12 闇メイド
暗殺未遂騒ぎの後、暗殺者であるメイドは、依頼主の名を含め洗いざらい吐いてくれた。
私の『百合』と、お姉ちゃんの「魅了」&「吸血」による眷属化を受けたのだ。
私達姉妹による二重の支配に抵抗できる者は、滅多にいないと思う。
まあ、私を暗殺しようとしたのだから、これくらいガチガチに支配するのは許してほしい。
私はかすり傷しか負っていないのだから、ちょっと気後れするくらいだ。
むしろ私よりも、酔いから醒めて事態を知ったニルザの方が、激怒している。
「マルルお姉様を暗殺しようだなんて、なんたる大罪を!
死刑! 死刑にするのが妥当よ!」
「まあまあ……これからこの子は、ニルザの副官として働いてもらう予定だから、許してやってよ」
「はあぁっ!?
なんでこんな奴を私の副官に!?」
私の提案に、ニルザもさすがに反発したようだが──、
「私の眷属になった者は、私を絶対に裏切らないからだよ。
だから安心して、ニルザの為に働いてもらえる」
このメリットがある以上、人材として活用しない手は無い。
それにニルザは策謀とは縁が無い性格っぽいので、暗殺者のような裏の世界に精通している者の協力はあった方がいい。
王というのは、清廉潔白なだけじゃ成り立たないからね。
理想論を言うだけで実行力のない者よりも、多少汚いことに手を染めてでも結果を出すような者でなければ、国は守れない。
昔は清廉潔白なのが政治家には必要な素養だと思っていたんだけれど、年を取ると世の中それだけでは動いていかないということが分かってくるものだ……。
「この子──ニリスは、既に私とお姉ちゃんの眷属で、私達の所有物なんだから、無碍に扱っては駄目だよ?」
「うう……分かった。
お姉様の言いつけだから使ってあげるけれど、しっかりと私の為に働くのだぞ!」
「はい、我が忠誠はマルル様とアルル様、そしてニルザ様に捧げます」
と、答えるニリスは、相変わらずメイド服姿だ。
髪も目も色は黒で一見地味だが、よく見れば顔は美少女だった。
しかもこれは変装ではなく、素顔だという。
男の頃からこの顔なのに……!
あと、一応魔族で1本の小さな角が額にあるけど、今は吸血鬼でもあるので、ちょっとややこしい存在ではある。
ちなみにニリスのステータスは、こんな感じだ。
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・ニリス 78歳 女 LV・58
・職業 暗殺者
・生命力 327/327
・魔 力 234/234
・ 力 256
・耐 久 312
・知 力 199
・体 力 363
・速 度 348
・器 用 339
・ 運 178
・ギフト 闇の統率者
・スキル
完全隠蔽
変 装
ナイフ術
宮廷作法
追 跡
吸 血
霧 化
気配誘導
万能感知
万能強化
無限再生
魔力循環
万能耐性
快癒の風
大 浄 化
念 話
影 縫 い
影 移 動
影 収 納
影 斬 り
自然支配
暗黒闘気
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タイプとしてはラヴェンダに近いので、同系統の影系スキルを中心に「下賜」しておいた。
なにせ授かったギフトが、『闇の統率者』だしね。
魔界の裏社会を取り仕切って、ニルザの助けになることを期待したい。
まあ、その前にやらなきゃならないこともあるけれど。
「それじゃあニリス、ラヴェンダと一緒に暗殺を指示した者の関係者を調べてきてね。
潰せるようなら潰してもいいけど、あくまでも脅しだから、末端だけにして本命は残しておいてよ」
「かしこまりました」
「いってきまーす、ご主人!」
2人は影の中に潜り込んでいく。
その光景にニルザは、
「おお!?」
と、驚いた。
思えば決闘の時もそうだったけど、彼女は魔法をまったく使っていなかった。
自分が使えないから、他者が使う魔法もいまいち理解できていないということなのだろうか?
「魔法は苦手?」
「う……うむ、そうだな……」
決まり悪そうにニルザはうつむく。
やっぱりかー。
「でも、魔王になるのならば、ニルザはもっと強くならなければならないよね?
ちょっと練習しようか?」
色々とスキルを「下賜」したから、それを使いこなせるようになってもらわないと困るし。
「マルルお姉様が、そう言うのなら……」
そんな訳で、他の魔王候補との戦を始める前に、ニルザの特訓をすることになった。
時間が無いので、ちょっと厳しくいくよ。
私とお姉ちゃんとクルルの3人VSニルザの実戦形式だ。
「に゛ゃあぁぁ~!?
マルルお姉様だけでも勝てないのに、こんなの無理ぃぃぃ!?」
実際今のニルザの実力では、お姉ちゃんは勿論、クルルにだって勝てないからねぇ……。
ぶっちゃけお姉ちゃん達でも、魔王の座を狙えるぞ、これ……。
でもそれだけに、私達の実力を思い知ったニルザは、その後はお姉ちゃんやクルルにも「お姉様」を付けて呼ぶようになり、素直に従うようになった。
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メイドの名前がニルザと1文字違いだったので、微妙に修正しました。




