3 選抜メンバー
クリーセェ様との話が終わった後、私はラムちゃんを伴って執務室を出た。
私だけならそのまま直接転移してもいいんだけど、ラムちゃんも手ぶらで魔界へ行く訳にもいかないので、彼女の部屋へ寄ることにする。
「ママ、出発は明日にでも?」
かつて心に大きな傷を負ったラムちゃんは、その心の安定させる為に、私と二人きりの時は「ママ」と呼んで甘えるようになった。
幼い時に母親を失ったことも、影響しているらしい。
精神的にはともかく、肉体的には私の方が下なんだけどねぇ。
「一応何があってもいいように、2~3日はクラグド山脈でみんなのレベリングをしてからかなぁ?」
「じゃあ、まだ時間に余裕は……?」
ラムちゃんは期待するような目で、私を見つめた。
「勿論大丈夫だよ!」
その後ラムちゃんの部屋で、無茶苦茶に甘えられた。
うん、こんな大きな赤ちゃんがいるんだから、やっぱりまだ「百合妊娠」の出番は無いな!
翌日から魔界への旅に同行する者達と一緒に、クラグド山脈へ竜狩りを行った。
ただ、そろそろ下位竜程度の吸収値ではレベル上げの効率が悪くなってきたので、カプリちゃんに中位竜の居場所を教えてもらって狩ることにする。
数こそ下位竜よりは少ないけど、山脈の奥地にはそれなりに棲息しているそうだ。
「え……嘘嘘嘘……!!」
竜のような強大な魔物との戦闘を、これまで経験したことがないエルフのリーリエは、茫然としていた。
もう棒立ちである。
「リーリエ、攻撃!」
「は、はいっ!!」
私の声でリーリエは慌てて弓につがえていた矢を放つけど、当然中位竜の強固な鱗は貫けない。
だけど戦闘に参加したという実績が無いと、吸収値は分配されないので、ダメージが無かったとしても戦うことには意味がある。
ただ、たとえ効果が無かったとしても、攻撃した以上は竜から狙われることになるが。
「ひっ……!!」
竜はリーリエに向かって、口から炎を撃ち放った。
彼女は恐怖で硬直していて、動けない。
直撃を受ければ、今の彼女ならば即死だろう。
「はあっ!」
だけどカトラさんが前に出て障壁を展開し、炎を完全に防ぎきる。
それどころか、炎を押し返した。
竜が自らの炎に包まれて怯んだ瞬間、エルシィさんの斬撃が竜の鱗を斬り裂く。
致命傷では無いけど、竜は久しぶりに受けたであろう苦痛に暴れ回る。
頑丈な肉体を持つが故に、痛みには耐性が少ないようだ。
しかしその動きも、ラヴェンダが影から生み出した糸が竜の全身に絡みつき、強制的に止められた。
そこでラムちゃんが竜の頭部へ、トドメの一撃を入れる。
「そんな……こんなあっさりと……!」
再び茫然とするリーリエ。
普通は中位竜なんて、人間には倒せないからねぇ……。
まあ彼女も、レベルが上がれば倒せるようになるんじゃないかな?
ただ、攻撃力の低い弓矢では難しいので、魔法の技術を磨いていかなければならないだろうけれどね。
「うう……なんなの……。
マルル様の傍には、女の人ばかりじゃない……。
しかも凄く強くて、これじゃ私には勝ち目なんて無いわ……」
なにやらリーリエが落ち込んでいる。
彼女は他の眷属達に対抗意識を燃やした結果、魔界への同行を申し出たようだが、正直言って新入りの彼女の能力は、眷属の中でも下の方だ。
「リーリエには、『錬金の腕』を活かして、薬の調合とかを期待しているから、そちらで頑張ってね」
「ううぅ……」
あと、その桁外れの強運も。
いずれにしても、レベルを上げてスキルを増やさなければ、『ギフト』の能力は十全には活かせない。
その為にもレベルアップには、励んでもらう必要がある。
そういう意味でこの戦いは、たとえ魔界に行かなかったとしても必要なものだと言える。
「それに、リーリエが傍にいてくれるだけでも、私は嬉しいからね?」
「あ……ありがとう」
リーリエが顔を赤くして、目を伏せた。
最初に会った時はツンデレっぽいキャラだと思ったけど、今ではすっかりデレている。
ただ、まだツンの頃の影響か、デレが行動には繋がってはおらず、素直に愛情表現をすることは苦手のようだ。
でも、耳がピコピコと動いて反応しているのが可愛い。
ラヴェンダもそうだけど、亜人は耳や尻尾とかが素直なのが可愛いよね……。
その翌々日──。
1番レベルが低かったリーリエも、なんとか45レベルまで成長したので、そろそろ魔界へ向けて出発したいと思う。
「カプリちゃん、準備はできた?」
「ハーイ、準備オーケーですよー!」
まず同行者として絶対に欠かせないのは、魔界への案内人カプリちゃん(LV114)だ。
彼女の「転移」で、海の向こうにある魔界まで運んでもらうことになる。
次にカプリちゃんに次ぐ2番手の強さである、アルルお姉ちゃん(LV98)。
私なら「絶対命令」や「眷属の力」を使えば勝てなくも無いけれど、普通に戦ったら絶対に勝てない相手だ。
それだけに本当に頼もしい。
それから私の足代わりとしても大活躍のクルル(LV81)。
能力的にはお姉ちゃんにも迫る強さだ。
「楽しみですねー、ご主人!」
そしてラヴェンダ(LV68)は、諜報活動に特化した能力なので、魔界での情報収集に活躍してもらう予定だ。
まあ、能力的に直接戦闘をする機会は少ないのでレベルは高くないけれど、それでも人間離れした戦闘力を有している。
あと、ラムちゃん(LV54)は、私の副官的な立場で同行する。
ある意味外交官みたいなものだと、思ってもいいだろう。
最後にエルシィさん(LV58)とカトラさん(LV62)。
色々な知識を学ぶことが好きなカトラさんは、エルフの里に連れて行かなかったことを、
「なんで私も連れて行ってくれなかったんですか!?
エルフの珍しい文化を見たかったのに!」
と、激おこだった、
だってあなた達、王女と王子の家庭教師の仕事があったし……。
なんとか「落ち着いたらエルフの里に連れて行く」と約束してなだめすかしたけど、まだちょっと不機嫌なので、今回の魔界行きにはどうしても彼女は外せない。
エルシィさんはカトラさんの恋人なので、彼女の付き添いみたいなものだ。
これが魔界行きのメンバーとなる。
他の者は色々と仕事があるしね……。
アイーシャさんも凄く一緒に行きたがっていたんだけど、領都の教会への赴任直後で、また休む訳にはいかなかったようだ。
また、キララには領都の防衛という、大切な仕事をお願いしておいた。
放っておけば勝手に巣を増やして防衛力をあげてくれるので、非常に助かる。
そんな訳で私達はさほど憂いも無く、魔界へ出発できる。
「それじゃあお願いね、カプリちゃん」
「イエース!
では、ゴーでーす!」
直後、私達は遠い大陸向けて「転移」した。
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