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2 魔界とは

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


 いつもの時間よりも、ちょっと早めに更新です。

 クリーセェ様の執務室──。

 来客が帰ったというので、私は早速お邪魔することにした。


「魔界へ行くじゃ……と?」


 私の報告を受けて、クリーセェ様は耳に入った言葉が理解できないという顔になる。


「ですから、魔王と会えることになったので、もっと人間と平和的に付き合えないものかと、話し合ってきます」


「……待て、待つのじゃ。

 魔王となんじゃって!?」


「だから、会ってくる……と」


「なんでじゃ!?

 魔王って、あの魔王じゃろ!?

 なんで会うことができるのじゃ!?」


 クリーセェ様は、訳が分からないといった顔で(わめ)いた。

 まあ、普通の人間が──しかも平民が会えないのは事実だよね……。


「うちのカプリちゃんが、顔見知りなんですよ。

 そもそもカプリちゃんは、魔王から後継者に指名されたこともあったそうです。

 ただ、本人は面倒臭い……とかで、断ったそうですが。

 ともかく、彼女のツテで会えることになりました」


「あの上位竜か……。

 なるほどなのじゃ……。

 というかおぬし、魔王と同等の存在を従えておるのか……」


 クリーセェ様は軽く引いた様子だった。


「しかし魔界とは……。

 一体どのようにして行くのですか?」


 クリーセェ様の護衛役として……というよりは、私の眷属として同席しているラムちゃんが、当然の疑問を(てい)した。


「魔界は何も地底の奥深くとか、異空間とかにあるものではないらしいですよ。

 ずっと遠くの──海を越えた大陸にあるんだそうです」


「!!」

 

 これは現在人間達がまったく知らない情報だけど、今は造船技術もそこまで発達していないし、何ヶ月もかけて何処にあるかもハッキリしない大陸まで航海する力は無いだろう。

 だから現時点では、人間の方から攻め込むとかいう問題も起こらないと思うので、教えてもいいと思う。

 

 それにこのことを知っておけば、海の向こうから魔族が来る可能性を考えて、防衛計画を構築することもできるだろうしね。


「なるほど……古来より魔族がどこから来るのか謎だったが、そういうことじゃったか……」


「これは大変な情報ですぞ……!」


 と、2人は新事実に対して盛り上がるけど、話はそれでは終わらない。


「できれば魔界とは、国交を結びたいと思っています」


「国交……じゃと?」


「カプリちゃんも人間の料理は気に入っているから、他の魔族にも人間が作った物に需要はあると思うんですよね。

 で、貿易くらいはできるのではないかと。

 取り引きできる相手だと思えば、魔族も無闇に人間を襲わなくなるかもしれません」


「だが……人間の作り出す物に価値があると分かれば、魔族は奪いにくるかもしれんぞ?」


 その可能性はある。

 あるんだけど……。


「それ、現状と大した変わりませんよ。

 人間同士でも、同じようなことはありますし。

 だから魔王と話し合って、暴れる連中を上から抑えてもらおうかと」


 まあ、それで全部が解決するとは、思わないけどね。

 魔族はある程度の知性を持つ魔物の総称だけど、中にはオークやゴブリンのように、人間を餌や繁殖の手段としか見ていないような者達など、絶対に相容れない種族は存在する。

 そういう連中とは、今まで通り争っていくことになるだろう。

 

 それでもカプリちゃんのように、話し合えば分かり合えるような相手も、魔物や魔族の中にもいるのだ。

 彼女はなにも『百合』の影響だけで、私達と親しくしている訳ではない。

 ゴハンを作ってくれるティティにも(なつ)いているから、『百合』は切っ掛けでしかないのだと思う。 


「むう……」


 クリーセェ様は難しい顔をして(うめ)く。


「何か希望はありますか?

 こういうことをして欲しい……とか?」


「魔王がどう反応するのか分からん以上、相手の対応次第で考える。

 この会談が藪蛇になるようなことにならねば、よいのじゃが……」


 クリーセェ様は魔族との関係を、現状維持が無難だと考えているようだ。

 ただ私としては、眷属に魔族や亜人がいる以上、この国はもっと他人種に開かれたものになって欲しいと考えている。

 それは私の都合で他人には関係ないのかもしれないけれど、現状を変えなければ私と眷属にとって暮らしにくい現状が続くだけだし、変えられるものなら変えてしまおう。


「ああ、それとエルフの里に封印された魔族が逃げ出したようなので、その存在についても魔王に助言を受けたいとも思っています」


「何っ!?」


「その存在の行方(ゆくえ)は分かりませんが、警戒はしておいてください」


「次々に面倒事を……」


 クリーセェ様は、ガクリと肩を落とす。

 そんな彼女へ、


「殿下、私もマルル殿に同行して、魔王との会談の内容を把握したいと思うのですが……」


 と、ラムちゃんが申し出た。


「おお、そうじゃな。

 行ってくれ、ラムラス。

 よいな、マルル殿?」


「ええ、勿論です」


 ……ラムちゃんからは、ただ私と同行して甘えたいだけ……という感情が、なんとなく伝わってきたけど、それは黙っておこう。

 今年も応援していただければ幸いです。

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