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5 魔王と会談

 老婆に案内されて辿り着いた部屋は、会議室のような場所で、大きな円形のテーブルにいくつもの椅子が備え付けられていた。


「好きな席に座っておくれ」


 と、老婆に(うなが)されて、私達は席に着く。


「失礼します」


 私が座った席の正面に、老婆は座った。


「で、あんたがマルルかい?

 確かにカプリ嬢ちゃんが入れ込むだけ合って、惹き付けられるものがあるねぇ。

 あたしが魔王エルザだが、何用だい?」


 ああ、なんとなくそんな気はしていたけど、やっぱりそうなのか。

 見た目からはまったく迫力を感じないけれど、魔王なんだからカプリちゃん並みの実力を隠していると思った方がいいな……。


「初めまして、私はマルルと申します。

 以後お見知りおきを」


 私が席を立って礼をすると、魔王エルザは、


「よしておくれ、あたしゃ堅苦しいのは嫌いだよ。

 他の連中も、座ったまま名乗るだけでいい」


 と、言った。

 まあ、私も必要以上の礼儀作法は嫌いなので、その方がありがたい。

 ……が、言葉通り受け取ってもいいのか分からないので、最低限の礼儀は必要だろう。


「そうですか……。

 それならばお言葉に甘えて、私はトガタン王国とマルル殿の騎士、ラムラスと申します」


 その後、眷属達が挨拶していったが、小さくなったクルルが「グウ!」と、前足を挙げながら挨拶すると、エルザの表情が少し緩んだので、「あっ、この人いい人だな?」と私は直感した。

 動物好きに悪い人はいない……と思いたい。


 そして一通り挨拶が終わると、エルザは──、


「じゃあ、希望を聞こうか?」


 と、単刀直入に聞いてきた。

 じゃあ、率直に答えよう。


「ここ数ヶ月で魔王候補と名乗る者が、人間の国を襲撃する事件が2回もありました。

 そういう連中を、なんとかしてほしいです」


「ああ、そういうことかい。

 しかしそういう連中は、勝手に魔界を出て暴れ回るならず者だ。

 さすがにあたしも、国の外に出ている者をどうにかするのは難しいねぇ。

 人間の国だって、他国で罪を犯した自国民に対して、国が責任を取るなんてことは無いだろう?」


 確かに他国で捕まった犯罪者は、その国の法に(のっと)って裁かれるのが普通で、出身国に対応させるという話にはあまりならないなぁ……。


「しかし軍勢を率いて攻めてきた以上、魔界には人間界への侵略意図があると人間達は見なすでしょう。

 そうならない為の手段は必要です」


「とは言ってもねぇ……。

 そういう連中を取り締まる人材を送れば、それも人間達は侵略の為の策だと考える者もいるんじゃないかい?

 そもそも、現在人間の国と交流が無い我々が、人間からの印象に配慮するメリットは?」


 むう……確かにそれはそうなんだけど……。

 人間が魔族に対して不信感を持っている現状では、魔族が堂々と人間の世界で活動するのは難しい。

 しかし人間の協力無しで、「魔王候補」と称して暴れる連中の凶行を、未然に防ぐことは難しい話だ。

 そして一度魔族によって人間達に被害が生じれば、魔族は魔族と言うだけで、人間を守ろうとしていた者達も十把一絡げに非難されてしまうことになりかねない。


「でも……この件で禍根を残しては、将来的な争いの種になるでしょう。

 そうなればいつか両国の間で、国交を結ぶ必要に迫られた場合の障害になりかねません。

 直近のメリットには繋がりませんが、未来のリスク回避には繋がる事案です」


「ふむ……将来への投資という訳かい。

 いっそあたしの後継者を決めてしまえば、『魔王候補』なんて理由で動く馬鹿な奴だけは抑えられるが、なかなか適任がいなくてねぇ。

 ねえ、カプリや?」


「我は面倒臭いのは嫌でーす」


 カプリちゃんは慌てることもなく、絶対に意思が変わらないとでも言うかのように、ゆっくりと左右に首を振った。


「まあ、お前さんは実力こそあるが、まだ幼くて政治は理解できていないからねぇ。

 あたしも無理にとは言わんさ」

 

 エルザは嘆息する。

 というか、182歳のカプリちゃんを幼子(おさなご)扱いって……。

 彼女は一体何歳なんだ?

 

 でもカプリちゃんが上位竜という種としては、まだまだ幼いことは事実なんだろうね。

 よく考えてみれば、リーリエよりも年下なんだよなぁ……。

 それでもあの実力なのだから、天才ではあるのかもしれない。


「……他にできることと言えば、『人間の世界で暴れた者は、重罪に科す』との布告を出すことはできる。

 当然、犯罪者となれば魔王候補にはなれないから、魔王候補を理由に暴れることはできなくなるね。

 ただし、暴れることが目的の連中に対しては、抑止力にはならないが……。


 あとはそういう連中を倒した人間に対して、あたしが公式に感謝状を贈り、恩賞を与えることくらいかね」


 つまり私達の魔王候補討伐の功績を、魔界としても認めるということか。

 うん……悪くない話だな。


「魔王陛下と魔界が、人間界で暴れる魔族の討伐を推奨する立場で、決して人間との争いを望んでいないのだと表明するのは良いことですね。

 そのことで人間が持つ魔族に対するイメージの改善も図れますし、結果的に友好の切っ掛けになるかもしれません」

 

「それじゃあ、そのように取りはからおう。

 ふふ……カプリがあんたを気に入るのも分かる。

 その幼い見た目で、魔王のあたしを相手に、臆すること無く交渉できる度胸は、只者じゃないねぇ」


 おっと、私も外見通りの年齢ではないことを、悟られたかな?

 心はアラフォーなのよ……。

 それでも長命な種族からすれば、赤子みたいなものだけどね。


「あたしもあと千年若ければ、放っておかないところだよ」


「はは……」


 私はエルザの言葉にどう反応していいのか分からず、愛想笑いをする。

 さすがにお祖母ちゃんと、百合百合するつもりは無いからね……。


 ともかく魔王候補の暴走を抑えるという、当初の目的は上手く達成できたようだ。

 さて、次は──。


「あの──」


「カプリお姉様が来ているって本当!?」


「!?」

 

 私が次の議題を提案しようとしたその時、何者かが勢いよくドアを開けて、室内に乗り込んできた。

 明日は用事があるので、更新は休みます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 翻訳アプリで失礼します。 「カプリお姉様」って、なんだかすごくいい響きですよ!
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