21 天の怒り
私は上空へと移動して、世界樹を見下ろした。
ここならば世界樹からの、攻撃は届かないだろう。
しかし見下ろしていてもなお、世界樹は巨大だ。
その巨体に対しては、生半可な攻撃は通用しないのだろうね……。
さて、まずは「自然支配」で、空気中の水分を円盤の形に集める。
ただしそのサイズは20mほどで、しかも複数枚を作り上げた。
更にその円盤へ、地面から尖った石を取り出して混ぜ込んだ。
それを高速で回転させれば、巨大な丸鋸の完成である。
これで邪魔な世界樹の枝を、切ってしまおう。
「行けっ!」
丸鋸が世界樹に攻撃を仕掛けると、次々に枝が落ちていった。
本体の幹は無理だけど、枝ぐらいなら切り落とせるようだ。
上から見たら、巨大なブロッコリーのようだった世界樹は、枝が次々に落とされて、幹が露出してきた。
世界樹は長い根を触手のように伸ばして抵抗するけれど、それは空中の私には届かない。
よし、その根も切っちゃえ。
うん、そろそろいいかな?
もう世界樹は、幹を残すだけの状態だ。
とはいえ、放っておけば、枝とかもまた生えてくるだろう。
その前にとどめを刺さなければならない。
まずは役目を終えた丸鋸を、すべて世界樹の幹にぶつける。
さすがに分厚く堅い幹は切ることができず、丸鋸の方が逆に弾け飛んだ。
……が、これも計算の内だ。
さあ、ここからが本命。
私は「自然支配」で雷雲を生み出し、雲に魔力を注いでいく。
雲は見る見るうちに、空一面を覆い尽くした。
「さあ、すべてを吐き出せっ!!」
その掛け声とともに、雷雲から世界樹に向けて雷が降り注ぐ。
しかもそれは、一瞬も途切れること無く、連続で落ち続けた。
それは1つの束にまとまって巨大な光の柱となり、まるで世界樹と雲を繋いでいるかのようだ。
前世では見たことも無い、神秘的な光景──。
これを自分がやっているとは、ちょっと思えないよねー。
……と、呑気に考えているけど、魔力の方は結構ギリギリだ。
しかし世界樹の方は、まだ蠢いているので、死んではいない。
仕方がない……「眷属の力」を使おう。
これは眷属の力を借りて、ステータス等を上昇させることができる。
足りなくなってきた魔力だって、充填できるぞ。
ただ反動が大きいんだよなぁ……。
全開で使ったら、エネルギーの過剰供給で私がパンクするので、2割くらいの力で数分使うのが今の限界かな。
まあ、そもそも今は周囲に眷属があまりいないので、100%の性能は発揮できないんだけど、むしろそれで助かった。
さあ、行くぞ、「眷属の力」!!
私は身体の底から湧き上がってきた力を魔力に変換して、雷雲に注ぎ込む。
雷は更に激しく世界樹に降り注ぎ、周囲を光で染め上げた。
もう、この世の者とは思えない光景だ。
でも、私はそれどころじゃなく、全身が過負荷で悲鳴を上げている。
「くっ!」
早く倒れてくれないかなぁ、世界樹さんっ!?
このままだと、私の方が先に限界を迎える。
しかし世界樹は、まだ倒れそうにない。
どんだけ耐久力があるの!?
むう……こうなったら「眷属の力」の出力を、3割まで解放しよう。
だけどその代償は、全身を襲うこれまでのものとは比べものにならない激痛だった。
「くうぅぅぅ!!」
痛い痛い痛いっ!?
……それでも、代償を支払った甲斐はあった。
ついに世界樹が真っ二つに割れて、燃え上がりはじめたのだ。
「や、やった……!」
あとは「自然支配」で炎を操って、世界樹を燃やし尽くせば終わりだ。
でもそれくらいなら、お姉ちゃんやアイーシャさんでもできるだろうから任せるか。
なお、事前の丸鋸攻撃で大量の水を周囲にばらまいたので、山火事にはならないと思う。
「あ……」
安心したら力が抜けた。
私の身体は、地面に吸い込まれるように落ちていくけど、まあ問題無いだろう。
「おい、大丈夫か、マルル!?」
お姉ちゃんが空中で、私を受け止めてくれた。
うん、絶対に助けてくれるって、信頼していたよ。
「少し休めば大丈夫だと思う……。
ありがとう、お姉ちゃん。
大好きだよ」
「私もだ」
こういう時に照れないのが、お姉ちゃんの格好いいところだと思う。
「それよりも、お姉ちゃん達は大丈夫?
結構力を吸い上げちゃったと思うんだけど……」
「……まあ、ちょっと消耗したけれど、マルルほどじゃないよ」
「そっか……」
じゃあこれで、大きな被害も出すこともなく、無事に戦いが終わった──ということで、いいのかな?
ただ、やることはまだある。
たとえば、残留している瘴気を浄化しなければならない。
まあそれは、アイーシャさんに任せれば、そんなに時間はかからないと思うけど……。
あと他にも、エルフ達の問題が残っている。
たぶんこれが、1番面倒臭い……のだろうけれど、今は考えたくないな。
もう疲れた。
そんな訳で、私が休んでいると──、
「みんな、大丈夫だべか!?」
チエリーさん達が戻って来た。
彼女には「念話」で、戦いが終わったことを伝えておいたからね。
それと──、
「な……なんということだ!」
余計な者もついてきている。
彼は未だに炎をあげる世界樹を見て、愕然としていた。
「世界樹を失って、我々はこれからどうしていけば……。
うぬら、なんてことをしてくれたのだ!!」
私達に言われてもなぁ……。
それは八つ当たりだよ。
で、私が反論しようとすると──、
「見苦しい真似はおやめください、長老!」
リーリエが口を挟んだ。
応援していただけると、モチベーションが上がります。
ただ、今後は積雪次第で執筆の時間が取れなくなるかも……。




