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19 光の使者参上

 結界から解き放たれた亡者の数は、数千とも数万ともしれない。

 さすがはエルフ達が、数千年以上かけて都合の悪い者達を次々と封じ込めてきただけあって、その数は膨大だった。

 そりゃ瘴気だって蓄積されて、世界樹も魔物化するわ……。


 しかも亡者の群れに加えて、高層ビルのような大きさの世界樹──。

 これは本気で対処しなければ、大変なことになるぞ。

 それならば──、


「クルル!!」


「グオオォォォォーっ!!」


 巨大化したクルルが世界樹に襲いかかる。

 サイズとしては、世界樹の数分の1だけど、それでも数十mもの巨体になった熊の爪による攻撃は、凄まじい威力がある。

 その攻撃を繰り返していれば、世界樹もいつかは倒れるかもしれない。


 勿論倒れない可能性もあるけど、世界樹は今のところ歩けないから後回しでいい。

 今はクルルに任せよう。


 それよりも数万はいる亡者の群れが、森の中に拡散してしまったら、殲滅することが難しくなる。

 そうなる前に、片付けなきゃ!


「チエリーさん、『自然支配』で壁を作って、あいつらを外に出さないようにして!

 それが終わったら、お父さん達と一緒に安全なところへ避難してもいいから!」


「わ、分かったべ!」


 チエリーさんは「自然支配」を発動させ、蔦植物や木の根を絡み合わせて巨大な壁を作り上げる。

 それは周囲数kmを覆う、植物の結界だ。

 これならば世界樹はともかく、亡者達が簡単に抜け出すことはないだろう。


「あ……あなた、こんな力があったの……?」


 チエリーさんの能力を見て、リーリエが目を丸くしている。

 これほどの植物を操る能力を持つ者は、エルフの中にもいないのだろうね。


「お(ねえ)、避難するべ!」


「わ……分かったわ!」


 リーリエは、妹の言葉に従う。

 その実力差に嫉妬とかを感じていない訳ではないのだろうけれど、それでも事実は事実として受け止めることができる素直さがある。

 まさに私がイメージする、誇り高きエルフ像を体現しているね。

 それに姉妹仲を改善する兆しが見えて、()(かな)、善き哉。


 その後チエリーさんは、「転移」でこの場から退避した。

 正直、戦力として抜けるのは痛いけれど、今は家族の絆も大事だ。


 ここは私達だけで、食い止める! 


「さあ、お姉ちゃん、キララ、いくよ!!」


「ああ!!」


『ん!!』


 さて、亡者が相手なら、浄化の範囲攻撃である「聖光」が有効かな。

 お姉ちゃんは「暗黒闘気」での攻撃に、「聖」の「属性付与」。

 キララは地面すれすれを音速で飛ぶことによって発生する「衝撃破」。

 これらを中心に、攻撃を組み立てよう。


 しかし亡者の数が多い。

 これは簡単には殲滅できないだろうなぁ……。

 しかも亡者の中には手練(てだ)れもいる。


「くっ……!!」


「お姉ちゃん、大丈夫!?」


「ま、まあなんとか……」


 珍しくお姉ちゃんが、接近戦で苦戦している。

 生前は熟練のドワーフの戦士──それも英雄と呼ばれるような存在だったのだろう。

 戦斧(バトルアックス)を振り回し、スキルと思われる技を使ってくる者さえいる。

 それが1人や2人ではないのだ。

 

 これはただのゾンビの群れじゃないぞ!?

 どちらかというと、アークリッチに近い存在じゃないかな。

 そんなのが沢山いるのだから、レイスの配下だった不死の軍団よりも、余っ程手強(てごわ)い。


 う~ん、「火炎息」を連発できれば手っ取り早いんだけど、森林火災でもっと被害が拡大しちゃうし……。

 ここはチマチマとした攻撃で、亡者の数を減らしていくしかないようだ。

 しかしそれでは、こちらの消耗も激しい。


 いくら「無限再生」があるとはいえ、受けたダメージが皆無という訳では無い。

 再生にも体力を使うので、体力が減り続ければ、いずれは動けなくなることだってあるだろう。


 それは「魔力循環」で回復ができる、魔力だって同様だ。

 魔力を使い続ければ、精神的な疲労が生じ、最終的には魔力が万全であるにも関わらず、気絶してしまうなんてことも有り得る。


 つまり長期戦になれば、数で少ない私達の方が不利になりかねないのだ。

 そんな危うい戦いが、いつ終わるとも知れず続いた。

 増援が欲しいところだけど、エルフには期待できないし、チエリーさんも今頃はエルフ達の避難を手伝っていることだろう。


 もっと眷属を連れてくればよかった。

 そう(なげ)きたくなったその時──、


「お困りのようでございますね、使徒様!」


「うん!?」

 

 そんな声と同時に、亡者達の中心に光が生まれ、それが輪のように大きく広がっていく。


「『大聖界』──!」


 光は多くの亡者を飲み込み、消滅させた。

 今の一撃で、千は消し去ったぞ!?

 そしてそれを成したのは──、


「アイーシャさん!?」


 教団の聖女、アイーシャさんだった。

 でも、彼女って王都の教団本部にいるんじゃなかったっけ?


「な……なんでここにいるの?」


「使徒マルル様のお役に立つ為、ランガスタ領都への赴任を申し出たのでございます」


 うん、それはまあ理解できる。


「しかしマルル様がお留守でしたので、後を追って参りました!」


「え……(こわ)っ……」


何故(なぜ)で、ございますか!?」


 アイーシャさんは、私の反応が想定外と言わんばかりだけど、ここまでどうやって彼女が辿り着いたのかが、完全に謎なんだよなぁ……。

 ここは本来、関係者しか辿り着けない、エルフの聖域なんだけど?

 なんだかパソコンの調子がまた悪いので、これが続くようなら更新に影響があるかも……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] エルフ里にある危機、王族ほど全員ダウンされていた王国より手強いとは思わなかったですね。 聖女アイーシャさん、ストーカーですけど、戦力欲しい時にゾンビ特攻が居るのはめっちゃ助かるでしょう!な…
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