることも可能だ。
同一人物への決闘の申し込みは、年に1度しか許されていないらしい。
まあ、負けても毎日のように再挑戦できるのなら、鬱陶しいからね……。
だけどガンザスには、決闘を拒否できない理由があった。
ラヴェンダとニリスが、ガンザス配下の組織を潰しまわり、そこから非合法の活動をしている証拠も押収している。
ニルザはガンザスに対して、決闘を受けないのならば組織を潰すのはやめないし、非合法活動の証拠も公に公開する──と、脅した訳だ。
まあ、ニルザにそんな知恵は無いので、私やカトラさんが考えた策ではあるが。
いずれにしてもガンザスにとってその脅しを実行されることは、非常に都合が悪いことだった。
結果彼は決闘を受けざるを得ず、不本意ながらもこの闘技場に姿を現したことになる。
ただ、ガンザスにメリットが無い訳でもない。
決闘である以上、賭けるものがあり、勝てばそれを手に入れることができる。
今回ニルザは、自身が負ければ、ガンザスと婚姻を結ぶという条件を持ち出した。
魔王の孫娘である彼女と婚姻を結ぶことができれば、魔王の座に近づくことができる。
事実今までにも彼女は、幾人もの魔王候補から求婚を申し込まれており、それに嫌気をがさして、いっそ憧れていたカプリちゃんと結婚してしまえ──と、求婚したという経緯があるそうだ。
そんなニルザが、自ら婚姻という条件を持ち出した。
本当は婚姻など望んでいないはずだけど、ガンザスに突きつけた条件の重さと釣り合うものがそれしか無かったそうだ。
ガンザスが敗北した場合、彼が払わなければならない代償──それは彼自身の命だ。
私に対して暗殺者を差し向けた彼を、ニルザは一切許すつもりがなかった。
だからこれから始まるのは決闘であり、殺し合いでもある。
万が一ニルザの命が危なくなるようなら、卑怯と言われようが私は「眷属強化」を使って介入するよ。
まあ、そこまでする必要は無い──と、私は彼女の強さを信じているけれど。
今は大人しく応援することにする。
それと──、
「マルル様、託されたお金は、全額ニルザに賭けてきたわよ!」
リーリエの強運で、資金も増やしておこう。
なお、魔王エルザも、リーリエと同じ所に賭けたという。
いつも応援ありがとうございます。
最近、ドライアイが酷くて(眼科で処方された目薬が効かないレベル)、執筆が遅れ気味です……。




